17話 嫌な出合い
そして和やかに話してる間も実はサーチを続けていた私。
そして、3キロ先で反応がある。
えっとこの感じは人間だな‥‥複数人固まってるから馬車に乗ってるのと‥‥って!これ魔物に囲まれてない!?
この感じは‥‥コボルトかな?
あ!人間の反応が薄くなってきてる。まずいな‥‥
このまま馬車で行っても間に合わないな。先行するかな。
「父様。3キロ先で魔物の集団に襲われてる人達がいます!」
「何!?‥‥何人か先行して救援に向かってくれ!」
と、私達の馬車を護衛してくれてた兵士さんに指示を出して兵士さんも向かってくれたけど、多分それでも間に合わない。
「父様、私も先行します!‥‥アクア兄様も来ますか?」
私が馬車の扉を開けて出ようとすると、兄様も覚悟した顔をしていた。
「ああ!行く。正直、まだマリンほどサーチの範囲は広くないからまだ把握できてないが。それに先行するにしてもマリンよりは遅い。だからマリン。先に行け。すぐに追い付く!」
「分かりました!先に行きます!」
「って!おい!」
「すみません!父様、猶予はありませんので向かいます!」
と言いながら身体強化を掛け、風の魔法を纏って馬車を降り一気に進み出た。
途中で先に行った兵士さんを抜き、たどり着いた先で馬車を守りながら戦っている、装備の雰囲気からして多分騎士の人達がいた。
そして、騎士達が戦ってたのはコボルトだった。
やっぱりこの気配コボルトだったか‥‥犬と人間が混ざってるこの感じ嫌だな‥‥青色は好きだけど、こいつを見るのは嫌だな‥‥。
しかも集団で何か気持ち悪い。何体いるのよ?‥‥‥
げっ。やっぱりサーチで見た通り30ぐらいはいそうだな。
あれ?あれはでかいし見たことないから‥‥もしかしてキング!?何でこんな街道まで‥‥。って!考えてる場合じゃない!
「加勢します!」
「は!?君は危ないから下がっていなさい!」
「大丈夫です!」
まずは数を減らさないとな。
「【ターゲットロック】‥‥【氷槍】!」
よし!半分ぐらいは減らせたかな。あとは騎士の方が戦ってるから危ないな。っと。到着したみたいだな。
「マリン!遅れた!」
「アクア兄様!騎士の方と一緒に剣で行きますよ!」
「ああ!」
数分後、コボルトは全滅した。
「やりましたね!アクア兄様!」
「ああ。」
「あ!騎士さん治癒しないとですよね。」
「そうだな。頼む。」
「はい。」
剣を納めて馬車に近づくと、馬車を守っていた騎士が私に剣を向けた。
「これ以上近づくな。」
まあそうだよね。誰か分からない人を近付ける訳には行かないか‥‥。
「申し遅れました。私はラルク・フォン・クローバー・ウェスティアの次女でマリン・フォン・クローバーと申します。一緒にいるのは兄のアクアです。父ももうすぐこちらに到着するかと思いますが、その前に私は治癒魔法が使えます。騎士様方の怪我の治療を致しますので、警戒を解いて頂けませんか?」
「‥‥‥。」
まだちょっと疑われてるかな?
あ!うちの兵士さんきた。
「我々はクローバー辺境伯家の私兵だ!助太刀に‥‥ってあれ?終わってる‥‥?」
と兵士さんの言葉で信じてくれたのか、騎士さんは警戒を解いてくれた。
「あの。治癒魔法を掛けますので、皆さんをある程度集めて頂けませんか?」
「分かった。」
ある程度一ヶ所に集まったところで。
う~ん。重傷の人とかあまり動かすわけにはいかないからしょうがないけど、魔法陣内には入らないな。
範囲を広げないと‥‥そうだ!
「【エリアハイヒール】」
すると、みるみる内に怪我が治っていく。
そして騎士さん達が‥‥
『おぉ~!』
「ありがとう。助太刀もそうだか、治療まで。先程の失礼な態度を許してほしい。」
「いいえ。何人か助けることができませんでしたが、私達は当然のことをしたまでです。それに身元も分からない人が近づいたら警戒するのも当然ですから。ね?アクア兄様?」
「ああ。‥‥そういうことですからお気になさらないで下さい。」
「そう言って貰えると助かる。」
そう話していると、父様達も到着した。
「ラルク・フォン・クローバー・ウェスティアだ。加勢に来た‥‥のだが、やっぱり終わってたか。あとで2人共話がある。」
「「え!?」」
「その前に、その馬車の紋章からしてリコリス公爵家の方が乗っているかと思うのだが、無事だろうか?」
は!?公爵家!?そんな偉い人が乗ってたの!?
騎士さんが馬車の扉をノックして、
「危機は去りました。ご無事でしょうか?」
すると、馬車の中から男女2人ずつ4人の私達兄弟と同世代ぐらいの子達が出てきた。
4人共金髪や銀髪、青や赤の目で違いはあるが見事に美形揃いだった。
「な!?‥‥王子殿下や王女殿下までいらしたとは。」
といいながら父様が跪き、兄様もつられるように跪いた。
私もそれに倣ったが、
王子に王女まで!?
‥‥誰が王子かとか分からないんだけど‥‥。
と思っていると、
金髪青目の美少女が
「ラルク辺境伯様。助けて頂きありがとうございます。皆さんもお立ちください。」
そう言ってくれたので全員、立ち上がる。
「改めまして、私はこの国の第一王女のリリアーナ・ユラ・セレスティンと申します。」
セレスティン!?この人が王女‥‥。
続けて王女の隣にいた銀髪赤目の美少女が
「私はリコリス公爵家の長女マリア・フォン・リコリスと申します。」
この人が公爵令嬢‥‥。
あ、私も自己紹介しないと。
「このような旅装で失礼致します。私は隣におります、ラルク・フォン・クローバー・ウェスティアが次女マリン・フォン・クローバーと申します。」
「えっ。マリン?クローバーってことはもしかして、クリスの妹さんですか?」
「え?姉をご存知なのですか?」
「ええ。私と隣にいるマリア、クリスは同級生で友人なのよ。」
「え?じゃあ今姉様は馬車にいますので呼んで参りますか?」
「もう来てるわ!‥‥どう?リリ、マリア。私の妹達強いでしょ?」
「ええ。驚いたわ。でもクリスが学園で自慢するのが分かるわ。うちの弟のシリウスとは大違いだわ。」
「確かに。うちの弟のリゲルも2人を見習って欲しいぐらいだわ。」
あ。王子はシリウス。公爵家の方はリゲルって名前なんだ。
っていうか姉様‥‥私達の自慢なんてしてるの‥‥?
あ!そうだ。
「あの。王女殿下、マリア様。突然ですが、魔法を掛けてもよろしいですか?」
「え?ええ。」
「では。【リフレッシュ】。‥‥いかがですか?少し震えてらしたので少しでも落ち着ければと思ったのですが‥‥。」
「「‥‥凄い‥‥。」」
「震えが止まった‥‥ありがとう。」
「いいえ。お話を止めてすみません。」
「いいのよ。」
2人に話を聞いてみると、4人で公爵家の領地へ行っていて、王都に帰る途中だったそうだ。
ならここからは一緒に行こうと女の子4人で話してると、のけ者状態だった王子達がようやく口を開いた。
「姉上。いつまで俺達は放置されるのですか?」
「そうですよ。」
「え?駄目だった?」
「それはそうでしょう!そこの、マリンだったか?話がある!」
え~‥‥私ですか‥‥?私は話したくないです。
とは言えないので、
「はい。マリンです。何でしょうか?」
「「気に入った!俺の婚約者になれ!」」
姉達曰くのシリウス王子とリゲルが同時にとんでもないことを言い放った。
「「「「はあ!?」」」」
私、父様、兄様、姉様の声がハモった。
「おい、リゲル。マリンは俺の婚約者になるんだ。遠慮しろ。」
「いやいやシリウス。王子の婚約者なんて大変なんだからマリンは俺の婚約者になった方がいいに決まってる。」
何言ってるんだこいつら‥‥って顔を私だけじゃなくこの場の全員がしているが、2人は気付いた様子もなく‥‥
「「マリンはどっちの婚約者になりたい!?」」
と聞いてきた。
落ち着け~私。まずは
「お答えする前に少しお時間ください。‥‥父様、ちょっといいですか?」
と言って王子達の返事を待たず、父様を連れて少し離れた場所に移動した。
「(父様。色々伺いたいのですが、まずこの話、断ってもいいんですよね?)」
「(ああ。大丈夫だ。不敬だと言われるかもしれんがな。)」
「(断ったら罪になるとかはないんですよね?)」
「(ああ。不敬罪というのがあるが、これを執行できるのは陛下や貴族の当主だけだ。だから気にしなくてもいい。今の2人にはその権限はないからな。)」
「(ちなみに不敬罪になったらどうなるんですか?)」
「(処刑だ。死が待つのみだ。)」
「(うわ。父様凄い権限持ってたんですね‥‥それと、最後に父様。あの2人、私に自己紹介してませんよね?)」
「(ああ。)」
「(じゃあ何言っても大丈夫ですね。ありがとうございます。)」
「(え?ああ。)」
ふふふふふふ‥‥‥
さて、言いたいことを言わせて頂きますよ~!
※2021,9,4 改稿しました。