19話 拒否の理由2
そして渋々騎士団長についていくと、とある部屋の前で止まり、ノックした後。
「近衛騎士団団長のティアです。」
すると中から、「入れ。」と許可が出たので、2人で中に入ると。
「失礼致します。マリン様をお連れしました。」
「ああ。そなたがマリン嬢かな?」
室内の人達を見ると、リリ様、マリア様と他に男性が3人と女性が1人と父様と兄様もいた。
王子達もいる。みんなで1つのテーブルを囲む様にソファーに座っていた。
その中のまだ30代ぐらいの銀髪青目の男性が聞いてきたので、
「はい。このような旅装のままで失礼致します。お初にお目にかかります。私はここにおります、ラルク・フォン・クローバー・ウェスティアが次女マリン・フォン・クローバーと申します。」
多分私の予想だとこの方が国王陛下じゃないかな。
と思ったので、摘まむスカートはないがカーテシーで挨拶した。
「そなたがマリン嬢か。私はこの国の国王のアトラス・ユラ・セレスティンだ。」
正解だった。
じゃあ陛下の隣の女性が王妃様だろうな。
そして陛下の隣の金髪赤目の同じく30代ぐらいの女性。
「私は王妃のルミナスと申しますわ。」
こっちも正解だった。
そして奥のソファーに座っていた王妃様と同じ金髪赤目の男性。
「私はマリア、リゲルの父で、エドワード・フォン・リコリス公爵です。」
そして最後に手前のソファーに座っていた暗い紫の髪と目をした男性。
「最後は私ですね。この国の宰相を仰せつかっております、サルビア・フォン・クロノスと申します。マリン嬢、どうぞ。お座り下さい。」
「は、はい。では失礼します。」
と言って陛下の正面に座っていた父様達の方に行くと、父様と兄様が間を開けてくれたので、2人の間に座った。
私が座ったのを確認すると、陛下が口を開いた。
「話は粗方リリ達や騎士達、ラルク達からも聞いたが、まずはこれから言うべきだな。我が子達を救ってくれたこと感謝する。」
「私もですね。マリア達を助けてくれてありがとう。」
と国王夫妻と公爵が頭を下げて言った。
「そんな!陛下、王妃様、公爵様も頭を上げて下さい!私は当たり前のことをしただけですから!」
そういうと頭を上げてくれて、
「いや。これは国王としてではなく、1人の父親として言わせてくれ。ありがとう。」
「は、はい。分かりました‥‥で、いいのでしょうか?父様。」
と聞くと、こくんと父様が頷いた。
そして改めて、といった感じで陛下が。
「でだ。マリン嬢からも改めて一通り話を聞いてもいいか?」
「はい。お話の前に陛下。公爵様方も。父様も呼び捨てにされてるみたいですし、私のこともその方が呼びやすいなら呼び捨てでお呼び下さい。」
「そうか?では、そうさせてもらおう。」
「はい。では改めてお話ですよね?どこからお話したらよろしいでしょうか?」
「マリンがリリ達の危険に気付いた切っ掛けから全部だ。」
え、長っ!まあしょうがないか‥‥。
それから私がサーチで気付いたことから再び馬車が出発するまでを話した。
「なるほど。みんなから聞いたのと一致するな。ありがとう。それでな。マリンに聞きたいことがあるのだがいいか?」
「はい。何でしょうか?」
「シリウスとリゲル。両方とも婚約者になるのを拒否したと聞いたのだが本当か?」
「‥‥‥はい。本当です。」
「マリンが言った2つは聞いたが、他にも理由があるようだが聞いてもいいか?」
「‥‥‥言わないと駄目でしょうか?」
「言いたくない理由があるのか?」
「それは‥‥。お2人のお父様達の前で言うと不敬罪になったりしないかな‥‥と思いまして。」
「なんだ。そんなことか。何を言っても不敬罪にはしないと約束する。公爵もいいか?」
「ええ。私も何を言っても不敬罪にしないとお約束します。」
「では、話してもらえるか?」
「えっと‥‥。」
チラッと父様を見ると、
「俺も聞いておきたい。陛下も公爵もこう仰って下さってるんだ。教えてくれるか?」
「分かりました‥‥ではまず確認させて下さい。私がお2人の婚約者になるのを拒否する理由として先に上げた2つのことです。陛下がお聞きになったのはお2人に名乗って頂けてないので誰かも分からない人の婚約者にはなれないというのと、私の体が本能的に拒否したからだと言ったというので合ってますでしょうか?」
「ああ。そう聞いている。」
「ではこの際ですから申し上げますと、実はまだ名乗って頂けてないのです。皆さんを見てなんとなく予想はできますが、今だにどちらが王子殿下かが分からないのですが‥‥。」
「「何!?まだ名乗ってなかったのか!?」」
と陛下と公爵様が息子達を睨みながら言った。
おお‥‥。ハモった‥‥。
「はい。私が姿を見せないでと言ってしまったので名乗り損ねたのもあるかと思いますが‥‥。」
「いや。普通は初対面の時に自己紹介するものだ。間違ってるのは我が愚息の方だ。」
「うちの愚息もですな。」
「今から名乗らせてもいいか?」
「えっと‥‥はい。頑張って聞きます。」
「すまんな。‥‥シリウス。自己紹介しなさい。」
「‥‥はい。父上。‥‥では、改めて。名乗るのが遅くなり、申し訳なかった。俺はこの国の第一王子でシリウス・ユラ・セレスティンです。」
と銀髪青目の私と同い年ぐらいの男の子が自己紹介してくれた。
こっちが王子だったか。王族は代々青目かな?
ということはもう1人の金髪赤目が公爵家の子か。
「次は俺ですね。リコリス公爵家長男のリゲル・フォン・リコリスと申します。」
合ってた。あれ?もしかして‥‥。
「お2人共。自己紹介して頂き、ありがとうございます。ところで、公爵様。ふと気になったことがあるのですが、伺ってもよろしいでしょうか?」
「ええ。何でしょうか?」
「間違ってましたら申し訳ないのですが、もしかして王妃様と公爵様はご兄妹だったりしますか?」
「ええ。王妃は私の実の妹ですよ。ですから王子達と、我が子達はいとこに当たりますね。ああ。それもあって王子とリゲルがどっちがどっちというのが分からなかったのですね?」
「はい。この部屋に入ってますますどっちか分からなくなりました。」
「ああ。なるほどな。確かにいとこだから似てるしな。」
「はい。‥‥‥あ。すみません話をずらしてしまいましたね。えっと、私がお2人を拒否した理由ですね。今、自己紹介して頂いたので1つ目は無くなりました。他は私が個人的に嫌だと感じたところが混ざりますが、それでもいいのでしょうか?」
「ああ。気にしなくていい。言ってくれ。」
「分かりました。では、まずこれは兄妹がいらっしゃる公爵様に例として伺いたいのですが、よろしいでしょうか?」
「ええ。構いませんよ。」
「ありがとうございます。では、公爵様。例えばですが、公爵様が王妃様と馬車に乗っていたとします。もちろん男性である公爵様が先に降りますよね?」
「そうですね。」
「では、公爵様が馬車を降りたあと、どの様な行動をとりますか?」
「え?それは勿論妹でもある王妃が馬車から降りる手助けをしますが‥‥‥ってまさか!?」
「はい。殿下もリゲル様もリリ様とマリア様に手を貸す様子は一切ありませんでした。」
「「はぁ‥‥。」」
陛下も公爵様も呆れてため息しか出ないって感じだな。
しかも本人に確認しないということは予想の範囲内なのかな?まあそれはいいや。続けないとね。
「それから馬車から出て来てから守ってくれていた騎士の方達への配慮が一切ありませんでした。殉職された方にもです。そして、名乗る事もなくいきなり私に向かって「気に入った。婚約者になれ。」です。礼儀のれの字もない。空気を読むこともできない。私は自分の目と耳を疑いました。その時、目に写ったものが幻で、且つ聞き間違いであって欲しかったです。更に私は個人的に無駄に命令系で話す方が苦手なのです。陛下のように本当に立場がある方とは違う意味の‥‥えっと‥‥説明が難しいです。」
「つまりなんとなくイラッとくる感じだな?」
「そうです!陛下!‥‥‥あ、失礼しました‥‥。」
「いや。いいさ。続けてくれ。」
「はい‥‥。あとは‥‥これが最後で、一番説明し辛いことです。恐らくこれが私の悪寒の原因の発端じゃないかと思われることですね。」
「何なんだ?マリン。」
「父様。殿下とリゲル様を見てなんとなく違和感のようなものを感じませんか?」
「え?違和感‥‥‥?」
首を傾げてる‥‥どっち!?父様!
「兄様はいかがですか?」
「う~ん‥‥違和感‥‥?」
こっちも傾げちゃった。
「もしかしたら、私だけかもしれませんね。なので私の個人的な主観として捉えて下さい。殿下もリゲル様もお顔立ちは整っていて綺麗だと私も思いますが、なんとなく髪形や服装が顔に合ってないような気がするんです。なんか釈然としないものがあるというか。それが私には気持ち悪く映って、やがて悪寒に変わり拒否反応しだしたのではないかと‥‥。」
「「ああ、なるほど!」」
「えっ、父様、兄様。どうされました?」
「いや。今マリンが聞いてきた違和感だが、確かに感じてたんだ。だが、何か分からなかったから答えられなかったんだよ。だがマリンの意見を聞いたのでそれだ!と思ってな。」
「俺も。」
「では2人も違和感を感じるということですか?」
「「ああ。」」
「だ、そうです。以上が私が殿下とリゲル様の婚約拒否の理由です。‥‥改めて陛下、王妃様、公爵様。聞いていていい気分はしなかったと思います。申し訳ありませんでした。」
ぺこりと頭を下げて謝罪した。
誰でも自分の子供を悪く言われたらいい気はしないからね。
と思ったのだが。
「とりあえず頭を上げてくれ。」
陛下がそう言ってくれたので、頭を上げると
「それに謝る必要もない。むしろよく言ってくれた!とこちらが感謝したいぐらいだ。なあ?ルミナスに公爵?」
「ええ。私達の言うことを信じないし、一切聞かないから困ってたのよ。」
「確かに。うちも同じですよ。一度世間でどう見られてるか聞かせたいと思っていたんですが、王族と公爵家に面と向かって正直に言ってくれる勇者はなかなかいなかったんです。マリンにはむしろ正直に言ってくれてありがとうと私も言いたいところです。」
「‥‥‥え?そうなのですか?」
「ああ。で、実はな。シリウス達が私からマリンにどちらか選ぶ様に進言してほしいと言われていたんだが、それは言わないことにしたから安心してくれ。」
「「何故ですか!?」」
「何故ですかだと?今のマリンの話を聞いてなかったのか?お前達どちらを選んでもマリンの負担にしかならないのがわからんのか?」
「「‥‥‥」」
おお。さすが陛下だ。
でも今までこの陛下に逆らってたんだよね?この2人。
ある意味すげぇ。
「それで、マリン。確か今10歳で今度のお披露目会にも参加するんじゃなかったか?」
「はい。そうです。‥‥‥まさか‥‥。」
「ああ。シリウスとリゲルもマリンと同い年だからお披露目会に参加する」
「‥‥父様!やっぱり私参加したく‥‥」
「駄目だ。」
食いぎみで駄目って言われた‥‥。
「何故ですか‥‥私には今、父様が鬼に見えてきました‥‥。」
「大丈夫だ。シリウスもリゲルも私と公爵が抑える。近付けさせんよ。」
「‥‥‥本当ですか?」
「ああ。私達も子供達の命の恩人の嫌がることはしたくないからな。」
「そういうことです。安心して参加してください。」
「‥‥‥分かりました。」
‥‥‥何で疲れるって分かってるのに行かないといけないんだろうか。
※2021,9,4 改稿しました。