257話 職員室で
数日後。
ようやく周囲から夏休みの緩みきった雰囲気が抜けてきた頃。
学園の食堂で昼食をとっていたマリン達。
「ねぇ‥‥前から思ってたんだけど、この学園に購買ないよね?」
『こうばい?』
「ってなんだ?」
「やっぱりそこからか‥‥。手に持って食べれる軽食‥‥パンとかね。あと学校にもよるけど、筆記用具とかを売ってたりするところもあるね。この学園は昼食代も生徒は払わなくていいから気にならなかったんだけど、庭園を開放してそこでお昼食べたりするなら購買とかあった方がいいのかな~って思っただけ。」
『へ~!』
「お昼代を出さなくていいから、購買も料金を取らないで好きな方を選んでってすればいいかなって。」
「なるほどな。」
「ただ、問題があるんだよ。」
「なんだ?」
「どっちを選んでもいいってことは選ばなかった方でゴミが増える。食材が残ったら勿体ないでしょ?」
『ああ~。』
「だから、一瞬提案してみようかと思ったけど、やめようかな‥‥今食べてるのを庭園に持っていって食べたらいいんだしね。」
「そうだが、面倒ではあるな。この学食も量が多いっていう生徒が少なからずいるらしいから、購買っていうのもいいかもしれないぞ?」
「そうなの?」
「ああ。」
「ふ~ん‥‥まあ、それはもう少し考えてみるよ。で、みんな。例の剣術・魔法大会なんだけど、ちょっと先生にも相談してみてからにしない?」
「え?何を相談するの?」
「まずは、そもそも行事を勝手に提案していいものかってことだね。参加者を募るのも先生の協力なしにはできないし。先に聞いてみた方がいいかなって。」
「なら、まずは担任でもあるレイヤ先生に聞いてみる?魔法戦の方が危険だから意見出してくれるかもしれないし。」
「だね。あ、ヴァン先生にも聞きたいから生徒会行く前に職員室に乗り込もうかな。」
「剣術の方か?」
「うん。」
「では、マリン姉様。僕達は先に生徒会室に行って他の人達に遅れてくる旨を伝えておきますね。」
「ありがとう。リオト。でも、職員室には私とリジアだけで行くから大丈夫だよ。」
『え?』
「何故だ?」
「シリウス。王太子が行ったら、シリウスにその気がなくても勝手に圧を感じたりするかもしれないでしょ?レイヤ先生とヴァン先生は慣れてきたかもしれないけど、職員室には他の先生達もいるんだし。」
「確かにそうね。」
「というわけで私達以外全員王族や皇族なんだから遠慮してね。」
「何言ってるんだ?マリンも王族とは縁戚だろ?」
「‥‥‥あくまでも縁戚だもん。王族じゃないもん。」
『‥‥‥』
「どっちにしても私達が行くのが無難でしょ?大勢で行くのも迷惑だし。」
「まあ、確かにな。」
これでようやく全員納得したところで午後の授業へとそれぞれ向かった。
放課後。
私は予定通りリジアと職員室に来ていた。
ちなみにシリウス達には先に生徒会室に行ってもらってる。
そして、レイヤ先生の机のところにヴァン先生も来てもらった。
「で、どうした?」
「ヴァン先生、レイヤ先生。唐突ですが、行事を新たに作りたいと言ったら可能でしょうか?」
「「え?」」
「例えば?」
「この学園、折角剣術や魔法の勉強もできるのに成果が分かるのは成績だけじゃないですか。だから大会でも開いてみないかなと。」
「あ、だから私とヴァン先生なんですね。」
「はい。」
「クローバー。そう言うってことは構想はあるんだよな?」
「はい。だから提案する前にそもそも行事を新たに作る提案をしていいものかと思って聞きに来たんです。」
「いいんじゃないか?」
「え?」
「はい。私も大丈夫だと思いますよ。」
「え?そんなあっさり‥‥?大丈夫なんですか?」
「ふふっ。はい。マリンさん、授業の内容‥‥座学の方です。小さい頃に習いませんでしたか?」
「‥‥‥習いました。」
「貴族家の子達は大体そうです。貴族の子達は復習、平民の子達は純粋に学びに来ている状況です。なので大半の子達が選択授業のために登校している様なものです。しかも留年ということはこの学園にはありませんよね?」
「はい。聞いたことないです。」
「それは留年しなくていい様に、時に個別で我々が指導しているからです。まあ、なかなかいませんが。伊達に最難関校と言われているわけではないのですよ。皆さん基本的に優秀で真面目な方ばかりなので、ちょっと行事で羽目を外したところで問題ありません。」
「でも、授業日数とかは‥‥?」
「ふふっ。試験休みとかがあるでしょう?」
「あ。」
「分かったか?要はやり方次第だ。」
「‥‥‥なら、他のもいけるかな‥‥」
「ん?他にも何かあるのか?」
「えっと、まだ細かく考えてないんですけど、学祭とか修学旅行ってどうかな‥‥と。」
「お。なんか面白そうだな。」
学祭と修学旅行ってこんな感じ。というのを話してみると。
「時期やらは考えないといけませんが、不可能ではないかもしれませんね。」
「ああ。今年度に全部はさすがに無理だろうがな。」
「ですね。今年はもうすぐ交流会がありますから、生徒会も準備で忙しくなるでしょうしね。」
「では、来年度にやりますか?」
と第三者の声が聞こえてきたのでそちらを向くと、学園長がいた。
「え?学園長?‥‥‥って、え!?」
いつの間にか職員室にいた先生達全員が集まっていた。
「面白そうな話が聞こえてきたので、つい‥‥。」
「リジア、気づいてた?」
「うん。ずっとマリン達が話してたから言い出せなかったけど、途中からずっと聞いてたわ。先生達。」
「どこから?」
「剣術・魔法大会を提案してる途中。」
「ほぼ最初からじゃん!」
「そうね。気づいてなかったの、マリンだけよ?」
「え?そうなの?」
「うん。」
「で、クローバー。まずは、剣術と魔法で大会をやってみないかってことだったよな?」
「あ、はい。先生方にご協力頂いて、参加者を募ろうかと思ってるんですが、どうでしょう?」
『‥‥‥』
「クローバー‥‥多分、全員参加するぞ。」
「私もそう思います。」
「‥‥‥‥そうなると学園ではできないですよね‥‥?」
「だな。まずは、クローバーの構想を聞かせてくれるか?」
「はい。」
私達の帝国にいる間での話し合いの結果。
■剣術・魔法両方共各学年ごとに参加者全員で総当たり戦をしてもらう。
剣は刃の部分を潰した訓練用のみを使う。
魔法は球のみ使用可。他の魔法を使用した時点で失格。
上位16人のみ勝ち進むことができる。
■上位16人はくじ引きしてもらい、一対一の対決をして最後まで勝ち進んだ人が優勝。
※要はトーナメント戦。
「ざっくりとはこんな感じです。これは参加者が多い場合なので、参加者が少なければいきなり対決でもいいかなと思います。そして優勝の景品は誰か戦いたい人を一人指名できるとかにしようかと。」
「なるほどな。じゃあまずは、審判はどうするつもりだ?」
「最初は生徒同士でやろうかと思いましたが、無理ですよね?」
「無理だな。クローバーはできるかもしれないが、他のやつはやったことないだろ。そこは考えてるか?」
「できないことを勉強しろっていうのも、色んな意味で無理でしょうからね。諦めて冒険者に依頼を出すか、申し訳ないですが、騎士や魔法師団の方々に頼むかかなと。」
「まあ、そうなるな。あと、場所は?」
「そこも相談したかったんです。参加者が少ないなら学園でやればいいかなと思いますが、多いと場所が‥‥」
「それは闘技場を貸してもらえばいいんじゃないか?」
「え?闘技場なんてありましたっけ?」
「ああ。あるぞ。王都の北の方だからスラムとは反対方向だが、行ったことないか?」
「はい。なかったですね‥‥そういえば、城より北に行ったことがないですね‥‥。」
「まあ、用事がなけりゃ行くことはないか。」
「はい。」
そしてまだまだ話は続く。
この「転生できたので自由に生きたい」の再編集版を別に作りました。
活動報告に詳細を載せてますが、とりあえずこちらで続きを投稿しながら再編集に取り掛かっていきます。