226話 予兆、そして‥‥
さて、あの季節です。
今年も帝国に行くということで、夏休み前日の放課後。
今年も全員生徒会に入っているのでちゃんと業務を終えてから、城に到着したところだ。
そして城の中を歩いている時、違和感を感じたので聞いてみることにした。
《創造神様、聞こえますか?》
《ん?マリンか。そっちから話し掛けてくるのは初めてじゃな。どうした?》
《今、王国の城内にいます。で、この気配ってもしかしてと思いまして。》
《む?‥‥‥‥確かに2年前と同じ事になっとるの。》
《やっぱりですか。2年でまた出てきたということは時間の問題になってきてますか?》
《そうじゃろうな。じゃが、すぐとは限らん。まだ周りに話さんでもいいじゃろ。》
《はい。明日からまた帝国に向かいますが、中断してここに戻ってこないといけないかもしれませんね。》
《そうじゃな。でもあくまでも可能性じゃ。》
「マリン?」
《はい。そうですね。》
「マリン?」
《呼ばれとるよ。また今度話すとしよう。》
《はい。》
「ごめん。なに?」
「急に歩調が遅くなって難しい顔してたからどうしたのかなって。」
「え?あ、ごめん。なんでもないよ。」
「本当に?」
「うん。」
「ならいいけど‥‥。」
と、誤魔化しつついつもの一室に通された。
すると、今年も陛下達が待ち構えていた。
「失礼します。お待たせしました。陛下。」
「構わんよ。みんなもよく来てくれた。シリウスとリオトはおかえり。」
「「ただいま戻りました。父上。」」
「ヒスイ兄様、リリ姉様は今年も招待されてるんですか?」
「ああ。去年は大公になったんだから大公家当主として来いって言われてたんだ。で、今年は仕事として来いってさ。」
「まさかフレイ兄様も同じ理由ですか?」
「ああ。そうらしい。辺境伯家の後継ぎとして来いって。」
「では、今年は兄弟の中では姉様だけ一緒じゃないんですね。」
「そうだな。」
「私も話していいか?」
「あ。すみません、陛下。」
「いや。とは言ってもさほど話すこともないからな。今二人が話してた様に、今年招待された者達は去年と同じだ。で、今年も親善パーティーは舞踏会だそうだ。」
「え~‥‥‥。」
「ははは!すごい嫌そうだな。マリン。」
「嫌ですね。なんで自ら注目を集める様なことをしないといけないんでしょうか‥‥。」
「あら、やっぱり注目されるの嫌?」
「嫌ですね。精神的に疲れます。」
「そ、そう。」
「でも踊ってもらうぞ。シリウス達三人とは確実にな。」
「‥‥‥‥はい。」
「で。話は変わるが、マリン。城の庭師がな、また花達の元気がなくなってきていると言っていたが、心当たりあるか?」
さっき感じた気配のことだろうな。
「私、さっき城に着いたんですよ?分かりません。」
「だよな。」
あ~私の反応を見るためか‥‥。
「変なこと聞いたな。すまん。私の用事は以上だから帰っていいぞ。ラルクは置いていってくれ。」
「はい。では父様、先に帰ってますね。」
「ああ。」
「では陛下。失礼します。」
そしてマリン達が去った後、国王とラルクで。
「ラルク、どう思う?」
「マリンなら何かあれば気付いているでしょう。今のは隠してる方です。」
「そうか。よくわかるな。表情が一瞬も変わらなかったから分からなかったぞ。」
「マリンは普段はすごく分かりやすいですが、本当に隠したいことには気を張ってるので表情があまり変わらないんですよ。」
「あ。確かにそうだな。さっきすごい嫌そうな顔を素直に出してたからな。」
「ええ。なので、マリンは庭園のことに気付いていて知らないふりをしたものと思います。」
「理由は?」
「それはさすがに‥‥。」
「だよな。」
という会話をしていた。
そして翌日。
領地に向かう馬車の割り振りは去年と同じだった。
という訳で私とリジアはシリウス達と同じ馬車。
「なあ、マリン。聞いていいか?」
「ん?なに?ベネトさん。」
「昨日の陛下が言っていた庭園の異変。分からないって答えたのは嘘じゃないのか?」
「なんでそう思ったの?」
「城に着いてから一旦歩く速度落として考え込んでただろ?その時に気付いてたんじゃないのか?」
「うん。正解だよ。」
「あっさり答えてくれるんだな。ならなんで陛下には嘘ついた?」
「簡単だよ。確定してないことを言って不安にさせる意味はないでしょ?」
「そういうことか‥‥‥なら、やっぱり庭園で何か起きてるのか?」
「兄様達の披露宴前と同じ‥‥‥いや、それ以上になってる。」
『え!?』
「ほっといて大丈夫なのか?」
「じゃあ聞くけど、シリウス。何か体に異変とかあった?」
「いや。何も。」
「でしょ?だからまだ大丈夫だよ。」
「まあ、マリンが言うなら大丈夫か‥‥。」
それで一旦会話は途切れたが、今度はみんなしてサーチの練習に入っていた。
ごめん。多分大丈夫じゃない。
そう思いつつ馬車は進んでいった。
そして数日後、本当に何事もなく領地の屋敷に着いたあと、私は自室で。
《創造神様。》
《ん?なんじゃ?》
《私は柚蘭と戦わないといけなくなりますか?というか柚蘭の生死も定かではないですか?》
《生死は‥‥多分生きとる。封印じゃからな。じゃから生きていて操られてる可能性の方が高い。‥‥戦うことになるじゃろうな。》
《そうですか‥‥‥戦うならやっぱりあの荒野ですかね?》
《そうじゃな。》
《というか、その為にあそこを教えてくれたんですよね?》
《正解じゃ。》
《やっぱり‥‥。》
《戦いにくいじゃろうが‥‥》
《柚蘭を取り戻したいので頑張ってみますよ。》
《ああ。他に聞いておきたいことはあるかの?》
《あ。池の結界と封印は一緒に解けるんですよね?》
《うむ。》
《封印が解けた時、四神達が守ってる水晶はどうなるんですか?》
《すぐにはどうもならんよ。結界が解けて封印した水晶が出てきても核だけじゃ。四神達を召喚して水晶を一つにせんとならんのじゃ。》
《分かりました。ありがとうございます。》
《あとは大丈夫かの?》
《はい。恐らく。》
《恐らくか。まあ、儂らも様子は見ておくからの。》
《はい。》
《ではの。》
そして創造神様との念話を終えた私は眠りについた。
翌日から毎年恒例だが、今年は姉様抜きの兄弟対決などをして、しっかり休息もとって。さて、帝国に向かうかと玄関に向かって歩いていると。
《マリン様。》《主様。》《主。》《主君。》
《え?‥‥‥みんなが一斉に呼んだってことは‥‥。》
《はい。もう封じておくのは限界かと。》
《すまんが、向かってくれるか。マリン。》
《分かりました。》
さて、これからが一番の頑張り時かな。