222話 過ぎていく日常
庭師のお爺さんが消えた後。
そこには予想通り荒廃して変わり果てた庭園が残っていた。
そしてまず相談するためにも一旦扉を出て一応鍵を閉め、再び草と蔓だらけの道なき道を草達を切りながら戻った。
すると。
「「「「マリン!」」」」
「ふふっ。ただいま。見ての通り無傷だし、無事だよ。」
「良かった‥‥途中でマリンがいなくなって気づいたら私達全員、草達に追い出されてたのよ。」
「え?そうなの?道理で途中から皆の声聞こえなくなったわけだ‥‥。」
「それでマリン。光は見えたから、浄化したのか?」
「うん。ちょっと話してからね。本人の希望で浄化してきた。」
「え?話せたのですか?」
「はい。前に一度、別の所から知らずに入った時も普通に話してました。なので恐らくレイスですよね?」
「恐らくは。中はどうなってました?」
「庭師の方がいた時はすごく綺麗な庭園に見えてましたが、浄化して庭師さんが消えると荒廃して変わり果てた感じに‥‥。」
「そうでしたか‥‥。」
「先生。庭師さんに約束したことがあるんです。」
「なんでしょう?」
「私は生徒会にいるから、生徒会で責任を持って私が見せてもらった綺麗な状態を現実にすると。」
「「「「‥‥‥‥。」」」」
四人が呆れ混じりで微妙な顔で笑っていた。
「そうですか。では、頑張って下さい。手伝えることがあれば言って下さいね。」
「はい。で‥‥シリウス、リゲル、レグルス、リジア‥‥。」
「分かってる。勿論手伝うよ。」
「マリンから話を聞いていてそうなるだろうと予想はついてたしな。」
「だから勝手に決めたことも怒る気はないからな。」
「ふふっ。一緒に頑張りましょ?マリン。」
「!!‥‥ありがとう。」
それから私達は授業が終わったあと、生徒会室に行ってすぐに庭園でのことを話した。
そして私は提案してみた。
まず庭師一人に任せるのではなく生徒達の手で綺麗にして、尚且つ維持していける様に様々な決め事を作っていくこと。
次にさすがに全てを生徒の手でやるのは無理があるので知識を得る為にも庭師の方を新しく呼ぶこと。
花は苗を植えて育てる。既に咲いてる花だと、植え替えるだけになり、咲くまでの待ち遠しさが体験できないから。
そういった手配全てを生徒会でやって、実際に庭園を整備する時には他の生徒達にも呼び掛けて手伝ってもらうこと。なるべく魔法に頼らず手作業で。
そうして手間暇かけて作り上げた方が庭園は綺麗に見えると思うから。
そう言うと、皆この提案に乗ってくれた。
そしてあっという間に花壇の作り変えや花の苗の費用などの予算を算出し、学園長の許可も得て新しい庭師さんも学園長が推薦してくれた人が来てくれることになった。
という訳でまずすべきことは、草や蔓を退かして庭園までの道を作ること。これはさすがに魔法の方が早いので存分に使った。簡単に言うと、燃やした。
と言っても他の建物に延焼したら困るので私が土壁を作って防ぐことにした。そして私は世間では火魔法は使えないことになっているので、レグルス、リゲル、リジアに協力してもらって少しずつ道を作っていった。
そしてやっと庭園の整備に取り掛かれると他の生徒に呼び掛けてみたら‥‥
「‥‥‥ねぇリジア。私が見てるの幻?」
「現実よ。マリン。」
「えっと‥‥確かにこの学園は身分関係なく入れるとは言ってもやっぱり貴族の子供達が多かったりするじゃない?」
「そうね。」
「ってことは今目の前にいる人達の中には貴族の人もいるよね?」
「でしょうね。」
「なら、なんでこんなに集まるの?」
こんなにいらないだろってぐらい集まってる。
よくよく聞いてみると私が魔法に頼らず手作業でと言い出したことに驚いたと同時に「それなら」と手伝いを申し出てくれる人達が殺到した結果だそうだ。
1年~5年生まで勿論全員じゃないが、集まっている人数が多いので分けて手伝ってもらった。
そうして長年雨風に晒されていた花壇を作り替えたり、周囲で生え放題になっていた草達を刈ったりと庭師さんの指示の下、少しずつ整備していき月日は流れていった。
そして冬休み明け。
この頃から5年生は生徒会業務の引き継ぎを始める。
来年はどうやらベネトさんが会長になりそうだ。本人は嫌だったのか、わざと成績落とそうかなとか言い出したので私達全員で「他の人達に失礼だからやめろ」的なことを言ったら諦めて会長の座に着くことにしたらしい。
「俺の次はマリンだからな。覚悟しとけよ!」
「うん。既にそのつもりだからいいよ?」
『え!?』
「え?驚くことですか?首席が生徒会にいる場合の宿命でしょう?」
「あ。確かにマリンは首席を譲る気は無いって言ってたわね。」
「うん。だから兄様と同じ様に会長にもなるよ。ふふっ。その時は王国の王子と公爵家嫡男と皇太子が全員部下だね~楽しみだな~!」
「「「‥‥‥。」」」
「そこなのね‥‥。」
そんな話をしながら日々は過ぎていき、アクア兄様の卒業の時が来た。
この閑話章を長々とするつもりはないのですが、どう展開させるかをまた考え込んでました。すみません。