18話 拒否の理由。そして、王都到着。
私と父様のこっそり話はまだあって‥‥
「(あ。父様、1つだけ確認です。ストレージを使ってもいいですか?)」
「(魔物達を運ぶ為か?)」
「(それもありますが、亡くなられた騎士様達を運んで差し上げたいので。)」
「(! そういうことなら使ってあげてくれ。)」
「(分かりました。)」
父様と相談を終えて一緒に戻ってくると早速。
「「どっちと婚約するんだ!?」」
うわ~。早速か‥‥
今それどころじゃないのが分からないんだな‥‥
しかもどっちか選ぶ前提にされてるし。
「お答えしますね。」
と、私と父様以外が緊張した面持ちでいた。
「お2人共お断りさせて頂きますわ。」
「「えっ?」」
「今なんと‥‥?」
「ですから「お2人共お断りさせて頂きますわ。」と申し上げました。」
「「なぜだ!?」」
「あら?理由、お分かりになりませんか?」
「分からないから聞いている!」
「理由は色々ございますが、今はゆっくり話している時間はないので、1つだけ申し上げますね。お2人共名乗って頂けてないので、初対面の私にはどなたか分かりません。何処の誰かも分からないのに婚約など約束すると思われますか?」
「「‥‥‥」」
「お分かり頂けましたら馬車に戻って頂けますか?倒した魔物達をいい加減、何とかしないといけませんし。」
「何故俺達にだけ言うんだ。それなら姉上達もだろう。それに俺達も手伝った方が早いだろう?」
「確かにそうですね。もちろん王女殿下方にも馬車に戻って頂きますが、少しお話ししたいことがあるので。それと、お2人に伺いますが、魔物に触ったことがありますか?」
「「‥‥ない。」」
「では、ハッキリ言わせて頂きますと、邪魔です。馬車に戻って頂けますか?」
「「‥‥‥分かった。」」
そう言うと渋々2人は馬車に戻った。
そして、
「マリン様凄いわ。シリウスが大人しく従うの初めてみたわ。」
「私も。リゲルが大人しく馬車に戻るなんて‥‥私の言うことは全然聞いてくれないのに。」
「それで、マリン様。話とは?」
「その前にマリンでいいですよ。姉様のご友人でもある方から様付けで呼ばれるのは変な感じがするので。」
「じゃあなんとお呼びしたらいいかしら?クリス。」
「普通にちゃん付けでいいんじゃない?」
「はい。それでお願いします。」
「分かったわ。じゃあ私のことはリリって呼んで。殿下は嫌だけど、立場上しょうがないから、様付けはしてもらわないとだけど。」
「分かりました。それで話なのですが、騎士様達もよろしいですか?」
『はい。』
「何でしょうか?」
「私は「ストレージ」を使えます。魔物達もですが、亡くなられた騎士様達を運んで差し上げたいのですが、よろしいでしょうか?」
「え?ありがたいですが、むしろよろしいのですか?」
「はい。このまま魔物を放置すると血の臭いを察知して次がくる可能性があるので放置できません。それにリリ様達を守って亡くなられた騎士様達もご家族の元に帰して差し上げたいですから。私のストレージなら両方運ぶことが可能なので。」
「ありがとうございます。では、お願いします。」
「私達からも、ありがとう。」
「いいえ。できることがあるのに行動しないのは、私が嫌なんです。‥‥では、魔物達を回収してきますので、その間に亡くなられた騎士様達を集めて頂けますか?」
「分かりました。」
「リリ様、マリア様。魔物達の回収と騎士様達の準備が整いましたら出発します。その時にまたお知らせしますので、お2人も馬車でお待ち下さい。」
「「分かったわ。」」
そして、私は死んでるコボルトの集団をストレージで一気に回収した。
えっと念のため‥‥やらないよりいいよね?コボルトの血が地面に染みてるみたいだけど、流さないよりいいよね?
どうやろうかな‥‥流すなら水だけど‥‥そうだ!
「【エリアウォーター】」
ゴブリン達を燃やした火魔法の水バージョンだ。
‥‥‥‥えっと、もういいかな?
「【解除】よし。これでいいかな。戻ろ。」
染みていた血は見えなくなったし臭いも消えたっぽいし、大丈夫でしょ。
私がみんなのところに戻り、亡くなられた騎士達もストレージに入れ終わると何故か馬車にいたはずの王子達が来た。
「終わったな?これで時間はできただろ?さっき俺達両方の婚約者にならない理由は色々あると言ったな?教えろ。」
え~‥‥めんどくさいなこの王子。
「お断りします。時間ができたとおっしゃいましたが、王都に着くまでまだ距離はありますし、旅程は遅れてるのに何故時間はあると思っているのですか?」
「ぐっ‥‥それは。」
「はぁ‥‥仕方ないですね。ではあと1つ決定的な婚約が嫌な理由をお伝えします。」
「な、なんだ?」
「先程からお2人を前にした時だけ悪寒が走るんです。恐らく私の体がお2人を本能的に拒否しているんだと思います。なので今現在も悪寒が走っているので、できれば早々に馬車に戻って頂きたいです。」
「「‥‥‥」」
衝撃受けるのはわかるけど、私の為にも早く馬車の中に戻ってくれないかな‥‥。
「あの。これから王都に向けて出発しますし、私達も後ろからついて参ります。なので途中、野営する際もできる限り私の前に姿を見せないで頂けると助かります。」
「「‥‥‥‥」」
私の今の言葉に止めを刺されたのか、無言で2人は馬車に戻った。
ふぅ‥‥
ああ‥‥しんどかったぁ‥‥。
そして出発するということでうちの馬車に戻ると、
「マリン。あなた凄いわね‥‥色々な意味で。」
「母様。あの場合、言っとかないと後々私の精神的疲労が溜まる一方です‥‥色々な意味で疲れました‥‥。」
「お疲れ様。アクアと一緒に少し怒るつもりだったが、やめておこう。疲れてるのに追い討ちを掛けたくないからな。」
「そうして頂けると助かります。父様‥‥。」
そして、出発して少し進んだが野営の為に再び止まった。私の言った通り、王子達は私の前に姿を見せなかった。
リリ様達曰く馬車の中でかなり落ち込んでいたらしい。さっき出てきたのも自分達の馬車に私だけ乗せて話そうと思い誘う予定だったと。
あっぶねー!そんなことしたら途中で気絶するわ!
と身の危険を事前に回避していたことを知りつつ、翌日。
再び出発して、お昼休憩も挟みようやく王都に到着した。
「父様。これからどうするのですか?一旦王都の屋敷に向かうのですか?」
「いや。このまま王城へ向かう。」
「え?私は騎士達を渡すので分かりますが、姉様達も一緒に行くんですか?」
「そうだ。一旦王城へ向かって、俺達を下ろしてからディアナ達は王都の屋敷に向かってもらう。で、俺達が帰る時までに迎えにきてもらう予定だ。」
「なるほど。そういうことなら分かりました。」
そして、王城に着くと騎士達が待ち構えていて、
「ラルク辺境伯様、並びにご子息のアクア様はこちらへどうぞ。」
「え?俺もですか?」
「はい。お2人にまずお話を伺いたいと、陛下が仰せです。」
チラッと兄様は父様を見て、父様も兄様を見て頷いた。
「‥‥分かりました。」
父様達の様子を見ていると別の騎士が私に話し掛けてきた。
「あなたがマリン様でいらっしゃいますか?」
「はい。私がマリンです。」
「ではマリン様は私についてきて頂けますか?」
「はい。分かりました。」
「じゃあ。あなた、アクア、マリン。クリスと先に帰ってるわね。」
「ああ。」
ということでそれぞれ別れて、私は騎士の後ろからついていった。
「こちらが騎士団の詰所でございます。どうぞ。」
扉を開けてくれたので入ると、そこには連れてきてくれた騎士よりも立場が上であろう、凄い装備を身に付けた薄い緑の髪とピンクの目をした20代ぐらいの女性が座っていた。
「はじめまして。私は近衛騎士団団長のティア・フォン・クラシオンと申します。あなたがマリン様ですか?」
「はい。こちらこそはじめまして。マリン・フォン・クローバーと申します。あと、様付けはしなくても大丈夫です。」
「いえ。騎士団を預かる者として、ご令嬢に失礼があってはいけませんので。それにしてもマリン様は私を見ても驚かないのですね?」
「はい。エルフの方に会うのは初めてではないので。」
「そうでしたか。ちなみに以前お会いになられた方とは?」
「私が幼少のころ、魔法の家庭教師をしてくださった方です。」
「なるほど。それで忌避感を抱いた様子がなかったのですね。」
「いえ。それだけではなく、特に人種差別をするつもりも全くありません。」
「それは嬉しいですね。あ、すみません。つい話し込んでしまいましたね。ご案内しますので、魔物達と亡くなった騎士達の遺体を出して頂けますか?」
「はい。あれ?魔物達は買い取って下さるということですか?」
「はい。良ければ買い取らせて頂きますよ。」
「助かります。このままストレージに入れたままにしないといけないかな、と思ってたので。」
「では移動しましょうか。」
「はい。」
そして、移動した先で魔物達を出したあと、騎士達の遺体を丁寧に1人ずつ出して並べ終わると、団長と2人で黙祷した。
「改めてありがとうございます。マリン様が運んでくれたおかげで殉職したこの者達を家族へ帰せます。」
「いいえ。当たり前のことをしただけですから‥‥。ではそろそろお暇させて頂きますね。」
「いえ。お待ち下さい。マリン様にも話を聞きたいと陛下が仰せなのです。」
「え?私もですか?父と兄だけではないのですか?」
「はい。マリン様にもと。」
え~‥‥行きたくない‥‥。
とは言えないので、
「‥‥‥分かりました。」
はあ‥‥私に何を聞きたいんだ‥‥。
※2021,9,4 改稿しました。