207話 気になってたこと
毎年恒例の模擬戦をしてから屋敷に戻った私はこの数ヶ月、気になってしょうがなかったことを解決しようと行動を開始した。
まず、私が感じていることは他の人にはどうなのか?
という訳で、リリ姉様、マリア姉様、母様、リジアに私の部屋に来てもらった。話の内容・呼んだ理由は姉様だ。
「リリ姉様、母様。この数ヶ月、姉様変ですよね?」
「あ、やっぱりマリンちゃんも思った?」
「はい。」
「模擬戦の間はいつも通りだったよね?リジア。」
「うん。でも、ここに着いてからはふとした瞬間あれ?とは私も思ってた。」
「私もみんなと帰ってきた時はいつも通りなのに、食べてる時もたまに何か考え込んでた様に見えた。」
「母様。姉様、私達が学園に行ってる間どうしてます?」
「そうね~。部屋か書庫に引きこもってたり魔法を軽く練習したりしてるわね。」
「やっぱり将来のことで悩んでるんですかね?」
「多分ね。」
今の姉様は日本でいうところのニートだ。
有能だから魔法師団に入る選択肢もあったが、入らなかった。かといって他にやりたいことがないと。
「誰にも相談してないんですかね?」
「ここにいる人達が知らないなら誰にも相談してないんじゃないかしら?私も聞いてないし。」
「一番側にいる母様にも言ってないならそうでしょうね‥‥‥‥問いただしてみます?」
「「「「え?」」」」
「悩んでるの見せないようにしてるっぽいですが、無駄だと。私達に隠し通せるとでも?って言って差し上げようかと。」
「「「「なるほど。」」」」
「でも、今から突撃して話してくれるかしら?」
「屋敷では逃げられる可能性がありますので、帝国に向けて出発する時に私達と姉様で馬車を一台占領しましょう。」
「すごいこと考えるわね‥‥‥マリンちゃん。」
「ということで母様。どうしますか?今年は一緒に行きませんか?」
「え?」
「今まではレウス伯父様の件で帝国に行かなかったんじゃないんですか?あ、それとも皇帝陛下ですか?」
「ふふっ。両方かしら。そうね‥‥行ってもいいかもね‥‥。」
「伯父様を含めた冒険者の慰霊碑に行きませんか?」
「そうね‥‥‥帝国に行ったことなかったし、行ってみようかな。」
「え?行ったことなかったんですか?」
「うん。兄さんが、大規模討伐に行くってなった時はまだ私は結婚前で王都にいたからね。結婚した後もマリンが言った理由で行き辛くて行ってなかったのよ。」
「そうですか‥‥‥で、行くんですね?」
「ふふっ。うん。行くわ。」
「ならここにいる人達で姉様を確保しましょう!」
「でもマリン。シリウス達はどうするのよ?」
「さすがに喧嘩しないよ。「弟と妹」の前で。」
「「「「なるほど。」」」」
「私がいた方が言い合いになるならむしろ一緒じゃない方が良かったなって思って。それに言い合いしだしたらシリウスとリゲルの弟と妹から取り戻しつつあった評価が下がるだけだからね。」
「ふふっ。確かにそうね。じゃあ決まりね。」
「うん。」
「「「「「ふふふ」」」」」
そしてこの話し合いの後は、毎年の様に変わらず模擬戦したりした。勿論休息も十分に取って。
帝国に向かう日の朝。
「シリウス達、私とリジアの代わりにリオトとルビアが乗るから。」
「「「「え?」」」」
「それと、ヒスイ兄様、フレイ兄様。リリ姉様とマリア姉様をお借りしますね。」
「「え?」」
「さあ、姉様。私達と一緒に乗りましょ?」
「え?それは嬉しいけど、いいのかな?」
『マリン!?』
聞いてないぞ!?と父様以外の男性陣の声がハモった。
母様が一緒に行くので、父様にだけ事前に話した。
「シリウスとリゲルはリオトとルビアが一緒で嬉しいわよね?」
「「はい‥‥。」」
多分今、私の顔は黒い笑顔なんだろう。
「ヒスイ兄様とフレイ兄様も、リリ姉様とマリア姉様と話す時間くれますよね?」
「「どうぞ‥‥。」」
「ありがとうございます。いいそうなので、乗りましょ。姉様。」
「う、うん‥‥。」
そして一同は帝国に向けて出発した。
「ふふっ。やるわね。マリン。」
「ふふっ。そうですね。」
「ふふっ。勿論ですよ。母様、リリ姉様。」
「私も嬉しいわ。女性陣だけで行けるとは思ってなかったから。」
「姉様。私達がただ、一緒がいいってだけでこんな行動取ったと思います?」
「うん。違うの?」
「あ。確かにマリンならできるからやりそうですね。」
「リジア!?‥‥‥こほんっ。えっとですね。姉様。私達は姉様に話があるのでこうしました。」
「え?話?」
「クリス、何か悩んでるでしょ?」
「え‥‥‥さすがに気付かれたか‥‥リリに隠しごとはできないね。」
「ふふっ。クリス、甘いわ。今一緒にいる全員気付いてるわよ?」
「え!?」
「私と母様とリリ姉様は数ヶ月前から、マリア姉様とリジアは屋敷に着いた後、気付いてましたよ?」
「なるほど。それで私に逃げられない様に馬車を占領したのね?」
「正解です。姉様。本当はいつ話してくれるかな?って待ってたんですが、なかなか話してくれなかったので、せめて私達に隠し通せるとでも?と伝えようかと思いまして。」
「ふふっ。確かにそうね。隠せる訳なかったわね。話すわ。」
「本当ですか!?」
「ええ。話しやすいようにって意味でもこの顔ぶれなんでしょ?」
「はい。」
「確かに私も話しやすい顔ぶれだわ。‥‥‥マリンもリリ達も察しはついてるんでしょ?」
「将来のことかなとは。」
「うん。その通りよ。私は辺境伯家の長女だからね。結婚しない選択肢はないわ。そしてその期限もあと三年。でも三年の間、私は何もしないで過ごしていいのかなって。後で後悔するだろうなって思って‥‥‥それは学園を卒業してからずっと思ってた。でも、特にやりたいこともないしな‥‥‥って迷ってた。リリ達の結婚披露宴でマリンが言ってくれたから余計にね。」
「私、余計なこと言いましたか?」
「ううん。むしろ本当に嬉しかった。私のこと、ちゃんと見てたんだなって思って。マリンは自分でやりたいこと見つけて頑張ってて羨ましかったから。」
「羨ましい?私がですか?」
「うん。私はやりたいことが‥‥できることが分からなくなってきたから‥‥‥。」
「‥‥‥では、姉様。今一番したいことは何ですか?」
「え?えっと‥‥したいこと?」
「では、何をしてる時が楽しいですか?あ、私関連以外で。」
「え?えっと‥‥‥魔法の練習してる時かな?マリンのお陰で思いっきり魔法撃てるからスッキリするし、楽しいかな。」
「なら、魔法関連でやりたいことを探したらどうですか?」
「え?」
「魔法師団でもいいですし、何なら一緒に冒険者になってもいいかもしれませんよ?」
「あ。確かにそうね。」
「姉様。フリードさん見て魔法師団に入る選択肢外しました?」
「うん。その後、兄弟全員で乗り込んだのに選択肢から無意識に外してたわ。盲点ね。」
「悩み、解決しそうですか?」
「うん。もう少しゆっくり考えたいけど、話したらスッキリしたわ。ありがとう。」
「はい。私も行動して良かったです。この顔ぶれで移動するの初めてなのでさっきから嬉しいし、楽しくてしょうがないです。」
「ふふっ。確かにそうね。」
その後は折角女性陣だけだからということで色々話し続けた。