232話 楽しく感じる今
翌朝。
「では、セレス母様。行ってきますね。」
「うん。それはいいけど、どうやって追いかけるの?」
「今から初めてお見せする魔法で追いかけます。」
「え?」
「そのまま向かいますね。」
と言って私はフライを使ってある程度の高さまで浮いた。
さすがに声が届かないと思うので母様に手を振ってみた。
すると、最初は驚いた顔をしていたもののすぐに手を振り返してくれたのでそのまま父様達に合流すべく飛んだ。
そしてしばらく街道を見ながら飛んでいると、休憩している一団を発見した。その一団が父様達であるのが分かったので、ちょっとしたイタズラ心で上空から声を掛けてみることにした。
「父様~!」
「!」
ふふっ。キョロキョロしてる。
「皆さん!上です!」
‥‥‥あ。リオトには見せたんだった。
『え!?』
ふふっ。驚いてる。
そして私がみんなのところに降り立つと、リオト以外の全員が絶句していた。
「マリン姉様。皆さんで遊んだら駄目じゃないですか。」
「ふふっ。ちょっとした遊び心だよ。」
『え?』
「リオトは今のマリンが浮いていたのを見たことあるのか?」
「ふふっ。シリウス。去年、帝都で観光する時私とリオトを見失ったでしょ?」
「ああ。」
「あの時私達、空の上からシリウス達を見てたんだよ?だからレグルスが真空弾撃ってきた時は焦ったよ。」
「あれ、位置合ってたのか?」
「場所把握されてるのかと思ったぐらい正確に。」
「あれは確かに驚きましたね。」
と話していると。
「マリン。」
「はい。」
「ちゃんと終わらせてから来たんだよな?」
「はい。父様。陛下、姉様、セレス母様にも報告してからここに来ました。ちなみにネクロマンサーも捕らえたので今頃牢の中です。」
「そうか。それで親友は助けられたのか?」
「はい。」
「そうか。良かったな。そしてよくやったな、マリン。」
「はい。‥‥父様、聞かないのですか?」
「今聞くことじゃないし、後々ちゃんと話してくれるんだろ?」
「はい。皇帝陛下も含めてちゃんとお話する場を設けますので帝国に着いたら相談させて下さい。」
「分かった。ところでマリン。もしかして屋敷から飛んで来たのか?」
「はい。そうですよ。」
『‥‥‥。』
全員またしても絶句してます。
「昨晩屋敷でちゃんと休んでから来たので大丈夫ですよ?魔力量も修行後とんでもないことになってるので大丈夫です。なので父様達の休憩に合わせて出発しても問題ないですよ。」
「そうか‥‥。」
そして休憩を終えて再び帝国に向かって出発です。
私はまたリジアと共にシリウス達と同じ馬車です。
「なあ、マリン。」
「ん?なに?」
「楽しそうに見えるが、今はどっちかというと吹っ切れた感じか?」
「うん。肩の荷が降りた感じかな。もう二度と会えないと思ってた人達に会えたし、隠し事もしなくて済むし、これからは本当の自由だからね。楽しいよ。」
「なるほどな。聞きたいことは色々あるが、後でまとめて話してくれるんだろ?」
「うん。今度はちゃんと話すよ。隠してたことはまだあるからね。」
「え?まだあるの?」
「うん。御使いである以外にもね、称号に話し辛かったのがあるんだよ。」
「それも教えてくれるの?」
「うん。言わないと助けた親友といつ会ったの?ってなるんだよ。」
「そうなの?」
「うん。」
それから皆は関係ない雑談のみにしてくれた。
その後は何事もなく帝都に着いて、真っ直ぐ城に向かった。
そして謁見の間。
「お。今年もちゃんと全員来たな。いないのはクリスか。魔法師団に入ったんだったか?」
「そうですよ。陛下。」
「マリン、何か楽しそうだな。」
「はい。舞踏会は嫌ですけど、ここに来る前にいいことがありましたので。」
「お。なんだ?」
「ふふっ。それを話す前に話すべきことがあるので時間を頂きたいんです。後で相談させて下さい。」
「うん?分かった。長い話か?」
「はい。歴史の空白部分が分かりますよ。」
「なに!?」
「その前に王国で起こったことを後程お話しますね。」
「あ、ああ。」
そして夕食を食べ終わった後、封印が解けたことなど父様達と知る範囲が同じになる様に話した。
「で、今の話の詳しいこととか歴史のことをマリンの師匠が話してくれると。」
「はい。さほど時間は取らないのでいつでも大丈夫ですよ。」
「長い話なんだろ?」
「それは師匠の所に行ったらお伝えしますよ。」
「?‥‥よく分からんが、念のため親善パーティーの翌日でもいいか?」
「はい。では、明日王国の陛下にも伝えますね。」
「ああ。師匠には伝えなくていいのか?」
「えっと‥‥今すぐでも伝えられますが、意味がないので直前に言います。」
『?』
時間の流れが違うって言ってもすぐにピンとこない気がするんだよね‥‥。
「説明し辛い感じか?」
「はい。」
「ならいいさ。ならとりあえず明日、いつも通り模擬戦の相手してもらうぞ。マリン。」
「父上‥‥今年もですか。」
「ならレグルスやるか?」
「‥‥‥まだ遠慮します。」
「まだか。とりあえずいいよな?マリン。」
「ふふっ。いいですよ。お相手致します。」
ということで親善パーティーまではいつも通りの様だ。