212話 帝都を歩いて
さて、親善パーティーという名の舞踏会。
勿論私は宣言通り卒業パーティーと同じことをしましたとも。
違うのは4人目が何故かリオトだったこと。
私がレグルス→シリウス→リゲルの順に踊った後、リオトから誘われた。リオトの1人目はルビアだった。私がリゲルと踊ってる近くで一緒に踊っていた。
つまり私はリオトの2人目の相手であり、王子2人の相手をしたことになる。
そりゃあもう注目を集めてしまいましたよ。
とっととここから去りたい程に。でも、周りは許してくれない。
なので、リオトと踊った後はまた食べ物に逃げた。
すると、今年初めて帝国に来たリオト、ルビア、リジアに注目が移ったので私は「ラッキー」とばかりに同じく踊り終わって戻ってきた姉3人と話していた。
そうしている間に今年もパーティーが終わった。
ちなみに母様は「私は招待されてないから」と参加しなかった。
‥‥‥逃げましたね。
そして、部屋に戻った途端リジアに。
「マリン~?よくも途中からほったからしてくれたわね~?」
「え?リオトとルビアが一緒だから大丈夫だったでしょ?」
「そういう問題じゃないわ!」
「じゃあどういう問題?」
「私を帝国まで引っ張って来たのはマリンでしょ?責任持って側にいてよ。」
「あ。ごめん。」
「はぁ‥‥‥もういいわ。」
「でさ、リジア。明日から予定ないでしょ?」
「え?‥‥‥ないわね。」
「だからさ、一緒に帝都観光しない?リリ姉様達も誘って女性陣で。」
「いいわね!去年できなかったし。私もいいのよね?」
「ここで話してる時点で姉様とルビアは入ってる前提ですよ。」
「私もよろしいのですか?」
「勿論。一緒に行かない?ルビア。」
「行きたいですわ!」
「じゃあ私も行く。」
「決まりだね。あとはリリ姉様とマリア姉様。母様も誘ったら来てくれますかね?」
「喜んで来てくれると思うわよ?」
「では、明日の朝食の時にでも誘ってみましょうか。」
「ふふっ。そうね。」
「あ。どうせなら男性陣は置いて行きましょうか。女性陣しかいないところに入ってくる勇者がいるとは思えませんけど。」
「そうね。たまには女性だけで歩くのも楽しいかもね。」
この時の私は完全に忘れていた。自分が帝国で何と呼ばれる様になっていたかを。
そして、翌朝。
朝食の席でリリ姉様、マリア姉様、母様を誘ってみると、むしろ喜んでいた。
ちなみに勇者はいなかった。私が「女性陣で。」と強調したからだろう。
陛下もあっさり許可してくれた。私がいれば問題ないだろ?と言って。
そして城門から出ると。
『天使様だ!』
『‥‥‥。』
忘れてた‥‥‥天使呼び、ここもだったな‥‥‥。
「マリン姉様、有名人ですのね。」
「そうね‥‥‥。」
とりあえずこのままだと進めない‥‥‥って。
「そういえば何故誰も馬車に乗る提案をしないのですか?」
「え?いいかな~って思って。」
「姉様‥‥‥何故私の周りは危険意識が薄いんでしょうね?」
「決まってるじゃない。マリンがいてくれるからよ。」
「そうですか‥‥。」
「マリン。とりあえず歩かない?」
「そうですね。母様。」
そして私が目の前にできた人だかりに「観光したいから通してください。」と正直に言うと、あっさり退いてくれた。
そして女性しかいないのをいいことに色々な店を回った。
私はその途中で例の反物屋さんにいき、浴衣を着る人達が集まってるのもあり、その場で下駄のサイズを見て買った。そして髪飾りも買って、「これで浴衣スタイルが完成する」と満足の観光だった。
そして城へと帰りながら。
「母様。17年も経ってますが、かつてレウス伯父様が歩いただろう国を歩いてみて、いかがでしたか?」
「‥‥‥そうねぇ‥‥‥何か思うことがあるかなって私も思ったけど‥‥‥ふふっ。娘達と歩いてると思ったら楽しさが勝ったわ。」
「そうですか。」
「でも‥‥‥17年かぁ‥‥‥もうそんなに経ってたのね‥‥‥街並みは今と違ってたのかな?」
「恐らくは。」
「そうよね‥‥‥。」
そして少しの沈黙の後。
「マリン。」
「はい?」
「ありがとね。」
「なにがですか?」
「色々と。」
「ふふっ。ではどういたしましてと言っておきます。」
「うん。」
それからは誰も喋ることはなかったが、既に城の近くまで着いていたので、気にならなかった。