248話 増えた同行者
さて、私が二年前に浄化した場所に行きたいとの父様の言葉。そこに賛同する人達多数。
「‥‥‥‥行きたい方、手を上げてください。」
バッと手を上げた人達。
頼むから全員立場を弁えてくれ。
本当に。
「‥‥‥陛下?駄目だと申し上げましたよね?」
「そうだが、前回行った時はレウスと話しただけで、ある意味目的を達してないだろ?」
「‥‥‥そうですね。とりあえず皆さんも手を下ろしていいですよ。」
手を上げた面子は。
皇帝陛下・レグルス・ベネトさん・王国側男性陣全員。
と、意外なことに母様も。
「陛下と父様と母様と‥‥アクア兄様もですかね?は純粋に伯父様の最後の地を見る為でしょうけど‥‥‥他の皆さんは魔物討伐をしてみたいとか不純な動機ですよね?」
『ああ。』
「一切の躊躇いなく断言しましたね‥‥。全員、自分の立場分かってます?」
「分かってるぞ?大丈夫だ。自分の身は自分で守る。」
「分かってないです‥‥‥魔物は人間と違って確実に私達の命を狙ってくるんですよ?そう簡単にはいかないです。」
「ああ。それはゴブリンの集団を討伐した時に分かってるさ。」
「‥‥‥‥‥ヒスイ兄様はそうでしたね。」
「このいつまで経っても自分の立場を理解しない方々を私達の手で守りましょう。ベネト、マリン。」
「元帥様はそれで手を上げて下さってたんですね。ですが、元帥様も同じですよ?」
「え?」
「元帥様も皇帝の弟であり、元帥という立場。重要でない訳ありませんよね?」
「あ。」
「ははは!ベリト、人のこと言えねぇじゃねぇか!」
「陛下?」
「‥‥‥最たる例だったな。俺。」
「ご理解頂き良かったです。なら全員構いませんよ。」
『本当か!?』
「ただし、私の言うことは聞いてもらいますよ?あと、私はほぼ母様の守りに徹しますので。」
「ああ。それでいい。」
という訳で浄化跡地に行くことになったところで。
《鈴。》
「わっ!」
「マリン?」
「雪奈姉。ちょっと待って。」
《どうしたの?雪奈姉。》
《ごめん。驚かして。鈴、確かまだ帝国にいるよね?》
《うん。いるよ。》
《柚蘭と話してて、父さんの最後の地を見に行かないかって話になってね。鈴なら場所知ってるでしょ?》
《うん。なら私達も明日行こうかって話してたから一緒に行く?》
《おお~!考えることは一緒だったんだね。タイミング良かったみたいだね。》
《むしろ聞いてたのかと思ったよ。》
《創造神様達じゃないんだからそこまでできないよ。で、一緒に行っていいの?》
《私のゲートで行くから大丈夫じゃない?私達の事情を知ってる人達を連れて行くんだし。》
《あ。そうなんだ。じゃあ一緒に行こうかな。》
《なら、私が迎えに行くから待ってて。あと、魔物がいるかもだから一応武装しててね。》
《分かった。じゃあ待ってるね。》
《うん。》
「皆さん。雪奈姉と柚蘭も行きたいらしいです。」
『え!?』
「勝手にいいよって言っちゃいましたが良かったですよね?」
「あ、ああ。」
「で、いつ行きます?」
「そりゃあ午後だろ。」
「ですよね。じゃあ午前中何しようかな‥‥‥あ。先に行って魔物減らすかな‥‥。」
『やめてくれ!』
「‥‥‥‥そんなに魔物と戦ってみたいですか?」
「冒険者がどんな風に戦ってるかを実際に体験してみたいんだよ。」
「皆さんも同じですか?」
『ああ。』
「ほう‥‥?言いましたね?というかアクア兄様もですか‥‥?ではサーチが使える皆さんには魔物が近付いても知らせません。サーチが使えない父様と母様を守ります。」
『え!?』
「体験したいんですよね?どうぞ。陛下と元帥様は使えるか知りませんから守りますが、皆さんはサーチ使えるから問題ないですよね?」
『‥‥‥‥。』
「自分の身は自分で守るんでしょう?体験したいんでしょう?頑張ってくださいね。さて。私は部屋に戻りますね~。」
「あ、待って。マリン。」
「マリン姉様!」
と、同室のリジアとルビアと共に食堂をあとにした。
そして翌朝。
「う~ん。結局何しようかな?」
「決めないまま寝ちゃったからね。」
毎朝の鍛練を終えて、部屋に戻ってきた私はリジアやルビアと話していた。
「マリン姉様。兄様達のゆかたは作らないんですの?」
「リゲル達の?作ってもいいんだけど、まだ身長伸びるだろうから作ってもすぐに着れなくなるでしょ?」
「なるほど。」
「現にいつの間にか3人共、既に見上げるぐらいになってきてるし。」
「ああ。確かにそうね。まあ、私達もまだ伸びるでしょうけどね。」
「だね。」
と、話しているところにシリウス達が来て学生が揃った。
「3人で話してたのか?」
「うん。結局何するか決めないで寝ちゃったからね。」
「何話してたんだ?」
内容を話すと。
「確かにそうだな‥‥‥。」
「着てみたかった?」
「ああ。ヒスイ兄様達が羨ましかった。」
「おお‥‥正直。でもこればっかりは仕方ないことだよ。」
「そうだな‥‥。」
「では、僕も駄目ですか?マリン姉様。」
「うん。ごめんね。その内リオトも私達の身長を追い抜くんだろうな‥‥。」
「マリン姉様を見下ろす!?‥‥‥興味深いですね‥‥‥。」
「ベッドとか椅子の上に立ったら体験できるよ?」
「あ。確かにそうですね。」
「マリン?」「マリン姉様?」
「え?何?」
「お行儀悪いことを教えちゃ駄目でしょ?」
「そうですわ!」
「あ。ごめん。」
「‥‥‥。」
「リオト。あと二年だ。俺達は既に見下ろしてるからな。」
「二年後はマリン姉様、旅に出てるじゃないですか!」
「だからって帰らないことはないよ?王国にもちょこちょこ戻るよ?」
「本当ですか?」
「うん。勿論。」
「でもなかなか会えなくなるのは変わりませんよね?」
「そうだね~。」
と、話していると兄達3人も加わってさっき話していたことを含めてまた雑談になり、結局午前中は雑談で終わってしまった。
そして午後。
またしても陛下の執務室に集まった私達。
《雪奈姉~。》
《お。鈴?》
《今から迎えに行くね。》
《はーい。》
「では、先に雪奈姉達を迎えに行ってきます。」
そして雪奈姉の家に着くと。
「鈴。鈴に頼んだ時からどれ程で来てくれた?」
「え?勿論翌日だよ?」
「やった!成功だ!」
「なにが?」
「鈴。お姉ちゃんが時間の経過を同じにしたんだよ。」
「は?」
「だから、前はここの二年が鈴達の世界の1日だったでしょ?その差を無くしたんだよ。」
「はあ!?そんなことできるの?」
「できちゃったみたいよ。」
「ふふん!鈴、柚蘭。ここは私が作った世界だよ?時間軸も弄れる筈でしょ?」
「「‥‥‥‥。」」
「雪奈姉は私達の想像の斜め上を行くよね‥‥‥。」
「そう?」
「「うん。」」
「と、とりあえず準備はできてるよ。鈴。」
「分かった。一先ずみんなに合流するから城に戻るよ。」
「「分かった。」」
そして私達は城へと戻った。