233話 私が好きな空気感
翌日。
結果を言うと皇帝陛下との模擬戦、勿論あっさり私が勝った。そりゃそうだ。
で、陛下と共に観戦していたみんなのところに戻ると。
「父上。今年も負けましたね。」
「だな。でも御使いって聞いた今なら確かに強い訳だよなって思えるな。一生勝てないからいい目標になる。」
「私を目標にするんですか‥‥。」
「おう。世界最強の存在だぞ?これ以上ない目標だろ。」
「マリン。すまない。」
「いいよ。陛下は言っても無駄だろうし。」
「だな。まあ、私もマリンの強さは目標にしてるがな。」
「レグルス‥‥‥人のこと言えないじゃない‥‥。」
「でもそう考えると私達、御使い様から直々に魔法のご指導頂いたことになるのよね?」
「リリ姉様。私、御使い様って言われるの嫌です。私はマリンです。御使いは称号です。」
「ふふっ。そうね。マリンちゃん。」
「皆さんも。私は御使い様って言われたくないですし、この称号が世界に広がると面倒なことしか待ってないと思うので広めないでくださいね。その為もあってお話するんですから。」
「分かってるよ。マリン。私達は聞いた時からそのつもりだ。」
「ならいいけど‥‥。」
「で、父上。どうします?この後。」
「そうだな~。」
「マリン姉様。お願いがあるのですが‥‥。」
「ん?なに?ルビア。」
「マリン姉様が合流する時に使っていた魔法、リオトは先に体験していたのですよね?」
「うん。そうだよ。」
「私も体験してみたいです。」
「いいよ。じゃあしっかり捕まっててね。」
「はい!」
そしてルビアを横抱きにしてフライでゆっくり浮かび上がると、その様子をルビアはしっかり目を開けて見ていた。
度胸あるな~ルビア。
「すごいですわ!マリン姉様、移動もお願いしていいでしょうか?」
「ふふっ。いいよ。」
そして最初はゆっくりと、そして徐々に速度を上げて闘技場の上を旋回してみた。一人で飛んでる訳ではないので程々の速度だが。
「マリン姉様。止まって頂けますか?」
そう言われてピタッと止まると。
「マリン姉様。我が儘に付き合って頂いてありがとうございます。それと御使いの称号を持っていようと、私にとっては尊敬するマリン姉様であることに変わりありません。そのことは忘れないで下さいね。」
「!!!‥‥ルビア‥‥‥ふふっ。ありがとう。」
「はい!‥‥もう降りていいですよ。マリン姉様。」
「うん。」
そしてゆっくり降り立つと。
「すげぇなマリン。いつ思い付いたんだ?」
「ふふっ。ゲートと一緒の時です。」
『え!?』
「ゲートと一緒ってことは5歳の時か?」
「そうですよ。ヒスイ兄様。5歳の時、家庭教師の先生に連れて行ってもらった草原にゲートを繋いで、そのまま空飛べたら楽しそうだな~と思って試したらできました。」
『‥‥‥。』
「あ。ちなみに皆さん以外には見せてないですよ。」
「そうか‥‥それならいい‥‥。」
「なあ、マリン。他のやつを浮かせるとかできるのか?」
「私が抱えずにですか?」
「ああ。」
「う~ん。今まで私一人で飛んでたので考えたことなかったですね。」
「俺達がやり方を教わってできる可能性は?」
「難しいかもしれません。ゲートは空間魔法なので商業神様の加護をお持ちならお伝えできるかもしれませんが、フライはどちらかというと創造魔法かなと思いますので。できる可能性として考えるなら風で浮き上がらせるとかですかね?それもかなり魔力調節が必要かと。」
「そうか‥‥面白そうなんだがな~。さすがに14歳の女の子に背負ってもらう訳にはいかないし、諦めるか。」
「そうですね。父上。‥‥でもいつか風で挑戦してみようかな‥‥。」
「あまりお薦めしないよ。レグルス。失敗して落っこちたらどうするの?」
「あ。そうだな。‥‥なら駄目だな。」
「そうだよ。私が行ったことないところに行くならフライで行ってそこでゲート開いて皆を呼べばいいんだから。」
「おお。確かにそうだな。マリン、有能だな。」
「私の魔法が。です。」
「それはそうと、去年はシリウス達の実力見せてもらったからな。今年はヒスイ達のを見せてくれよ。」
「「「え?」」」
「兄様達3人ですか?」
「ああ。マリン、どうせ3人の相手もしてたんだろ?」
「どうせって‥‥まあ、確かに姉様含めて4対1でお相手してますが。」
「4対1って‥‥なら問題ないよな?3人共、マリンを相手に見せてくれるか?」
「マリン、いいか?」
「私はいいですよ。」
「なら行くか。」
ということで兄3人対私の対決。
‥‥‥勿論私が勝ちました。
と言っても兄様達3人だけでも本気で魔法を撃ったら闘技場を破壊してしまうので程々の威力での対決だったけど。
「お前らもか‥‥それぞれ最後に俺と戦った時より実力上がってるじゃねぇか‥‥マリン、本気で冒険者じゃなくて魔法の講師にならないか?」
「え?嫌です。世界は巡ります。」
「なんでだ?」
「最初は純粋に世界を自分の目で見たいだけでしたが、伯父様のことがあってから帝国だけじゃなくて、他の国でも魔素溜まりができてもおかしくないんだなと。魔物の大量発生が起きたら伯父様達の二の舞です。それを防げるのは浄化が使える私だけです。だから必ず世界を一周はします。」
「なるほどな。一度行けばゲートで移動できるしな。」
「そういうことです。それに、私に魔法の講師が務まるんですか?」
『は?』
全員が驚いた顔をしていた。
「え?」
「マリン。俺達という実績がありながら自信がないとでも‥‥?」
「そうよ~?マリンちゃんが何と言おうと私達が無詠唱で魔法を使える様になったのはマリンちゃんのお陰なのよ~?」
「ひ、ヒスイ兄様?リリ姉様?‥‥っ!」
王国側の皆の視線が!もしかして同じこと思ってるのか!?
「ほら、講師。向いてそうだろ?」
「‥‥‥‥‥考えておきます。」
そして城に戻った私達。
私達の話を聞いた後もこのままでいてくれるかな‥‥
皆、変わらないといいな‥‥。
と思いつつ、とりあえず王国の陛下のところに行きますか。