25話 神との会話
雪に会ったその日、王都の屋敷に戻り自室を出て玄関へ向かうと、予想通りアクア兄様と姉様がちょうど帰ってきたところだった。
「アクア兄様、姉様。おかえりなさい。」
「「ただいま。」」
すると、そこに母様がきて
「アクア、クリス。おかえりなさい。」
「「ただいま戻りました。母様。」」
「2人共、明日は学園休みよね?」
「「はい。」」
「マリン、また3人で魔法の練習しに行くの?」
「そのつもりですが?」
「私もたまにはマリン達と出掛けたいんだけど‥‥‥マリン、クリス、アクア。駄目かしら?」
姉様を見ると笑顔で頷いたので賛成のようだ。
「駄目じゃないです。母様。是非!」
「やった。じゃあ4人で出掛けましょ。」
「いえ。俺はついていってもしょうがないでしょうから遠慮しますよ。」
「‥‥‥そう?」
3人で出かけることが決まったところで、ふと思いついた。
「でしたら母様。1ヶ所行きたいところがあるのですが、いいですか?」
「ん?いいわよ。どこ?」
「教会です。洗礼のあと、一度も行けてないので。」
「そうね。じゃあ行きましょ。」
「はい。ありがとうございます。」
そして夕飯を食べ終え、あとは寝るだけという状態の私は自室で考えていた。
う~ん。雪にもらった石‥‥身に付けるってどうしようかな‥‥。ブレスレットにしろ指輪にしろ目立つし、学園行き始めたら付けられなくなるし‥‥やっぱり服で隠せるペンダントかな‥‥?それしか浮かばないな。
今日雪がちょいちょい気になること言ってたけど、「来るべき時」とか色々。
あの水晶も封印の「1つ」って言ってたよね‥‥まだ他にもある?雪が「聞かないで。」って感じの雰囲気出してたから聞かなかったけど‥‥。
う~ん。考えを纏める材料が少ないな‥‥。
明日教会に行ったら神様達に会えるかな?「またな」って言ってたから会えるような気はするけど、どうなんだろ?
‥‥‥とりあえず、今日は寝よ。
翌日。
昨日決めた予定通り、姉様と母様と出掛けるための準備が終わり、玄関から外に出ると既に2人共待っていた。
「姉様、母様。お待たせしました。」
「大丈夫よ。じゃあまず何処に行く?あ。マリンは教会に行きたいのよね?先に行く?」
「はい。いいですか?」
「勿論よ。じゃあ行きましょ。」
「はい。」
そして3人で馬車に乗り、教会の前で馬車を降りお布施を払ってから中に入る。
そしてシスターの案内で祈りの間に着くと、3人で両膝をつきお祈りを始める。
すると久しぶりに感じる独特の浮遊感のあと、次に気付いた時には私の視界に見覚えのある真っ白な空間が広がっていた。そしてそこには円卓を囲む様に神々が座っていた。
「‥‥皆様お久しぶりです。」
「ああ。久しぶりじゃの、マリン。」
「えっと、色々お伺いしたいことがあるのですが。」
「そうじゃろうな。とりあえず座りなさい。」
「はい。では失礼します。」
私が座ったのを見届けると
「では、まず知りたいのは称号の「神の御使い」かの?」
「そうですね。」
「う~む。これは今はそこまで気にせんでいい。いつになるかまだハッキリわからんが、マリンにやってもらいたいことがあるんじゃ。それと、地上の者達にこの称号を見せなかったのは正解じゃな。」
「知られたらどうなりますか?」
「国も地位も関係なく全人類に崇め奉られるじゃろうな。なんせ「神の御使い」じゃからの。言い替えれば神の代弁者じゃから当然じゃな。」
「全人類!?見せなくて良かったです‥‥これは見せたら駄目なやつだと思ってたので‥‥あ。でも昨日会った雪は私を見てすぐ気付いたみたいですが、何故でしょうか?」
「それはな。マリンが雪と名付けた白い虎、やつが神獣じゃからじゃの。」
「神獣!?え、じゃあ雪にもらった石は?」
「うむ。白虎にもろうた石じゃがな、白虎とマリンの魔力が籠もっとるから、ある意味魔石じゃな。おおそうじゃ、その魔石身に付けとらんと意味が無かったの。ちょうど渡そうと思っておった物があるんじゃ‥‥これじゃ。」
そう言った創造神様が両手を合わせた。すると手の中が光り、両手を開くとそこにはペンダントがあった。
そして、創造神様は対面に座っていた私にペンダントを差し出した。
よく見てみると、ペンダントトップには雪にもらった魔石を収められる位の窪みがあった。だが問題はその窪みの数だ。
「これ、頂けるのですか?‥‥‥あの創造神様。伺いたいことがあるのですが。」
「勿論マリンにあげるつもりじゃったから持っていってよいぞ。で、なんじゃ?」
「これ‥‥窪みが4つあるんですが‥‥。」
「うむ。4つで合っとるよ。」
「それと、創造神様。雪を白虎って仰ってましたよね?まさか‥‥地球でいう、「四神」ですか?」
「うむ。正解じゃ。」
「うちの領地が西の辺境伯領だから「西の白虎」‥‥ですか?」
「うむ。」
「ということは、「四神」なのであと青龍、朱雀、玄武がいると‥‥?まさか‥‥各辺境伯領にいたりするのですか?」
「これまた正解じゃ。じゃがすぐに集めろとは言わん。少なくとも15歳ぐらいまでに集めてくれたらよいぞ。」
「‥‥‥あの、それは雪が言ってた「来るべき時」のためですか?」
「うむ。そうじゃ。四神それぞれが封印を各地で守っておるのじゃ。」
「何が封印されているのですか?」
「今はその時ではないからの。いつか伝える。今日のように教会で祈ってくれればこうして話せるからの。」
「‥‥‥創造神様。私が世界を回りたいと言ったのでそれなら四神を集められると思い。そしてその為に私に「神の御使い」の称号や凄すぎるステータス、このペンダントをくださったのですか?」
「まあそうなんじゃが、勿論誰でも良かった訳ではない。ここにおる全員がマリンならと認めたからそれらを渡したんじゃ。」
そう言われた私は周囲を見回す。すると、他の四神様それぞれ目が合うと頷いた。
最後に創造神様に視線を戻して
「‥‥私の疑問の答えはいつか全て教えて頂けるんですよね?」
「ああ。必ずの。じゃからしばらくは好きに楽しんでよいぞ。」
「ものすごく「しばらくは」が気になりますが、分かりました。今は聞かないことにします。とりあえず私は四神を集めることからですね。」
「うむ。さっきも言ったが急がんでいいからの。」
「はい。」
「そろそろ時間じゃな。またな。マリン。」
「はい。」
そして、次に気付いた時には私は姉様達とお祈りの姿勢でいた。
「マリン、大丈夫?」
「あ。はい。大丈夫です母様。」
「そう?じゃあ出ましょうか。」
「はい。」
「次は服でも見に行く?」
「いいですね!前は私は置いてきぼりだったですし。」
「姉様‥‥それは領地でのことじゃないですか。」
「置いてきぼりに違いはないじゃない。」
「そうですけど‥‥。」
私達はその後、女同士仲良く街を周り買い物を楽しんだ。姉様は私があげたマジックバックを「助かってる」と愛用してくれているそうだ。
というわけで私は母様の分まで荷物持ちになっていた。
そして、私の首には服に隠れて創造神様にもらったペンダントがあり、雪の魔石だけがそこに嵌まっていた。
神様と話したその日、自室に戻った私はあることを試してみようとしていた。私の首には創造神様にもらったペンダントが掛かっている。
えっと、雪にもらった魔石を介して喋れるのは魔石が私と雪の魔力で出来てるから。だよね。
喋るというか「話せる」って言ってたのか。
話す‥‥念話?かな。やっぱり。
《雪。聞こえる?》
《? マリン様ですか?》
《うん。やっぱり話せるって念話なんだね。》
《はい。》
《えっと、話せたついでに聞いていい?》
《はい。何でしょうか?》
《私は雪を召喚もできるんだよね?どうやってするの?》
《そういえばご説明しておりませんでしたね。簡単ですよ。私の存在をイメージして【召喚:雪】とだけ仰って頂ければ召喚できますよ。》
《それだけ?》
《はい。》
《へ~。分かった。ありがとう。‥‥雪、またこうして話したりしていい?》
《はい。勿論、お待ちしております。》
《うん!じゃあそろそろ寝るね。おやすみ、雪。》
《はい。おやすみなさいませ。マリン様。》
なるほど。だから「身に付けて」なんだ。
※2021,9,4 改稿しました。