208話 竜に愛された街?
さて、勿論途中で馬車を止めて休憩したりはする。
だが、女性陣は集まって話すことが楽しくなって当初の目的が果たされた後も続けてそのままの割り振りで分かれて馬車に乗っていた。
しばらく進んでいると二年前黒竜に襲われかけた街の近くまできた。
ん?これ‥‥‥どういうことだ?
‥‥‥‥まさか‥‥‥
「マリン、どうしたの?」
「ちょっと待ってください。姉様。」
「うん?」
《空、聞こえる?》
《はい。主様。》
《こっちに向かってるっぽい竜は空の眷属?》
《‥‥‥ええ。その様です。ですが、おかしいですね‥‥。》
《どういうこと?》
《この気配。恐らく古竜です。》
《やっぱり?》
《はい。なので冷静さは持ち合わせている筈なのですが‥‥。》
《話せる?》
《ええ。正気なら。》
《分かった。やってみる。》
《申し訳ありません。駄目そうなら排除して構いませんので。》
《うん。なるべく頑張るね。》
《はい。》
さて、それじゃ。
「すみません。馬車止めてもらえますか?」
「畏まりました。」
そして私達が乗った馬車が止まると、後ろの二台も止まった。
つまり、もう私が乗る馬車が先頭なのだ。
そして後ろの二台に乗っていた人達も全員集まった。
「マリン、何がいる?」
「あの街は竜に好かれてるんですかね?」
『え!?』
「手前に魔物の集団がいるのは多分竜から逃げてるんだとは思いますが、街に向かってるみたいなのでこのままだと迷惑ですね。」
「迷惑どころじゃないだろう。」
「そうですね。なのでちょっと行ってきます。」
『は!?』
「え?何ですか?」
「いや、一人で行くのか?」
「はい。」
『はいって‥‥‥。』
「時間がないので行きますよ?」
「あ、ああ。無茶するなよ。」
「はい。勿論です。あ。ここも一応近いので。【シールド】私が戻ってくるまで動かないで下さいね。」
『分かった‥‥。』
「では。」
私は身体強化と風を纏って一気に駆け出した。
う~ん。やっぱり空飛んだ方が速いよね‥‥もう見せようかな‥‥‥あ。そうだ。念のために雪奈姉にもらった剣出しとこ。
ストレージから細剣を取り出し、一旦腰から下げる為に速度を落とした。
そして装備が完了した瞬間再び速度を上げ、一気に魔物の集団の前に出た。と言っても姿は遥か数メートル先だが。
「うわっ!やっぱりめっちゃいる‥‥‥えっととりあえず足止めでいいか。【土壁】」
私と魔物の集団の間に高さ5メートル、厚さ3メートルの壁をとりあえず横10メートルぐらいで作った。
「さて、竜は‥‥‥‥あれかな?」
遥か彼方の空から、何か飛んできたぐらいの点が見えた。
そして徐々にその姿が見えてきた。
「あ。このままだと魔物が横から逃げるな‥‥‥‥囲むか。」
さすがに身体強化していても5メートルの高さの上には届かない。フライも父様達が見てるので使えない。かといって穴を開けたら意味がない。
なのでゲートで上に上がった。
そして見下ろすと、魔物の集団が壁に激突するところだった。
「あ。壊れるかな。厚み増やすか。」
厚さを3メートルから5メートルに変えてから周囲を見回し、土壁の切れ目にゲートで移動して同じ大きさの壁を作った。同じように反対側にも行って壁を作り、最後に集団の最後部のところに壁を作った。
囲い込み成功だ。
私は再びゲートで土壁の上に立って周囲を確認した。
囲い込みから逃れたやつがいるなら討伐するためだったが、逃れたやつはいなかった。中で頑張って壁に体当たりを繰り返している。
というところで件の竜が近くまできた。
その竜は真っ白い綺麗な竜だった。
「さて、君。話せる?」
『‥‥‥そ、その気配は!?青龍様の!?あ、あなたは一体‥‥。』
「とりあえず何でこっち来たのか教えて。多分下にいるの、あなたに怯えて暴走したんでしょ?」
『恐らくは‥‥‥申し訳ありません。先程までは痛みで我を忘れておりました。』
「え?痛み?怪我したの?」
『ええ。人間に毒がついた矢を放たれ、運悪く当たってしまいまして‥‥。』
「どこ?治してあげるから診せて。っていうか降りるよ。」
『は、はい。』
そして白竜はゆっくり地面に降り立ち、私もゲートで白竜の側に移動した。
「あ~この左足のだね?」
『はい。』
「ちょっと待ってて。【状態異常回復】【ハイヒール】」
毒で色が変わっていた左足の色が戻って矢傷も塞がった。
「ここにたどり着くまで痛かったでしょ?」
『はい。痛みで我を忘れておりましたが、あなた様から感じた気配で‥‥。』
「青龍の気配はこのペンダントからするんでしょ?」
『は、はい。』
「なら、私のこと分かるんじゃない?」
『御使い様でいらっしゃいますか‥‥‥?』
「うん。」
『申し訳ございません!ご迷惑をおかけしました!』
「ふふっ。いいよ。自分で帰れそう?」
『は、はい。お陰様で問題ありません。』
「そっか。なら帰っていいよ。次は気をつけなよ。」
『はい。ありがとうございました。』
そう言って白竜は去っていった。
‥‥はいいが、さて魔物の集団どうしよう‥‥‥。