254話 軽く言わないで‥‥
さて、突然言われた拡声の魔道具の修理。
いや、知識もないのに無理だろ。
という話だ。
でも、魔道具を作って生計を立ててる人がこうして作ってる訳で。なら修理方法もあるだろう。
‥‥‥‥修理魔法、あったりして。
と私が考えている間、みんなで。
「なあ、マリン思い付くと思うか?」
「どうだろう?」
「前世の知識があっても万能ではないんじゃないか?」
「だよなぁ‥‥‥拡声魔法を俺に掛けるだけでもいいだがな。後々の為にも直せるなら直してほしいが‥‥。」
「でも、マリン姉様もさっき「私は何でも屋じゃない」って言ってましたし、魔道具も作ったことがないならやっぱり難しいのではないですか?」
「やっぱりマリンの創造魔法でなんとかなると思ったのは甘い考えだったか?」
うわ~陛下、甘い考えって思ったなら最初から製作者に修理頼んでよ!
しかもシリウス。私が拡声魔法使える前提の話ししてるし。
さて、修理‥‥‥‥‥‥‥‥あ。
あれなら探せるか?日本とこの世界の名前違いを考えずに編み出したから一回も使うことなく終わってる魔法。
‥‥‥物は試しかな‥‥。
「‥‥‥やってみるか。【辞書】」
『え?』
すると、目の前に画面が出てきた。
いわゆる◯フーとか◯ーグルとかの検索画面みたいなやつ。検索したい言葉を入力する枠が上に、入力するための文字列が下に表示されている。
あ~そういえば作った時、辞書とはいえ本の状態で出てきても困ると思って、これにしたんだったわ‥‥。
‥‥‥何て入れて探すよ?単純に修理魔法か?
ということで普通に「修理魔法」で検索してみると。
(勿論この世界の言語で。)
‥‥‥‥あるんかい。まんまだし。詳細まで‥‥。
【修復】▼
壊れた魔道具を修復する。
部品が揃ってない場合は使用者の魔力にて部品を新たに生成することで補う。
すごっ‥‥。魔力があれば魔道具なんでも修復できるじゃん。これ最初に思い付いた人、天才だな。
あ。でも、原型留めてて構造を理解してないと無理か。
完全な状態をイメージできないと修復しようがないだろうし。
とりあえず魔道具自体を理解することからだな。
と考えつつ辞書を閉じたところで、
「‥‥‥マリン。修理できそうか?」
「えっと‥‥修理する魔法はあるんですけど、やっぱり構造を理解してないと直った状態をイメージできないので難しいかなと。」
「修理する魔法はあるのね‥‥。」
「うん。」
と話しながら拡声の魔道具を手に取って見始める。
「でも、魔道具に関しては素人だか‥‥‥ん?」
「どうしたの?」
手に取った魔道具はクリーム色っぽい色で筒状の物だった。
でも、そのクリーム色も綺麗な感じではなく、昔は白だったのが経年劣化で色も変わったと言われた方がしっくりくる。
そして私が気になったのはその筒に何か蓋?みたいな物が被さっている様だったからだ。さっきはチラッとしか見なかったので気づかなかった。
‥‥‥これ、キャップじゃね?
と思って引っ張ってみると、やっぱりキャップだった。
そしてキャップを外した中に隠れていた物を見て、私は固まった。
マイクじゃん‥‥‥リアル拡声器じゃんよ‥‥
でも、何でマイクがこの世界に‥‥‥ってもしかして‥‥
「【鑑定】」
マイク▼
拡声魔法を付与することによって広い範囲に使用者の声を届けることが可能。
まんまじゃん!
と思ってそのまま下を見て、私の予想が的中したことに力が抜けた。
マイクを目の前のテーブルに置いてから私もテーブルに突っ伏した。
「はぁ~‥‥‥もうなんなの‥‥‥。」
「ど、どうしたの?マリン。」
「リジア~。これ、創造神様が作ったやつだった‥‥。」
『え!?』
「ま、マリン。今まで何人か鑑定を使える者に見てもらったことがあるが、誰も製作者まで分かる者はいなかったぞ。部品もこの世にない物で複製ができないとも‥‥‥そういうことか?」
「はい。陛下。多分、創造神様が製作者の所を見られない様に細工したんだと思います。この魔道具、日本にあるものでマイクっていうんです。何か正式名称があった気がしますが、忘れました。で、拡声の付与をしたのは雪奈姉みたいです。」
『えぇ!?』
「ま、まあ初代王妃殿だからな‥‥。」
「さて、日本にあった物と同じでも構造は知らないんですよね‥‥‥。聞いた方が早いかな‥‥」
『え?』
《創造神様。》
《聞いておった。マイクじゃろ。》
《なら話が早いです。修復魔法で直せるものですか?》
《いや、マリンも言っていた様に構造を理解しないと無理じゃ。》
《じゃあ、どうしたらいいですか?》
《作ったらどうじゃ?》
《はあ?》
《じゃから、マリンが新たに作ったらええじゃろ。今あるマイクは日本にあるのを儂が複製した。それを雪奈さんに渡しただけじゃ。儂も構造は知らん。》
《相変わらず適当ですね‥‥‥私が作ったら構造とか無視することになるので壊れたら‥‥‥修復しやすいですね、そっちの方が‥‥。》
《じゃろ?》
《はぁ‥‥分かりました。やってみます。》
《うむ。ではの。》
「はぁ~‥‥‥。」
「ま、マリン。大丈夫?」
「うん‥‥‥。陛下、シリウス。マイク、創造神様も構造知らないそうです。日本にあるのを複製しただけだと。」
『‥‥‥‥。』
「分かりますよ。創造神様は変なところで適当なんですよ。で、あの神様私に何て言ったと思います?」
『さ、さあ‥‥?』
「新しくマリンが作ればいいじゃないかって言いやがったんですよ!」
「ま、マリン。言葉が微妙に乱れてるわよ!」
「は!‥‥失礼しました。」
「いや、構わんが‥‥‥作れるのか?」
「見本は目の前にありますし、元々構造なんて知らないですし。深く考えなくて済むので恐らく作れます。」
『‥‥‥。』
「とりあえずイメージは出来ますし、やってみます。」
「あ、ああ。」
えっと‥‥‥作る‥‥‥創作?‥‥でいっか。
「【創作】」
えっと‥‥マイク‥‥黒光りしたバージョンの目の前のあれ‥‥
とイメージしながら魔法を発動していると、前世でカラオケに行けばいつでも使えたマイクが私の手の中に形創られた。
「さて、あとは付与だな。」
雪奈姉が付与した拡声魔法。多分風を利用して声を届ける的な考えで付与したんだろう。
‥‥‥それでいい筈。駄目だったらシリウスに直接拡声魔法掛けたらいいや。
ってことで付与を施したところで。
「できました。」
『‥‥‥‥。』
私がマイクを作り始めた時からずっと無言だった皆様。
「陛下~?シリウス~?時間ないですよ~?」
『はっ!』
お。みんな現実に戻ってきた。
「と、とりあえずありがとう。マリン。」
「うん。そこのポコッと出てる所を上に動かすと自動的に必要な魔力取って発動するから。」
『え!?』
マイクの造形はこの辺も忠実に日本のマイクを再現してみたんだよ!
「で、さすがに拡声魔法はまだ使ったことないからさ、失敗してたら姿消して直接シリウスに拡声魔法掛けに行くから。」
「お、おう‥‥分かった。」
「頑張ってね。‥‥王太子殿下とこれからはお呼びした方がよろしいですか?」
「やめてくれ‥‥‥今まで通りがいい。」
「ふふっ。畏まりました。緊張が隠せない王太子殿下。」
『ぷっ!』
「‥‥‥事実ですが、みんなして笑わなくても‥‥。」
「魔法をご所望ですか?王太子殿下。」
「まだ続けるのか‥‥‥だが、頼む。」
「ふふっ。では。【気分鎮静化】」
「ありがとな。マリン。」
「今は私が掛けてあげられるけど、学園を卒業したら私、いないからね?しっかりしてよ?」
「ああ。分かってる。徐々に慣れるだろ。」
「だね。」
そして全員で移動を開始したのだが、私はちょっと内心あることに驚いていた。
それはマイクを一から作った時、ハッキリ分かるくらいごっそり魔力を使った。
表示不能になるぐらいの今の魔力量になってからで良かった‥‥‥その前にやってたらぶっ倒れてたよ多分。
拡声の付与までできなかったと思う。
やっぱり何もないところから物を作り出すって大変なことなんだな‥‥。
そんなことを考えつつ、私は精神的疲労を感じながらみんなの後をついていった。
サブタイトルはマリンの心の声でしょうね。
この言葉が作者の頭に降ってきたんです。
「陛下も創造神様も何故こうも‥‥‥!!!」と。