20話 国王との口戦
そして、無情にもお披露目会に参加することが決定されたあと、話は違うものに変わる。
「それはそうと、マリン。騎士達やマリン達の報告ではコボルトの集団総数50体の内30体ぐらいをマリンとアクアで倒したと聞いたが、アクアの話では到着した時には既に20体もいなかったらしいが、マリンが魔法で倒したんだよな?」
「‥‥はい。恐らく半数ぐらいは。」
「その辺の話はさっき聞かせてくれたから改めては聞かないが、それだけの魔法が使えるのなら加護持ちだろう?更に治癒魔法にストレージが使えるなら生命神様と商業神様の加護もあるだろう。ステータスを見せてくれないか?」
「‥‥‥申し訳ありませんが、お断りさせて頂きます。」
「何故だ?」
「ステータスにお見せしたくない記載があるからです。例え陛下でも興味本意や軽い気持ちならやめて頂きたいです。私のようにどうしても見せたくないという者もいるのです。ですが、陛下に命令だと言われれば私は嫌でも見せないといけなくなります。」
「どうしてもか?」
「どうしてもです。私のステータスは家族にも見せてません。見せたくない理由を申し上げましたら見ない選択をしてくれました。」
「では命令だと言えば見せてくれるのか?」
「陛下。私が申し上げたことは届いてないのですか?‥‥‥まさか陛下は私のステータスによっては後々の戦力に出来るかもとお考えですか?」
「ほう。そこに気付くか。マリンの言葉は届いている。だが、素晴らしい才能を在野に放っておくほど愚王ではないつもりだ。今マリンが言ったように、マリンの才能を見たいんだ。それでも駄目か?」
「分かりました。では私も覚悟を示すことにします。」
「ほう。なんだ?」
「陛下がステータスを見せろと命令し、それを拒否すれば極刑だと仰るなら私はこの場から逃げて他国へ亡命します。」
『!』
この場にいる全員が驚いていた。
「陛下もご存知の通り私は治癒魔法が使えます。教国ならば受け入れてくれるでしょう。ですがこれは最終手段です。私は家族が大好きなので離れたくありません。この国も全てを見た訳ではないですが好きです。ですが、陛下にステータスを見せろと言われれば私はこの国を去らないといけなくなります。陛下を切っ掛けにこの国を嫌いになりたくありません。ですから陛下。私のステータスを見るのを諦めて下さい。お願いします。」
と頭を下げる。
「‥‥‥すまん。もう言わないから頭を上げてくれ。」
頭を上げると、
「まさかそこまでの覚悟を持っても見せたくないとは思わなくてな。気を悪くさせたな。すまない。」
「いえ。‥‥‥本当にもうステータスを見せてくれとは言わないですか?」
「ああ。言わない。恩人に嫌われたくないしな。」
「‥‥良かったです‥‥。やっと安心できました。」
「ちなみにラルク。本当に家族全員、マリンのステータスを見てないのか?」
「はい。見てません。アクア、兄弟でも見てないよな?」
「はい。俺も含め、兄弟全員見てないです。」
「そうか。家族にも見せられない表示とは何か気になるが‥‥諦めるしかないな。」
ごめんなさい。異常なステータスでなければ‥‥
「転生者」や「神の御使い」とかなければ見せてあげるのにな‥‥
「まあそれはそれとして、話は変わるが王族と公爵家の者の命の恩人達に何も報酬がないのはあり得ないんだ。2人共何かあるか?」
「何かと言われましても‥‥先程も申し上げた通り、私は当然の事をしただけですから。自分の手の届く距離に助けられる人がいて、自分に助けられる力があると思ったので行動しただけです。今回は王族や公爵家の方だっただけで、例え他の貴族の方だろうとそうじゃない人だろうと変わりません。なので私は特に報酬に興味はありません。どうしても何か報酬をということなら兄様に一括で渡すか、分けるなら私の分を父様に渡して下さい。」
「「え!?」」
「? 兄様、父様。私何か変なこと言いましたか?」
「いや。‥‥何で俺に渡せと?」
「? それはそうでしょう?例えば報酬がお金だとします。私が持っていても使い道は今のところありません。それなら父様に預かってもらって必要になった時に必要な分だけ返して貰う。その方がいいと思ったからですが、おかしいですか?」
「いや。おかしくないぞ。マリンは無欲で堅実なようだな。魔法や剣の腕といい、どう育てたらこんな凄い子に育つんだ?ラルク、教えてくれないか?」
「いえ。陛下。魔法も剣も上の兄弟達がやってるのを見て、自分もと自ら参加してきて今のように‥‥。私は特に何もしてませんよ。たまにマリンの方から相談に来るので話を聞いていたぐらいです。なので、申し訳ありませんが子育て論は特にありません。」
「そうか‥‥話を戻すか。アクアはどうだ?」
「そうですね‥‥俺は後からマリンを手伝ったに過ぎないので、俺も特にありません。」
「‥‥ラルク。本当にどうしたらこんな子達に育つんだ?」
あ、父様が何とも言えない顔になった。
「そんなこと言われても‥‥」って言いたそうな顔だ。
「はあ‥‥アクア、マリン。では報酬はラルクと相談の上で決める。それでいいか?」
「「はい。」」
「分かった。今日はもう遅くなるからな。ラルク、すまんがまた明日登城してきてくれるか?」
「はい。畏まりました。」
「アクアとマリンも、王都に着いてすぐ来てもらって疲れてるだろ?すまなかったな。」
「いえ。大丈夫です。座ってお話しただけですし。ね、兄様?」
「ええ。俺も大丈夫ですから。」
「ありがとう。」
「では、陛下。私達はお暇させて頂きます。」
「ああ。マリン、次に会うのはお披露目会だな。」
「陛下ぁ‥‥。」
今度は私が何とも言えない顔をする番だった。
「まあまあ。そんな顔するな。またな、マリン。」
「‥‥‥はい。では失礼します。」
「「失礼します。」」
やっと解放された‥‥あの陛下なかなかいい性格してるよ。ほんと。
思わず陛下に「意地悪だ。」って言いそうになったよ。
まあそのお陰で途中から全く緊張しなくなったけどね。
だって前世も合わせたら多分私の方が歳上だからねぇ‥‥‥やめた。自分で考えてて虚しくなってきた。
と考えるのをやめた時に
「ところで、マリン。報酬の件だが本当に良かったのか?」
「はい。実際特に欲しい物もありませんし、あの場でいきなり言われても思いつきません。兄様もじゃないですか?」
「うん。正直マリンと同じだ。あの場では何も浮かばなかった。」
「じゃあ今は?」
「「‥‥‥やっぱり思いつかないです。」」
「そうか。分かった。」
その後、既に待っていたうちの馬車で真っ直ぐ王都の屋敷に向かった。
ここでの私の部屋に案内してもらい、みんなで夕食を食べ、部屋で一息着いたところで安心してそのまま寝てしまっていた。
数日後、10歳のお披露目会の日。
この国の貴族の10歳の子供達が集まる。
私はこれが嫌なんだ。
貴族間で子供の顔を売り込むのが必要なことでも心情的には憂鬱でしかない。
愛想笑いしないといけないなんて拷問だ。
だからお披露目会出たくなかったのに。
とか考えながら渋々用意されたドレスに着替え、髪をシャーリーが整えてくれて、準備が終わっても私は心の中で抵抗していた。
が、無情にも父様から声が掛かった。
「ほら。マリン、いつまでそんな顔してるんだ。行くぞ。」
「‥‥‥はい。」
「大丈夫よ!マリンは可愛いから。それに喋りたくないなら喋らなくてもいいのよ。」
「本当ですか!?」
「クリス。マリンに変なこと吹き込むな。」
「「え~。」」
「え~じゃない。マリン、覚悟を決めるんだ。逃げ場はない。」
「うぅ‥‥分かりましたぁ‥‥。」
「じゃあ行くぞ。」
「行ってらっしゃい!」
「姉様ぁ~。」
最終的に父様に抱えられ、強制的に馬車に乗せられた私は父様と会場であるお城に向かった。
※2021,9,4 改稿しました。