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221話 穏やかな最後

そして夏休みが明けてしばらく。

私は今、とあることを考えていた。

それは食堂で食べずに弁当作って他の場所で食べるべきか?ということだ。

何故なら。


私、シリウス、リゲル、レグルス、リジア、アイリス。この友人グループでお昼を食べていると、他の生徒が代わる代わる話し掛けてくる様になったからだ。

今までは私達王族、皇族、貴族のみのグループで話し掛け辛かった様で遠巻きに見られてるだけだったが、平民のアイリスが加わったことでその壁がなくなった様なのだ。

カイト先輩が一緒の時もあるのにそれより壁がなくなったっぽいのは何故だ?‥‥‥謎だ。


そして私はさっき「お昼を食べに来てるんだからそっとしといて」的なことを丁寧に言ったのでほっといてくれてるが、レグルス達はちゃんと応じている。

私達に落ち着いた昼食時間はないのだ。つまり私の安息の地が減っている。

‥‥‥前からだけど。


そして私達にアクア兄様やベネトさん。リオトやルビアが加わると更にだ。


う~ん‥‥弁当作るか?やっぱり。

でも食べる場所がな‥‥‥


と、窓側に座っていた私は背中を椅子の背もたれに預けて、窓から空を見上げて考えていた。


「マリン?」

「食べ終わってからずっとこのままですね。マリン姉様。」

「今度は何考えてるんだろうな?」

「何か考えてる前提ですの?兄様。」

「ああ。マリンがボーッとして俺達の会話に気付いてない時点で考え事してる。」

「だよな。」


いつの間にか生徒達の波が去った様でこんな会話をしていた。


「はぁ~‥‥気付いてるよ。シリウス、リゲル。」

「気付いてたのか。で、今度は何考えてたんだ?」

「ん?いや‥‥食堂でゆっくりお昼食べられないならお弁当でも作って他の場所で食べようかな~って考えてた。」

『え!?』

「なに?」

「外で食べるってことか?」

「それもいいな~とは思うんだけど、場所がね‥‥」

『ああ~。』

「こういう場合は大体庭園とか‥‥‥って、あ!!!」

「わっ!‥‥な、なに?マリン。」

「あ、ごめん。リジア。‥‥色々あって忘れてたって言ったら失礼だけど、庭園の主にずっと会ってなかったなって。」

「「庭園の主?」」

「うん。リオトとルビアは学園にも庭園があるのは知ってる?」

「はい。聞いたことはあります。」

「でも誰も入らないでしょ?」

「はい。」

「姉様曰く入らないんじゃなくて、入れないんだって。主に選ばれた人だけが入れるってことみたい。」

「「へ~!」」

「マリン姉様は入れましたの?」

「うん。1年の時にね。アイリス、冒険者の先輩が臨時講師で来てくれた日、覚えてる?」

「うん。マリンの家庭教師の先生が来てくれた時だよね。」

「うん。あの時行ったのが、その庭園。」

「へ~!」

「会いに行ってみるのか?」

「そうですね‥‥‥確か主は亡くなった方でしたよね?兄様。」

「ああ。」

「ならあの時見た庭園が綺麗だったのは幻だったんですかね?」

「多分な。」

「そうなると、勿体ないですよね‥‥現実に綺麗じゃないと。」

「そうだな。」

「主の話だけでも聞きに行ってみます。」

「そうか。」

「あ。兄様、庭園の入り口ってご存知ですか?」

「ん?入ったんだろ?」

「あの時は身体強化使って壁を超えたんですよ。」

「あ。なるほどな。入り口か‥‥そういえば知らないな。」

「先生なら知ってる方がいますかね?」

「いるんじゃないか?」

「じゃあ一番聞きやすいレイヤ先生に聞いてみます。」


そして午後の魔法科の授業。


「庭園の入り口?えっと‥‥‥多分分かります。」

「本当ですか!?」

「はい。今は通れるか分かりませんが。」

「え?」


ということで、折角だからと授業を中断してまで先生が案内してくれた。生徒全員引き連れて。


「確かこの先に扉があった筈ですよ。」

『え!?』

「え‥‥‥この先にですか‥‥?」


目の前には草や蔓が無造作に伸びていて、「ここに道はあるのか?」と疑問に思うレベルで先が見えない。


「とりあえず行ってみます。」


先生曰く庭園に入る前に門があるらしく、そこの扉の鍵を受け取った。

そして私は、目の前の草達を魔力刃で切りながらずんずん進んだ。


『すご‥‥。』


と、途中までは聞こえていたのだが、扉の前に着いて振り返ると誰もついて来てないどころか私が切った筈の草や蔓がまた生えて道を再び塞いでいた。


あ。主に選ばれた人だけが入れるってこういうことか。


とりあえず私が扉の鍵を開けて中に入ると、あの時のお爺さんがいて、花の水やりをしていた。


「お久しぶりです。」

「おや。いつぞやの。今日は扉から入って来られたんですね。」

「はい。前回は壁を乗り越えて来ましたからね、失礼だったなと思いまして。」

「そうでしたか‥‥‥扉から入って来たということは私がもう死んでいる人間だということはご存知ですね?」

「はい。卒業した姉と現生徒会長の兄に聞きました。」

「そうですか。ではそれを知っていてあなたは何をしにいらしたんですか?」

「庭師さんの話を聞くためです。」

「私の?」

「はい。成仏させてくれる人を待っているらしいと姉に聞きましたが、本当なのかどうかなどです。」

「ふふっ。確かにずっと一人で庭園を綺麗に彩ってましたが、見てくれる人がいないのは寂しいですからね。そろそろ成仏して楽になりたいとは思ってましたね。」

「そうですか‥‥‥幾つか伺ってもいいでしょうか?」

「どうぞ。」

「今私に見えているこの綺麗な景色は幻ですか?」

「ええ。」

「では、庭師さんがいなくなると‥‥」

「本来の荒廃した状態でしょうね。」

「そうなると悲しくなりますね‥‥‥今、すごく綺麗なのに。」

「それでも偽りの景色です。」

「そうですね‥‥‥庭師さん。」

「なんでしょう?」

「これからもここにいたいですか?」

「いいえ。もう十分です。成仏させてくれる人がなかなか表れなくて待ち遠しかったぐらいです。」

「そうでしたか。成仏して頂く為には浄化魔法を使うのですが、浄化魔法は確認されてるだけでも私含めて2人だけ。しかももう一人の方はもう亡くなられてますので、今は私だけなんですよ。」

「そんな貴重な魔法だったんですか‥‥!道理で‥‥。」

「そういうことです。それで、どうされますか?私はあと2年学園にいますが、もう浄化しますか?」

「ええ。是非、お願いしたい。」

「分かりました。では、最後に何か伝えたいこととかありますか?」

「いいえ。私が死ぬ前に家族に先立たれてますから‥‥いや、一つだけよろしいでしょうか?」

「はい。」

「この庭園、私がいなくなってもこんな風に綺麗にして頂けますか?そして、昔の様に生徒達の憩いの場になることを願っています。」

「!!‥‥‥はい。私も生徒会に在籍しておりますので兄や友人達と共に生徒会で責任を持って今見ている光景を現実にします。」

「ありがとうございます。もう思い残すことはありません。お願いします。」

「はい。【神聖なる輝き(セイクリッドシャイン)】」


そして庭園が光に包まれる中。


ーありがとうー


そう言って庭師のお爺さんは消えていった。

忘れてた訳ではなく、入れるタイミングが‥‥‥。

「裏」でも良かったのですが、何回か話題に出していたのと、ずっと気になっていたのもあってこちらに入れました。

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