223話 変わっていく日常
アクア兄様の卒業の時が来てしまった。
ちなみにアクア兄様の卒業後の進路はやっぱり領地に戻ってフレイ兄様を手伝うそうだ。
なので特に進路のことで悩むこととかもなかったので、ギリギリまで生徒会業務を手伝っていた。
本来はこの時期、5年生は生徒会業務の一切を在校生に引き継ぎ終えて全く手を出さない。
卒業式や卒業パーティーの会場である講堂の準備、卒業パーティーに参加する在校生達の人数を城に報告して正装の準備を要請して、それに合わせての城からの人員確保要請。それらを生徒会が全て行うからだ。
会場の準備は生徒会以外の在校生に任せるけど。
要は自分達の卒業式とかの準備を自分達でするようなものになるからだ。それに在校生が確実に引き継ぎできてるかの確認もあり、5年生は手を出さない。本来は。
ただアクア兄様は会長だったのに暇だからと手伝っていた。
私達のためにならないでしょ‥‥。
それは卒業式に参列する為に数日前に来た父様も言っていた。
そして卒業式当日。
私達は去年と同じく卒業式を終えた後、着替える為に更衣室に向かっているのだが‥‥。
「マリン‥‥なんであなたが泣いてるのよ?」
「だって兄様もいなくなるんだよ?兄弟全員と離ればなれって初めてだから‥‥いつも誰かは私の側にいたから‥‥‥アクア兄様が領地に戻ったら兄弟の誰も側にいなくなるんだって実感したら涙が出てきたんだよ‥‥。」
ちなみに姉様もずっと進路に迷っていたが、最終的には魔法師団に入ることにしたらしい。そしてうちを出て魔法師団の宿舎に入るそうで、アクア兄様が領地に父様と帰るのと同じ時期に姉様もうちを出る。
王都にはヒスイ兄様夫妻がいるが、大公家で別家なので意外と会わない。
「なるほどね。マリンの兄弟っていい感じに年が離れてるから誰か必ず側にいれたのね。」
「そうなんだよ~!」
「でもマリン。ちゃんとパーティーに出てアクア様を送り出すんでしょ?」
「うん。」
「ならいい加減涙止めないと。」
「うん‥‥。」
そして更衣室に着くと。
「待ってたわよ。マリン、リジア。」
「「‥‥‥。」」
固まる私達。何故か。意外な人達が待っていたから。
「ま、マリア姉様‥‥何故ここに?姉様とリリ姉様も‥‥。」
「ふふっ。卒業式が終わった後、マリンが泣いてるかもって思ったからよ。」
「正解です。クリス様。ここに来るまで泣いてました。マリン。」
「やっぱりね。」
「ふふっ。さすがクリスね。」
「ですね。」
さ、さすが姉様‥‥読まれてる。
「でもちゃんと涙止まってるみたいね。」
「ある意味姉様達のお陰です。驚いて涙が引っ込みました。」
「あら?マリンちゃんならサーチで気付いてると思ってたわ。」
「直前まで泣いてたのでそこに意識向けてなかったです。いらっしゃるとも思ってなかったので。」
「そう。さて、マリンちゃん、リジアちゃん。綺麗になってもらうわよ?」
「「え!?」」
「ふふっ。その為に私達はここに来たのよ?あ、私も今年は陛下のご厚意で参加させてもらえるのよ。」
「姉様も!?‥‥‥1年の時、姉様達を送り出せなかったからですかね?」
「そうかもしれないわね。」
「でも姉様とマリア姉様が参加するなんて聞いてないですよ?」
「だって言ってないもん。ちなみにマリアはヒスイ兄様の屋敷に泊まってたのよ?」
「マリンちゃんを驚かせてあげようと思ってね。成功したみたいね。」
「むぅ‥‥‥確かに驚きましたし、姉様とマリア姉様も一緒なのは嬉しいので、黙ってたのは納得いきませんが文句は言わないでおきます。」
「「‥‥。」」
そして宣言通り私とリジアは姉様達と城から派遣されてきたメイドさん達の手であっという間にパーティー仕様に仕上げられた。
「「「二人共可愛いわ~!」」」
「「‥‥‥。」」
何故こんなにこの姉達は私達を着飾りたいのだろうか?
多分リジアは「なんで私まで‥‥」と思っていることだろう。巻き添えだ。リジア。
「さ、二人共行くわよ~!」
と姉三人に連れて行かれる形になった私達。
あれ?三人共、特別枠の参加者の筈なのにな‥‥。
そして会場の講堂に戻ってくると、また去年と同じく静かになった。
またか‥‥。
内心会場内の反応を諦めてスルーすることにした時、ちょうど先に来ていたシリウス達を発見したので近づいていった。
「あれ?姉上は分かりますが、マリア姉様とクリス姉様もいらしてたんですか?」
「そうよ~。リオト。」
「ま、マリン姉様‥‥リジア様‥‥可愛らしいですわ‥‥!」
「そ、そう?ありがと。ルビア。」
「そういえばルビアは私達と一緒じゃなかったよね?どこで着替えてたの?」
ちなみにリジアもリオトとルビアに対しても呼び捨て敬語なしだ。リオト達本人からシリウス達はいいのに自分達が駄目な理由はない筈だとリジアに頼んだからだ。
「卒業式が終わった後すぐ、私達は別の所に連れて行かれましたわ‥‥。」
「え?そうなの?」
「はい‥‥ところで兄様達。マリン姉様達がこんなに可愛らしい姿を見せて下さってるのに一言も無しですか!?」
『え!?』
ルビア‥‥‥言いたくても私達だけで喋ってたじゃない。実際、何回か会話に割り込もうとして断念してたよ?お兄ちゃん達。
「えっと、ルビア。俺達が入り込む隙なく喋ってたのはお前達だぞ?」
あ。リゲルが正直に言った。
「あ。確かにそうでしたわ。すみません兄様達。」
気付いてなかったのね‥‥ルビア。
と、話しているとアクア兄様達卒業生が入ってきた。
閑話章自体は長引かせるつもりはないのですが、アクアの卒業はどうしても入れたかったんです。そして続きます。