261話 マリンの孤独な戦い
さて、私はゴブリンの集団を探すべく空を飛んでいった。
ただ、この森は奥の方に雪がいた遺跡があったりもした場所でもあるのでわりと広い。
なので前回巣を作っていた場所にまず行ってみたが、違った。
そのまま周囲を探してみるとあった。
ちょっと離れた場所にまた洞窟の様な場所があり、どうやらそこに住み着いた様だ。
これか‥‥‥う~ん‥‥前回より数が多そうだな‥‥。
人は誰もいないみたいだし、やっちゃうか。
ということで近くに降り立ち、雲隠を解除した。
ストレージから細剣を取り出して装備し、堂々と正面から向かっていった。
勿論、入り口にも通路にも下っ端がいたが全て切り伏せてずんずん進んでいった。
そして広い空間に出たが、やっぱりキングやらナイトやらが今回もいた。下っ端も大勢。
面倒くさいな~この数‥‥まあ、掃討するのは変わらないからやるけど‥‥。
そのあとの私はゴブリンにとっては脅威でしかなかっただろう。
通路は私が通ってきた一本だけ。他の道を作るまでは考えてなかったか、掘る技術がなかったのかは知らない。
とりあえず、その一本しかない入り口に立ち、向かって来るものを切り伏せ、遠くにメイジがいたらしく魔法が飛んできたが、相殺するかシールドで防いだ。
そして下っ端を粗方片付けた時にいい加減面倒になった私は氷槍、土槍等の殺傷能力高めの魔法で急所の頭などを狙って一掃した。
その時にメイジを優先的に倒し、残るはキングとナイト。
既に大量のゴブリンの死体が散乱しているので臭くてしょうがない。
ということで、ゴブリンナイトを剣と氷槍等でさっさと倒した。残るはキング一体のみ。
はあ~‥‥やっとキングだけになったよ‥‥面倒臭かった~。
とっとと終わらせるか。
ここでようやく重い腰を上げたキング。周りに仲間の死体が転がっているにも関わらず、全く動じてない。
むしろまだマリンに勝てる気でいるのか、睥睨してきている。
マリン以外の者ならば効果はあったかもしれない。それで逃げ出す者もいただろう。だが、このマリンはこの世界から神を一人排除した御使い。逆効果でイラッとさせるだけだった。
うわっ。ムカつくな、あの顔。
めんどいから前と一緒でいいや。
「【標的固定】」
頭に狙いを定めたあと、
「【氷槍】」
腹立つからとちょっと大きめに作った氷槍をキングの頭に撃って、貫いた。
それで即死となったキングはまた前に倒れた。
はぁ~‥‥やっと終わった。
もうこれも前回と同じでいいや。
と洞窟内にエリアフレイム(火力を上げた青い火)を放ち、洞窟を出た。
あ~外の新鮮な空気‥‥素晴らしいわ‥‥。
そして返り血を浴びていたので洗浄を掛けて、臭いで気分が悪くなっていたので気分鎮静化を掛けた。
ゴブリン達が消し炭になるのを待っていると、人の集団が近付いて来ていた。
あれ?この気配、アクア兄様?
と思いつつ、真っ直ぐここに向かっている様なので、待っていると、アクア兄様と冒険者達やギルドマスターのレックスさんが来た。
「あ。マリン。‥‥‥やっぱりもう終わったか?」
「はい。先程。今消し炭にしているところですよ。それより、お久しぶりですね。レックスさん。」
「ああ。まさか一人でやったのか?マリン。」
「はい。火力を上げて火魔法を放ってるので前回よりは早く終わるんじゃないかと思いますよ。それより、皆さんは何故ここに?」
「マリンと入れ違いでギルドマスターがうちに来てな。マリンにここまでの道案内を頼みに来たみたいだったから、先に行ってることを伝えたんだ。そしたら冒険者達も向かわせるということになってな。で、マリンを追うために俺だ。」
「なるほど。」
「まさか、マリン一人で終わらせるとは思わなかったがな。で、マリン。中はどうだったんだ?」
「前回と同じく、街ぐらいの規模はありましたね。キング、ナイト、メイジもいて下っ端は前回よりちょっと多かったので面倒でした。」
『‥‥‥。』
アクア兄様以外の人達が絶句していた。
私のステータスを知ってるアクア兄様は苦笑い。
「さて、ちょっと中を見てきますね。」
と再び洞窟の中に入っていき確認すると、終わってるっぽかったので、
「【水流】」で流してみた。
勿論押し流した水流は壁に当たって戻ってきたが、シールドで防いだ。
で、問題なく全て消し炭に出来ていた様だったので水の勢いがなくなるまで待ったあと、シールドを解除して外に出た。
「レックスさん、アクア兄様。終わってました。消火もしてきたので、レックスさん。確認をお願いします。」
「お、おう。」
そして確認が終わり、問題なしとのことで今度はちゃんと歩いてみんなと帰った。
翌日。
既に辺境伯邸の前に集まっている護衛達。
そこに向かおうとすると、
「マリン。疲れ取れてるか?」
「はい。大丈夫ですよ。父様。」
「なら、いいが‥‥盗賊は襲われない限り、探そうとしなくていいからな。」
「ふふっ。はい。分かりました。でも襲われたら返り討ちにして構いませんよね?」
「ああ。その時は遠慮することはない。だが、深追いはするな。拠点は後で吐かせて俺達で対処するからな。」
「はい。分かりました。では、行って参ります。」
「ああ。気を付けてな。」
「はい。」
そして帝国との国境へ向けて出発した。
一先ず何事もなく進んでいたのだが、屋敷を出た翌日の午後。休憩しようと止まった時に、近付いてくる集団を察知した。
また御者さんの横に座っていた私は、休憩場所で迎え打てばいいや。と馬車が止まるまで待った。
そして休憩場所で馬車が止まると、護衛全員に集まってもらい、察知したことを伝えた。
「え?私、まだ察知できてない‥‥。」
「まあ、数キロ先ですから。私達を視認できない位置なので、ここに来るかも定かではない範囲です。ただ、帝国の方々を引き連れている時だと面倒なので私達を襲うなら今にしてほしくはありますね。」
『‥‥‥。』
一番年下の筈のマリンが一番肝が座ってるという事実。
それに唖然とする一同。
そしてそれはマリン達が休憩中に動き出した。
「‥‥‥どうやら私達の一団に気付いた様です。」
『え?』
「こっちに向かって来てます。騎士や魔法師団に冒険者までいるのに突っ込んでくるなんて馬鹿なのか、目先の利益しか見えない阿保なのか‥‥どっちでしょうね?」
『‥‥‥さあ?』
慌てた様子もなく、優雅にお茶しながら言うマリンにどう反応したものかと微妙な表情を浮かべる一同だった。
そしてマリンがお茶を飲み終わり、立ち上がると。
「皆さん。来ますよ。どうします?私、とりあえず何もせず見てた方がいいですか?」
「えっと、規模は‥‥?」
「前回、私が全員生け捕りにしたぐらいですね。確か、40人ぐらいだったと思います。」
『‥‥‥。』
メリアさんは王都に連行していってくれたので知ってるが、
「マリン‥‥その40人、一人で倒したの‥‥?」
「はい。」
『‥‥‥。』
再びメリアさん以外絶句。
「‥‥‥マリンさん。誰かが命の危険になると思ったら加勢してください。それまでは我々で対処します。」
「はい。分かりました。メリアさん。」
マリンという名の最強の守護者である。
久しぶりにマリンの無双を書いてみました。
一人で無双は初めてですね。
そしてあの心の余裕。