231話 歴史について
雪奈姉と柚蘭との話は尽きない。
柚蘭が目覚めてから一週間が経っていた。
私はお昼を食べた後柚蘭と二人、リビングでゆっくりしていた。
「そういえば鈴。今は学園の生徒なんだよね?」
「うん。そうだよ。今は夏休みだけどね。」
「引き止めたのは私だけど、戻らなくていいの?」
「なんとなくさ、御使いって言ったから帰り辛いな‥‥と。」
「今まで黙ってたから?」
「うん。」
「う~ん。御使いなんて話辛くて当然だから、黙ってたのも怒られないと思うよ?」
「うん。私もそうだとは思うんだけど‥‥。」
「煮え切らないな~。何が気になるの?」
「柚蘭。」
「ん?私?」
「柚蘭が封印の中にいるって。正確には親友がいるって言ったから私の周りのみんな、全員疑問だらけだと思うんだよ。どこまで話していいものかなって思って。」
「あ~そういうことか‥‥。」
「歴史もね、雪奈姉と柚蘭のことは伝わってないからそれもまた驚かせる原因になるだろうしさ。」
「なんなら全部話ちゃえば?」
「う~ん。」
「私が話そうか?」
台所から雪奈姉も来た。
「え?いいの?」
「とりあえず鈴に近しい人達にだけ話したらいいかなと思うけど、鈴は今の国王もここに連れて来てって言ったら連れてこれる?」
「え?うん。王国の今の陛下も帝国の皇帝も私が使える魔法の属性とゲートのことを知ってるから連れてこれるよ。」
「なら両方連れてきてもらおうかな。今、本来は帝国に向かってる筈なんだよね?」
「うん。今の私の父さん達に先に行っててって言ったから進んでるとは思うけど、まだ領地に近いところにいるだろうね。」
「え?帝国ってそんなに遠かったっけ?」
「柚蘭、時間の流れが違うんだってば。ここの2年が向こうの1日なんだよ。」
「え?そうなの?お姉ちゃん。」
「うん。」
「私がハデスと戦ってる間も進んでくれてると考えたら後5、6日ぐらいかな。だから帝国に着く時はここでは最低でも10年ぐらいは経つことになるね。」
「う~ん。面倒だね。ここの時間操作できないもんかな?」
「「え?」」
「雪奈姉?」「お姉ちゃん?」
「なに?」
「柚蘭。雪奈姉今、とんでもないこと言ったよね?」
「うん。言った。自覚ないのがまた怖いわ‥‥。」
「そう?」
「「うん。」」
「でもとりあえず雪奈姉が話してくれるんだよね?」
「うん。なんなら帝国の皇帝も連れて来てよ。同じ歴史なんだし。」
「‥‥‥‥分かった。」
「今の間は?」
「さすが勇者様はとんでもないことをサラッと言うな~と。」
「ああ。なるほど。」
「でも雪奈姉が話してくれるのは助かる。御使いって言っても私は一貴族令嬢でしかないから。」
「鈴が貴族令嬢‥‥」
「む。中身は白石鈴音だけど、この体はちゃんとマリン・フォン・クローバーなんだよ?」
「おお。改めて聞くと不思議だ。」
「で、いつ戻る?」
「う~ん。ここに来て二週間しか経ってないから多分向こうはハデスと戦ったその日の夜ぐらいだよね?」
「多分ね。」
「じゃあこれ以上時間が開かない様にもう戻ろうかな。」
「そっか。」
「うん。王国の陛下のところに行って、お姉ちゃんに会ってから領地に行くかな。そこから飛んだ方が早いだろうし。」
「え?鈴、飛べるの?」
「え?うん。飛べるよ?二人は試さなかったの?」
「瞬間移動があるからいいやって思ってた。」
「でもそれも場所のイメージができないと移動できないでしょ?」
「うん。まあ、それで困らなかったからね。」
「そっか。じゃあ善は急げってことで早速行くね。」
「「うん。」」
そして私は外に出て四神達にも戻ることを伝える。
「みんな。私は戻るね。みんなはここにいて。また来るから。」
「「「「はい。」」」」
そして私は王国の庭園へと向かった。
さすがに今度は誰もいなかったので一先ず雲隠で姿を消して(一応王都にいない筈なので)陛下のところへと向かった。
執務室に一人でいてくれたので了承を得てから中に入って魔法を解除した。
「どうした?マリン。」
「陛下。不明となっていた歴史が分かる時です。」
「話してくれるのか?」
「確かに私も聞きましたが、歴史を語るならその人の方が適任です。私の師匠ですが、自ら話すと言ってくれました。」
「そうか。分かった。私はどうしたらいい?」
「今、私は本来帝国に向かっている途中ですよね?」
「ああ。」
「皇帝陛下も含めて話すそうなので帝国に着いてからです。恐らく親善パーティー前後になるかと。皇帝陛下に話してからになりますので、帝国に着いたら一旦ここにまた来ます。」
「ああ。分かった。頼む。」
「その時、姉様も呼んでおいてもらえますか?一応これから会いに行きますが。」
「分かった。クリスは恐らく宿舎に向かってるぐらいだと思うぞ。」
「分かりました。では、失礼しますね。」
「ああ。」
そして執務室を出る前に再び雲隠を掛けて城を出て、ちょうど一人で歩いて戻っていた姉様を発見したので近付き、
「(姉様。マリンです。姿消してるので見えないと思いますが。)」
「(え?マリン?)」
そして陛下にしたのと同じ話をした後。
「(では、私は一度領地の屋敷に戻ってから父様達に合流します。)」
「(うん。分かった。待ってるね。)」
「(はい。では。)」
そのままゲートで領地の屋敷の自分の部屋に着くと、雲隠を解除して下に降りると、セレス母様がいた。
「セレス母様。」
「マリン!?」
「先に陛下や姉様にも会ってきました。終わりましたよ。そして無事です。それを伝えるために父様達と合流前にここに戻ってきました。」
「そう‥‥良かった‥‥ありがとう。伝えに戻ってきてくれて。ラルク達はあの後、ちゃんと出発したわ。」
「そうですか。」
「今日はもう暗いから明日の朝、追いかけなさい。」
「はい。そうします。それとセレス母様。実は‥‥」
と、陛下や姉様に伝えたことを母様にも伝える。
「その時になったらまた私が迎えに来ますので待ってて下さいね。」
「分かったわ。」
あとは父様達だけだ。