190話 マリンの苦悩?
そして昼食を食べ終わった後、そのまま食堂でこの三日の間のことを話していた。
「え?シリウス達、また勉強してたんですか?」
「ああ。マリンが修行に行くって言った筈なのに昨日と一昨日もか、リジアと一緒にうちに来てお隣で勉強してたよ。」
「マリンちゃんの帰りを待つ口実ね。」
「だな。」
「じゃあ今日も来るんでしょうか?」
「「来るな。」」「「「来るわね。」」」
兄二人と姉二人、母が口を揃えて言うと。
「ははは‥‥‥。」
苦笑しかない。
コンコン
「あ、シャーリー。どうぞ。」
ガチャ
「マリン様。お客様ですよ。」
「噂をすればか?」
「みたいです。このままお隣に行ってきますね。」
『いってらっしゃい。』
「シャーリー、ありがとう。」
「いえ。いってらっしゃいませ。マリン様。」
そして私が玄関に行くと。
「「「マリン!!」」」
「ふふっ。ただいま。シリウス、リゲル、リジア。」
「「「おかえり。」」」
「お隣に行くんでしょ?」
「ああ。」
「じゃあ行こ。」
そのまま私達がお隣のレグルス達の屋敷に行くと。
「「マリン!!」」
「ただいま。そしてお邪魔します。レグルス、ベネトさん。」
「「おかえり。」」
「シリウス達もみんな、入ってくれ。」
そしていつも通り応接室に行き、みんながソファーに座ると、私は対面に座った目の前のシリウスとリゲルをまじまじと見てしまっていた。
う~ん。やっぱり雪奈姉には似てないな。
やっぱり初代陛下の血が濃いのかな?単純に日本人の血が雪奈姉だけだから?
と考えながら見ていた私の視線にシリウスとリゲルが気付いて。
「ど、どうした?」
「ん?何が?」
「いや、ずっと見てるみたいだから。」
「ああ。やっぱり似てないな~って思ってただけ。」
『え?』
その場の全員がきょとんだ。
そりゃそうだ。
「誰の話だ?」
「俺達はいとこだし、似てる筈だから俺達のことじゃないよな?」
「ふふっ。勿論違うよ。まあ、その内分かるよ。」
『???』
「何かよく分からんが、マリンは修行して来たんだよな?」
「うん。そうだよ。歴史の真実も聞いてきた。」
『え!?』
「でも今話すべきことじゃないからまだ話さない。だから呼び出しても無駄だよって陛下にもそう言っておいてね。シリウス。」
「お、おう。」
「で、試験終わったのに何でまた勉強会してるの?」
『うっ。』
「マリン。分かってて聞いてるだろ?」
「あ、気付いた?ベネトさん。」
「そりゃそんなにっこりしてたら分かるだろ。」
「だね。さっき兄様達に聞いた。昨日も一昨日もうちに来たって。修行なんだから帰って来るに決まってるのにさ。」
「そうだけど‥‥‥マリンがいないって思ったら落ち着かなかったのよ。」
「へ?」
「帰って来るって分かっててもやっぱり心配だもの。」
「リジア!!!」
「嬉しい?」
「嬉しい!!!」
「ふふっ。私もマリンが帰って来て安心したし、嬉しい。」
「ん?でも、勉強してるってことは試験問題の復習とか?」
「ああ。まあな。」
「俺達、順位が上がったとはいえまだ来年Sクラスに入れるか微妙なところだからな。」
「へ~。」
「マリンはすごいよな。首席から動くことがないから。」
「そう?」
『うん。』
「おぅ‥‥‥全員で返されるとは‥‥。」
「そういえばマリン。今年度は出るよな?卒業パーティー。」
「げっ!‥‥‥そんなのあったね‥‥‥。」
「ん?卒業パーティー?」
「うん。レグルス達は初めてだから知らないよね。毎年卒業式の後にね、卒業パーティーがあるの。しかも舞踏会。毎年各学年の在校生代表数名が参加する様になってるんだよ。そういう代表って大体首席でしょ?」
「それで何でマリンはげっ!って言うんだ?」
「単純にそういうパーティーの類いが苦手だからよ。一年の時は王女様の卒業だからシリウスやリゲルが参加することが決まってたのよ。だからマリンはシリウス達がいるなら出たくないって参加しなかったのよ。」
「姉様の卒業でもあったから参加したかったけどリリ姉様とマリア姉様と三人共無理しなくていいよって言ってくれたから参加しなかった‥‥。」
まだシリウス達の内面とかも変わりつつあるって知らなかった時期だからね。避けまくってたし。
「そういうことか。単純に舞踏会が嫌なのかと思った。」
「何で?」
「今年度は皇太子だし、私も参加することになるだろう?当然、舞踏会なら踊らないといけないから私はマリンを誘うだろうしな。」
「ふっ。レグルス。俺とリゲルも参加するんだぞ?」
「え?そうなのか?」
「ああ。在校生に王族がいるなら強制参加だ。卒業生でもな。」
「じゃあリリ姉様とマリア姉様も!?」
「いや、姉上は辺境伯の領地にいるから出席しない。」
「でもリリ姉様は出るんだよね?」
「ああ。」
「やった!じゃあ基本的にリリ姉様かアクア兄様の側にいればいっか。」
「「「そうはいかないぞ。」」」
「え?何で?」
「王子と皇太子と公爵家嫡男がいるんだぞ?誰かと必ず踊らないといけない。」
「誰か探して踊れば?シリウスとリゲルは去年どうしたの?」
「‥‥‥‥姉上だけだ。」
「‥‥‥‥同じく。」
「へ~。」
「マリン?多分、いや確実に周囲もこの三人とマリンは踊ると思ってるわよ?」
「は?何で自ら注目の的にならないといけないのよ?」
「え?いやなの?」
「三人が嫌な訳じゃないし、踊らないといけないのは分かるけど、注目されるのがやだ。」
「そんな理由‥‥‥?ちなみにもう遅いわよ。マリンが踊るだけで注目を集める筈だから。」
「何で!?」
「ふふっ。「天使様」が踊るのよ?去年は現れなかった幻の辺境伯令嬢が。それだけで注目されるに決まってるじゃない。」
「う‥‥‥うそでしょ‥‥?」
「ちなみに踊れないってことはないよね?」
「う‥‥うん。小さい頃に一通り叩き込まれたから思い出すだけしたらいいと思う。」
『何、この完璧超人。』
とその場の全員が口に出すことなく思っていた。
「うわ~。それなら参加するだけで注目集めるってこと!?‥‥‥‥今年度も参加するのやめようかな‥‥‥。」
『駄目!!』
「ええ‥‥‥。」
こうして私の学年末の卒業パーティー参加が決まった。
‥‥‥‥‥勝手に。