234話 去年と違う舞踏会
城の客室に戻った後。
今年も去年と来た面子はほぼ同じなので、部屋割りも同じ。姉様がいないだけなので、私、リジア、ルビアが同じ部屋。
模擬戦終わりの私は部屋に備え付けのお風呂に入ってから食堂へと向かって昼食後。
「では、陛下。私は一旦王国に帰ってきます。」
「おう。」
そしてまた雲隠で姿を消して王国の庭園に出た。城の敷地内で一番人目がないのが池の周辺だからだ。
すると、そこには先客がいた。
素晴らしいことに陛下だった。私は雲隠を解除して陛下に話し掛けた。
「陛下。」
「ん?マリンか。帝国には着いたのか?」
いきなり現れたのに動じなかった‥‥慣れって恐ろしい‥‥。
「はい。昨日到着しました。皇帝陛下と相談させて頂いて、明日になりました。なので明日、昼過ぎにお迎えに上がりますので姉様と執務室でお待ち下さい。」
「分かった。あの時、ここに居合わせた者達‥‥王妃や宰相、公爵もいいか?」
「はい。お三方も構いません。私の能力をご存知の方々にお集まり頂きますので。」
「分かった。では明日、執務室にて待っておく。」
「はい。ところで陛下は何故ここに?」
「ここに封印があったんだな‥‥と思ってな。今は普通の池でしかないだろ?」
「はい。害のあるものは消えてます。」
「そうか。‥‥ここに封印があった理由も全て、明日聞けるのだな?」
「はい。お話しますよ。」
「ああ。マリンはこの後、親善パーティーだろ?」
「‥‥‥‥‥はい。」
「はは!やっぱり嫌か?」
「はい。でも貴族令嬢である以上は避けることはできませんから。」
「そうだな。」
「では、陛下。私は帝国に戻りますね。」
「ああ。」
「では、失礼します。」
そして私は帝国の客室へと戻った。
そこにはリジアとルビアがいた。同室なので当然だが。
「お帰り。マリン。」
「おかえりなさい。マリン姉様。」
「うん。ただいま。リジア、ルビア。さて、親善パーティーまで何するかな‥‥。」
「そうね‥‥」
コンコン
「ん?」
「レグルスだ。どうぞ!」
ガチャ
「帰ってたんだな。マリン。」
「うん。今丁度帰ってきたところだよ。レグルスはどうしたの?」
「ちょっと暇だなと思って、久しぶりに図書室行こうかなと思ってな。3人もどうだ?」
「いいの?」
「ああ。父上から許可は得ている。」
「さすが。ならお言葉に甘えようかな。」
「なら、私も行く。」
「私もですわ。」
「ああ。」
そして四人で図書室に行き、例の謎の装置をレグルスが開けて中に入ると。
「す、すごいですわ‥‥!」
「本当ね‥‥。」
「ね。私も最初来た時は驚いたよ。」
「その後マリンは寝たけどな。」
「うっ。その節はご迷惑をお掛けしました‥‥。」
「何故敬語?‥‥むしろマリンの寝顔見れたから役得だと思ってるぞ?」
「む‥‥レグルス。女の子は寝顔見られたくないの。どんな顔して寝てるか分からないから。だから役得とか言わないの。分かった?」
「可愛かったのに‥‥‥。」
「リジア、ルビア。言うだけ無駄かな?これ。」
「無駄ね。」
「無駄ですわ。」
と話つつそれぞれ本を選んで窓際の椅子に座った。
「あ。マリン。これ、寝るの分かるわ。いい感じに暖かいもの。模擬戦後なら疲れてただろうし、余計ね。」
「そうですわね‥‥。」
「でしょ?」
ちなみに私は前回と同じ。最初の浄化魔法の使い手であるランスさんが記した物だ。私が初めて使った浄化魔法の聖光が記載されてる。
リエルさんへの愚痴も書いてある‥‥ちょっとだけ。
他にも色々書いてる。日記‥‥ではないな。
雪奈姉と柚蘭にもちょっと見せてあげたいかも。
すると私の様子に気付いたレグルスが。
「どうした?」
「これ、私の先代の浄化魔法の使い手さんが書いた物なんだけど、魔法書じゃなくて手記だったみたい。」
「え?そうなのか?」
「うん。色々書いてある。」
ガチャ
「あら。父様の仰った通り、本当にいたわ。」
「姉上?」
「4人共。そろそろ準備して。」
「‥‥‥フローラ様。もう親善パーティーという名の舞踏会の時間ですか‥‥?」
「ええ。」
「「‥‥‥。」」
「ふふっ。マリン、リジア。ちゃんと出席してね?」
「「はい‥‥‥。」」
そして私達は客室に戻り、親善パーティーの会場である大広間へと向かった。
パーティーも順調に進んでいき、私は去年と同じくレグルス達3人と、最後にリオトと踊ってこれで「あとは逃げてればいいや~」と思っていたのだが、今年はそれができなかった。
「マリン様。」
「はい?」
呼び止められてしまった‥‥‥この子の名前なんだっけ?一年に一回しか会わない上に一回自己紹介されただけだから記憶が怪しいけど‥‥
「昨年、帝国にいらした時に帝都を歩かれたとか。」
「はい。歩きましたね。」
「その時、マリン様だけ「ゆかた」というものをお召しになっていたと耳にしたのですが、事実でしょうか?」
どこで耳にした!?
「え‥‥ええ。事実です。」
『まあ!』『やっぱり!』
おっと‥‥?令嬢達ほぼ全員の声だよね‥‥?今の。
ってそんなに広まってるの!?
「マリン様。是非ともお見せ頂けないでしょうか?」
「え!?今、ここでですか‥‥?」
「はい。駄目でしょうか?」
「えっと‥‥‥あれは売り物ではなくて私の手作りなので、アリス様達にお見せする程の物では‥‥」
「マリン様が作られたのですか!?」
「はい‥‥。」
「でしたら尚更見たいですわ!」
「マリン。見せてやってくれないか?」
「陛下!?」
「着替える間、待ってるから。‥‥な?」
とアリス様に陛下が確認すると。
「はい!喜んでお待ちしますわ!」
マジか‥‥‥
いや。待てよ?いいこと思い付いた!
ニヤリとした顔をとある人達に向けた後。
「分かりました。では浴衣に着替えて参りますので、少々お待ち下さいね。」
と言ってさっきニヤリとした顔を向けた人達の方に振り返った。