259話 いざ、領地へ
2日後の朝。
私は登城した後、これから帝国と教国の人達を分かれて迎えに行くべく集まってる人達の中にいる。
そして現れた目の前の人物に言いたい。
頼むから脱獄とかしないでくれ。
と、心の中で切に願った私だが、あれはフラグのつもりじゃなかったんだよ!?‥‥脱獄じゃないけど、会いたくないからって意味だったんだけどな‥‥。
とげんなりしてる今、私の目の前にはネクロマンサーことルシアがいる。
それは数分前のこと。
私が登城して一緒に帝国に向かう人達のところに行くと、そこには見知った人達がいた。
「あ!ミラ先生、リサ先生。」
「あ、マリン。久しぶりだね。今回は一緒に行動するからよろしくね。」
「本当ですか!?」
「ええ。私達としても久しぶりに西の辺境伯領に行くから楽しみなのよ。マリンの家庭教師した後もたまに行ってたけどね。」
「そうなんですね。あ、教国側に友人がいるのでちょっと行ってきますね。」
「うん。」
そして教国側。
勿論こっちにも護衛の冒険者達がいる。
「リゲル!」
「ん?あ、マリン。おはよう。」
「おはよう、リゲル。ごめんね、代わってもらって。」
「いや、理由は聞いた。俺もあいつに近付けたくないし、帝国ならマリンにとっては自分の家の領地に行くんだ。そりゃ帝国側を選ぶに決まってる。気にしないでくれ。」
「ふふっ。ありがとう。」
と、話していると。
「マリン。」
「姉様とシリウス?‥‥不思議な組み合わせ‥‥とりあえず、おはようございます。」
「ふふっ。おはよう、マリン。私達は見送りよ。あと、別でルシアを教国に連行することになったからその準備よ。」
「姉様も行くんですか?」
「ええ。教国の方もルシアを連行する部隊を別に編成して生徒会の子達と来るそうだから、こっちもリゲル達と一緒にルシアを連行するのよ。」
「‥‥‥‥大丈夫なんですか?というか教国に引き渡すんですか?」
「ふふっ。大丈夫よ。それに教国だけじゃなくて、セレナイト連邦国やディクロアイト王国にも行くことになるわ。各国がルシアの、犯人の顔を見たことないから拝んで聴取するって息巻いてるそうなのよ。」
「‥‥‥私は各国の聴取する人達の心労が心配です。」
「「「‥‥‥。」」」
「ま、まあ。そこは各国にも報告済みだから大丈夫‥‥だと思うわ。」
「あ。もしかして陛下はこの為に私に当初、教国に行ってくれと?」
「そうらしい。でも父上もマリンが南の辺境伯家長男を避けたいのは分かるし、無理強いもしたくないと思ったんだろうな。」
「あ、でもそれは姉様も同じじゃ‥‥?」
「ふふっ。大丈夫よ。私は令嬢としてではなく魔法師団の一員として同行するからね。辺境伯家に顔を出す必要はないのよ。」
「なら安心ですね。」
「うん。」
と話していると、何やら騒がしくなってきた。
「なんだろ?」
「ルシアかしら?そろそろ出発だから連行する為に連れて来たんじゃないかしら?」
「ああ、なるほど‥‥‥って今、ルシアと目が合ってしまった気が‥‥」
「みたいね。目が輝いてるわ‥‥‥って!」
と言ってる間にルシアは両手首を拘束されているにも関わらず、周りを固めていた騎士達を振り切ってこっちに向かってきた。
「マリン様!!!お会いしたく思っておりました!」
と言いながら。
「げっ!こっちに来なくていいわよ!【シールド】」
「ごふっ!」
結構間近に迫って来てたので反射的にシールドを張ったら見事に激突したルシア。
「ひ、ひどいです‥‥マリン様‥‥。」
「いや、当然でしょ。」
と姉様からのツッコミが入る中、騎士達も来て再び連行しようとしたところで、冒頭に戻る。
「マリン様‥‥」
と地面に座り込んだまま見上げて私を呼んだ。
「はぁ‥‥‥ルシア。ちゃんと各国回って聴取にも素直に答えてよ?」
「はい‥‥。」
そして今度こそ大人しく騎士達に連行されていった。
私達も出発である。
「じゃあ姉様、リゲル。気をつけて。」
「マリンもね。」
「はい。」
私は帝国との国境に。姉様とリゲルはルシアを連行しつつ教国との国境へ向かうべく、それぞれ出発した。
そして帝国側道中は。
「ねぇ、マリン。」
「はい?」
「本当に座るの、御者席で良かったの?」
「はい。一人で中にいても退屈ですし、いつもは父様達もいて駄目だと言われるのでむしろ新鮮で楽しいです。」
「ならいいけど。」
帝国との国境に向かう部隊の中で、令嬢として向かうのは私だけ。なので馬車は私の為だけに用意されていた。
その馬車に馬で平行して進むのは、騎士や魔法師団の混成部隊と冒険者による護衛。
護衛が厳重過ぎないか?と思ったが、これが普通だと。
帝国から来た人達も護衛することになるので当然の人員だそうだ。私が上級貴族の辺境伯家の令嬢でもあるから厳重なのは当たり前。とシリウス、リゲル、姉様にたっぷり説明された。
そして自身が強いとこうなのかと呆れた顔を向けられた。
で、今話してたのは勿論ミラ先生とリサ先生。
驚きなのが、手綱を握っているのは剣の先生だったミラ先生ではなく、魔法の先生だったリサ先生だ。
二人で相乗りしてる。
「なので、先生達。私がここに座ったの、父様達には内緒でお願いします。」
「はいはい。分かったわ。」
「ふふっ。マリンさんと仲がいいんですね。」
「メリアさん。お二人は私が5歳の時にそれぞれ剣と魔法を教えてくれた家庭教師の先生だったんですよ。」
「そうなんですか‥‥道理で仲がいい訳ですね。」
「はい。」
騎士と魔法師団の混成部隊の隊長としてメリアさんも同行している。他の騎士達や魔法師団の人達もちらほらと見覚えのある人達ばかりだ。
「何か家族や友人以外の知ってる人達と領地に行くって不思議な気分ですね。」
「でも、初めましての人もいるでしょ?」
「はい。クリードさんとヴァルトさんですね。」
今回同行している冒険者の人達だ。こちらは男性二人のパーティーだ。
なので同行している冒険者はリサ先生達とクリードさん達の合計四人。
「ええ。ただ、あのクリードの方は惚れっぽいから気をつけてね。マリン。」
「リサ先生、さすがに未成年を相手には‥‥」
「マリン。私、あいつが冒険者登録したばかりの子に声を掛けてるのを見たことがあるわ。」
「え‥‥」
もう一人いたか‥‥ロリコン。
「えっと‥‥‥気をつけます。少女趣味はもう懲り懲りなので‥‥。」
「「え?」」
「ネクロマンサーのことですよ。城でマリンさんの名前を叫んでいたでしょう?」
「「ああ~。」」
「苦労してるね。マリン。」
「はい‥‥。」
「話、変えようか。マリンは今、ランクどこまで上がってるの?本登録後も結局会ってないから聞いたことなかったよね?」
「あ。確かにそうですね。本登録の時はギルドマスターに呼ばれましたしね。」
「うん。‥‥聞いて良かった?」
「はい。大丈夫ですよ。あの本登録の時にいきなりBランクになって、その年に色々あってAランクになりました。今もAランクのままです。」
「「「「Aランク!?」」」」
冒険者4人の声がハモった。騎士達と魔法師団の人達は知ってるから驚きはない。
あ、クリードさん達も聞いてたんだ‥‥。
さっきの自分のロリコン話には食い付かなかったけど、いいのかな?‥‥‥まさか自覚ありか?
‥‥‥‥話さなければいいか。
「ぬ、抜かされた‥‥まだ私達、Aランクじゃないのよ。」
「さ、さすがマリン。抜かされるとは思ってたけど、こんなに早いとは‥‥って今、その年にって言った!?12歳でAランクになったの!?」
「はい。」
「はいって‥‥そんなあっさり‥‥。」
「ははは‥‥私もこんなに早くランクが上がるとは思わなかったんですよ‥‥。」
私達はその後は和やかに話しながら西の辺境伯領へと進んでいった。