249話 浄化跡地にて
雪奈姉と柚蘭と共に執務室に戻ってきた私。
そして、改めて私が浄化した森にゲートを繋げ直した。
先に私が通り、安全確認をしたところで全員を呼んだ。
「さて、現時点で魔物の気配を察知できてる方はいますか?」
「え?いるの?鈴。」
「あれ?柚蘭ができると思ってたけど、サーチやったことない?」
「うん。ない。教えて。」
「いいよ~。それで、分かる方は‥‥‥‥いないか。」
という訳で、一先ず柚蘭にサーチのやり方を伝えた。
「ん?このちょっと先にある私達とは違う気配が魔物?」
「うん。正解。ちょっとって距離じゃないけど。」
「へ~!」
「さすが。柚蘭も一発だね。」
『‥‥‥‥。』
「さて、伯父様の最後の地はこの先ですよ。」
と言ってずんずん進んでいると。
「あ。」
『え?』
「柚蘭、みんなに教えないでね。」
「え?訓練かなにか?」
「そういうこと。母様達は私から離れないでくださいね。」
「はーい。」
と、話していると。
「フレイ兄様!来ます!」
「ああ!」
おお~さすがアクア兄様。
っと。こっちもきたな。
「よっと。‥‥うわっ、キモッ。」
オークだったっけ?やっぱりちょんぱすると駄目だな。
魔物全般にいえることだけど‥‥。
「鈴。」
「ん?なに?」
「鈴、お姉ちゃんに剣2本もらってるんだよね?」
「うん。あ、柚蘭も剣使う?」
「うん。魔法、やり辛い。」
「じゃあ、これ使っていいよ。私はもう一つの方を使うから。」
と言って今、手に持っていた細剣の方を柚蘭に渡し、ストレージからもう一本の剣を出そうとすると。
「ん?邪魔だな。【氷槍】」
またオークが迫ってきていたので魔法で射した。
そして改めて剣を出していると。
「ん?なんですか?皆さん。私を見てたら危ないですよ?」
何故か雪奈姉達以外の全員が私を見て固まっていた。
「あ、ああ‥‥そうだな。」
と、気を取り直してみんなはまた魔物達に対峙した。
それにしてもちょっと多いな。私、こんなに強制移動させたかな?
と私と同じ考えを持ったのか、元帥様も。
「マリン。あなたが強制移動させたのはこんなに数がいたのですか?」
「いえ。ここまでじゃなかった様な気がします。」
『え?』
「ちょっと多いですね。」
「そうですね。皆さん疲れてきてる様ですし、殿下達の経験ももういいでしょう。」
「ですね。‥‥‥雪奈姉~!柚蘭~!」
「「なに~?」」
「この辺り一掃したいから手伝って~!」
「「いいよ~!」」
『え!?』
「皆さん。体験終わりです。‥‥兄様達、交代です。母様達をお願いします。」
『‥‥‥。』
「私の言うこと聞いてくださいって申し上げましたよね?」
『‥‥‥はい。』
という訳で、私達3人で全員の前に立ち一掃開始です。
「まさか雪奈姉達と共闘できるとは思わなかったよ。」
「ああ~私も。」
「私も。さすがにお姉ちゃんと鈴がいると楽だね~。」
「「そう?」」
「うん。私は二人程剣を使いこなせないからね~。あ、お姉ちゃんそっちくるよ。」
「了解~。」
「おお~柚蘭すごい!もうある程度サーチ使いこなしてるね!」
「そう?」
「うん。」
と話しつつ私達3人は時にスパスパ魔物を切り伏せ、時に魔法で討ちを繰り返して、私達の通った後は魔物の死骸だらけだった。
勇者と賢者と神の御使い。明らかに過剰戦力。
その後を無言でついてくる皆。
うん。私がみんなの立場だったらドン引く光景だね。
そして目的地であるリッチーおじさんーがいた場所に着いた。
「ここです。父様、母様。」
『‥‥‥。』
来たことがある陛下達は改めて。初めてくる父様達はまじまじと目の前に広がる、ここだけぽっかりと空いた空間を見ていた。
「鈴。ここで父さんが?」
「うん。亡くなったあと、リッチになってた。」
「そっか‥‥。」
すると陛下が近付いてきて、私達に頭を下げた。
「え?へ、陛下?」
「セツナ様、ユラ様。お父様に再会させてあげられず、申し訳ありませんでした。」
「‥‥‥とりあえず、頭あげて。」
「‥‥‥はい。」
と言ってようやく陛下が頭を上げてくれた。
「マリンも。」
「え?」
「前世でも伯父だったんだろ?俺達だけで話してごめんな。」
「い、いえ!そんな!あの時、私もおじさんとは知らなかったですから!」
「それでもだ。ごめん。」
「‥‥‥‥はい。」
「それなら私もですね‥‥‥セツナ様、ユラ様。あの時、私とベアルはレウスを止めきれませんでした。申し訳ありません。」
と言って父様も雪奈姉達に頭を下げた。
「鈴のお父さんも頭上げて。」
そして父様が頭を上げるのを見てから。
「二人共。その気持ちだけでいいよ。私達は父さんまでこっちに来てることすら知らなかったんだから。それに、父さん変なところで頑固だったでしょ?」
「「はい。」」
「そして父さんはちゃんとこの世界を楽しんでから死んでいった。だよね?鈴。」
「だと思うよ。父様と陛下。友人二人から聞く話も他の冒険者から聞いた話でも楽しんだんだろうなって思うよ。」
「それでいいよ。だから二人も気に病む必要はもうないからね。父さんを友人として忘れないでくれたらそれでいい。」
「うん。私も。」
「私もです。父様、陛下。」
「「‥‥‥。」」
「マリン。ありがとな。前にセツナ様の家にお邪魔した時に言いそびれてたから助かった。」
「ふふっ。あの時は衝撃の方が凄かったからでしょう?」
「ああ。まあな。」
そして改めておじさんの最後の地を見て。
「‥‥‥あの時、ここにいる人達が揃ってたらおじさんもっと喜んだだろうな‥‥‥。」
『‥‥‥。』
多分全員が同じことを思ってたと思う。
《すまんかったのぅ。マリン。》
「創造神様のせいじゃありませんよ。」
『え?』
《じゃが‥‥》
「あの場でおじさんだと知らされても父様達も、ましてや雪奈姉と柚蘭は連れてこれませんでしたから。しょうがないですよ。」
《そうじゃな‥‥。》
「鈴、創造神様なんて?」
「ん?ごめんねって。」
「そっか。‥‥‥帰ろうか?」
「そうだね。皆さん、満足しました?」
『ああ。』
「じゃあ‥‥‥‥‥元帥様、魔物の死骸は放置したらまずいですよね?」
「さすが。気付いてくれると思いましたよ。マリン。」
「‥‥‥‥回収してきます。ここは何故か魔物が寄り付かないみたいですね。皆さんはここで待機しててください。」
『分かった。』
そして一通り回収して戻った私は、ゲートで再び陛下の執務室へと戻った。
ちなみに柚蘭は私に細剣を返したあと、雪奈姉の瞬間移動で帰るとのことで自分達で帰っていった。
うん。よく動いた。私。