265話 捜索と救出
南の辺境伯領にあった焔がいた遺跡跡に来た私。
さて、姉様達が襲われたのが辺境伯領に向かってる途中だったってことは北にとりあえず向かってみるか。
【雲隠】で姿を隠した上で、フライで飛び立ちサーチも使いつつ、一先ず襲われた現場付近を探してみることにした。
辺境伯領寄りの街道だよね‥‥
う~ん‥‥やっぱり襲撃から数日経ってるからこの辺りにはいないか‥‥。
かといって闇雲に探してもしょうがないしな‥‥
空中で止まって浮いたまま考えてみる。
そういえば、なんでリゲルと姉様とルシアの三人だけ?
リゲルと姉様だけなら売り飛ばすとかかなとは思うけど、その場合ルシアはむしろ邪魔だよね?貴族じゃないし、それどころか犯罪者だし。
‥‥‥逆にルシアを狙って、ついでにリゲルと姉様も連れて行った?
その場合、ルシアを狙う理由は?‥‥‥‥‥分からん。
でも、捕まえるのを三人だけに絞ったのは移動しやすくするためかな‥‥?
それなら、王都には行かないよね?三人は王都から来たんだから、ちょっとでも姿が見られたら意味がない。王都にいる筈のない人達がいれば、何かあったんだとすぐにでも報告が上がる筈だからだ。
となると‥‥‥西?東?はたまた南の教国?
いや、さすがに教国はないか?
有力なのは西か東だな。
‥‥‥‥‥まさか。いや、でもそんな訳‥‥‥
行くだけ行ってみるか。西に。
一先ず考えが纏まったところで、私は方向を変えて西へと向かった。
辺境伯領から西へと進むと、勿論別の貴族家の領地へと着く。
そのままサーチを続けていると、姉様とリゲルを見つけた。気配を追えてるので、一先ず生きてることは確認できた。そこには安心した。でも‥‥
‥‥予想、当たった‥‥まさか、本気で私達を襲撃した盗賊達と合流するつもりだった‥‥?
確かにうちの領地から南東寄りに、南の辺境伯領から北西寄りにそれぞれ進めば合流できるだろうけども!
単純過ぎないか!?
‥‥‥あ。ルシアは?‥‥‥あ、いた。姉様達とは別の部屋にいるみたいだな。
っていうか危うくルシアの存在、忘れるところだった。
今姉様達がいる場所は勿論、領主邸ではない。
領地内の端っ子にある別の建物だ。
ん?よく見たら、ルシアの拠点に似てる様な‥‥?
私がルシアに誘拐された人達を救出に行った時の建物のことだ。あの平屋に似てる。同じく、窓が一切なかったり、入り口が玄関のみで裏口すらない。
‥‥‥ルシア狙いだったか‥‥?
とりあえず、姉様達のところに行きたいところだけど、あの時のと同じなら多分姉様達は真っ暗な地下室かな。
なら堂々と地上を制圧するか。
それなりに人はいるけど、まあこれぐらいなら余裕かな。
ー余裕だとマリンは思っているが、この中にはざっと50人ぐらいはいる。地下に見張りとしている者を含めてだが、それでも本来は一人で何とかなる人数ではない。ー
そして玄関手前で降り立ち、改めてサーチで確認するとやっぱり姉様とリゲルは地下にいるっぽい。そして玄関の見張りが二人いる。
さぁ~て、私の怒りを受けてもらおうか‥‥
【雲隠】を解除して、堂々と玄関前の二人の前に進み出た。
「あ?てめえ何しに来た?」
「おい、よく見てみろ。上玉だぞ。こいつも捕まえようぜ。」
「ん?‥‥確かに。捕まえるか!」
と言って私に近付いて来ようとしたので。
「はあ?あなた達に用はないわ。」
「あ?ガキが生意気言いやがって!」
「はぁ‥‥‥【岩弾】」
その瞬間、二人は呆気なく倒れた。
「邪魔しないでくれる?」
と聞こえてないだろう二人に向かって言ったあと、【水牢獄】に入れて、そのまま堂々と玄関扉を開けて中に入っていった。
心情的には【絶対的氷結】で氷像にでもしてやりたいところだったが、殺してしまいかねないのでグッと耐えた形だ。
そして中に入った瞬間囲まれた。この人達盗賊かな?
「おい、何か美少女が自ら入って来たぞ?」
「わざわざ捕まりに来てくれたのか?ん?」
と口々に言ってるが、当のマリンにとっては雑音でしかなかった。
「うるさいわね‥‥。」
『あ!?』
「うるさいって言ったのよ。」
「お前、自分の立場分かってるか?お前の命なんぞあっという間に終わるぞ?」
「はっ。馬鹿馬鹿しい。その言葉、そっくりそのまま返すわ。」
「舐めやがって!」
と一人が殴り掛かってきたが、軽く横に避けたあと、
「遅っ!【水流】」
『うおっ!』
私は目の前の壁と化していたやつらをちょっと押し流した。そして、私は狙ってこれを使った。
シールドをちょっと上に張って、その上に乗り、床の水溜まりに手を浸した。
「ちょっとの間、大人しくしてなさい。【雷】」
『!!!』
一応死なない程度に威力を抑えた筈だけど‥‥‥
死んでないよね?気絶した‥‥?
そして水球を作って倒れた人達を地道に【水牢獄】の中へと入れていった。が、
あ~!!面倒くさい!!
そして入れ終わった後も、念のためちょっと上に都度【土塊】で足場を作って進んだ。一先ず、目指すは地下の入り口。
あの時と一緒なら書斎かなと思って向かっていくと、途中から魔法の範囲外にいたのか、ピンピンしてる奴らが襲ってきた。
勿論【麻痺】で動きを封じてから【水牢獄】へという、もう定番化してきた工程を繰り返しながら進み、書斎の中にいた奴らも同じ様に一掃したあと、前と同じ様に本棚にある本の一冊を動かしてみると、
ガチャ
ゴゴゴゴゴゴ
やっぱり一緒かい!!
と心の中でツッコミを入れつつ、【ライト】で足元を照らしながら地下へと続く階段を降りた。
すると。
「誰だお前!?」
地下にいた上の奴らの仲間である。他にもいるが、合わせて10人ぐらいか。
「あなた達に教える名前はないわ。」
と言いつつ、暗くてもサーチで位置の分かる私はサッと動いて【麻痺】で全員行動不能にして【水牢獄】へ。
この場の全員を捕らえたところで、姉様がいる牢屋の前に行き、
「姉様。お待たせしました。」
「マリン!?」
「はい。大丈夫ですか?」
「ええ。抵抗した時にできたかすり傷だけよ。」
「良かった‥‥今出して差し上げますね。」
そして私は身体強化を使って、牢屋の柵を無理矢理広げて、人が通れる様にした。
「マリン。ごめん、この縄を切ってくれる?」
「はい。分かりました。」
姉様の両手首を縄で拘束して、腕を吊るされたまま壁に張り付け状態にされていた。
よく無事だったな‥‥。
とりあえず私は牢屋の中に入って、拘束している縄を魔力刃で切った。
その瞬間、姉様が私に抱き付いてきた。
「マリン‥‥ごめんね‥‥助けに来てくれてありがとう‥‥。」
震えてる‥‥やっぱり誘拐されたら怖いか‥‥
「姉様。もう大丈夫です。【気分鎮静化】」
「!!‥‥‥ふふっ。ありがとう、マリン。もう大丈夫。」
と言って姉様は私から離れた。
そして次に隣のリゲルの牢屋の前に二人で行くと。
今の私達の会話が聞こえてたからか、
「あ。やっぱりクリス様が先か。」
「ふふっ。勿論。」
「マリン。悪いが、俺も頼む。」
「了解。」
リゲルも同じ状態にされていた。
こちらも姉様と同じ様に拘束を切った。
「ありがとな、マリン。」
私は多分、初めてリゲルを自ら抱き締めた。
「え?ま、マリン?」
「リゲル。怖かったでしょ?震えてるよ。」
「え?あ‥‥‥本当だ‥‥。」
「もう、大丈夫だからね。」
「‥‥‥ああ。」
そして私はリゲルから離れて【気分鎮静化】を掛けた。
「‥‥‥もう大丈夫だ。行こう、マリン。」
「うん。」
そして他に誘拐された人達がいないことを確認してから、二人と【水牢獄】を連れて地上への階段を登って行くと、また扉を閉められていた。
「え!?し、閉まってるよ。マリン。どうするの!?」
「ふふっ。大丈夫ですよ、姉様。この建物、私がルシアに誘拐された人達を救出に向かった建物と似た構造みたいなので。」
「え?そうなの?」
「はい。」
「じゃあ、出る方法も分かるのか?」
「うん。」
扉近くを探ってみると、やっぱりあった。
手のひらサイズぐらいの不自然な形取り。
そこを押してみると、
ガコン
ゴゴゴゴゴゴ
「「おお~!」」
と二人は関心している様だが、
これも一緒かい!!
まあ、考えなくていいからいいや。と気にすることをやめて地上の書斎に出ると。
「マリン様。相変わらず、あっさり出てくるのですね。」
「はぁ‥‥‥ルシア狙いだったか‥‥」
「おや?私はまだ拘束されたままなのですが、何故私狙いだと?」
「普通、捕まえた相手を拘束しているとはいえ、自由に歩ける様にはしないでしょ?姉様達みたいに牢屋に入れる筈だわ。」
「それもそうですね。」
と、話しているとそこにまた人が入ってきた。