188話 そして話は続いて
「じゃあ、話す前にこれ。」
そう言って私はストレージからおじさんの日記を取り出して雪奈姉の前に出した。
「ん?日記?‥‥‥あれ?日本語?他にも転生者とかがいたの?」
「表紙の裏を見たら分かるよ。」
「え?見ていいの?」
「うん。むしろ私より雪奈姉が見るべきだよ。」
「?‥‥分かった。」
と言って表紙を捲って裏を見た瞬間、雪奈姉は固まった。
『ーこの世界にいるかどうかは分からないが、いつか前世の娘、雪奈と柚蘭に会えることを願って。ー
白石雪夜
改め レウス・フォン・アドニス』
「え?‥‥白石雪夜って‥‥父さん‥‥?え?父さんもこっちに来たの?」
「うん。その様子だと創造神様から何も聞いてないんだね。」
「うん。知らない。父さんがこっちに来たことさえ知らなかった‥‥。」
「はぁ‥‥‥おじさんのことを知った時も思ったけど、今も無性に創造神様をはっ倒したくなってきた。」
《!!!》
「‥‥創造神様、私達の会話を聞いてたみたいだよ。」
「え?」
「ですよね?創造神様~?」
《う、うむ。すまん。確かに聞いとった。でな、父親のことは雪奈には言い辛くての‥‥柚蘭も封印の中じゃし‥‥。》
「でもおじさんも雪奈姉も会いたかった筈ですよ?」
《うっ‥‥‥父親が転生してこの世界にいるのを知ったのは亡くなった後だったんじゃ。》
「はあ?」
《地球から転生した者の魂を全て把握するのは難しいんじゃ。》
「雪奈姉の親や親戚まで来るとは思ってなかったと?」
《うむ。》
「全く‥‥。」
「ねぇ。鈴、さっきからもしかして創造神様と話してるの?」
「うん。このペンダントの5個ある魔石の真ん中のやつが創造神様達と念話する時に使う魔石なんだよ。」
「へ~。で、創造神様、何て言ってるの?」
今の私達の会話を伝える。
「はぁ‥‥まあしょうがないって言ったらしょうがないけど‥‥」
「納得いかないよね!?」
「うん。ちなみに父さんの名前の下にあるレウス・フォン・アドニス?はこっちでの父さんの名前?」
「うん。そうだよ。何と、転生しても私のおじさんだったんだよ。」
「え!?」
「最初から全部話すね。」
そして私は帝国で昔あった大規模討伐作戦のこと、おじさんに会った時の状況、私がおじさんの日記を持っていた理由なども含め全て話した。
「‥‥‥‥じゃあやっぱりさっき創造神様が言った様にこの世界の父さんは‥‥」
「うん。もう亡くなってる。転生して行ったって。ただ、今度は記憶とか消されて普通に転生することになるから例えおじさんの魂を持つ人物に出会えても、もうおじさんの記憶はないって。」
「そっか‥‥‥今の話からすると、成仏できたのは鈴のお陰なんだよね?ありがとう。」
「ううん。私もおじさんと少しだけどまた話せて嬉しかったから。」
「父さん、鈴より先に?」
「うん。雪奈姉と柚蘭が亡くなって数年後に病気でね。道場も継ぐ人がいないからおじさんが亡くなる前に閉じたよ。」
「そっか。春斗は?」
「春斗君はちゃんと大学卒業して就職したよ。」
「私達兄妹の中で剣道をやってるのが私だけだったからな‥‥春斗が道場継げる訳ないか。」
「そうだね。私もおじさんが亡くなる前に就職してあの家出ちゃったからね。」
「え?そうなの?」
「うん。いつまでもおじさんの世話になってちゃ駄目だなって思って、高校卒業したらすぐにね。」
「なら春斗寂しがってたでしょ?おじさんは前からいなかったけど、おばさんが亡くなってからずっとうちにいたからね。鈴。」
「う~ん寂しがってたかな?「清々する」って言われた気がするけど‥‥?」
「相変わらず素直じゃないな。我が弟は。」
「ふふっ。そうだね。最後に会ったのは‥‥‥正月だったかな?元気そうだったよ。」
「そっか。ありがと。気になってたんだよ。父さん達、大丈夫かなって。」
「ううん。」
「さて、鈴。もう帰っちゃう?」
「いや、雪奈姉が最後まで容赦なく攻撃してきたから疲れた‥‥。頭の中の整理もしてから帰りたいから明日帰ろうかなって。いいかな?」
「勿論。でもそのままじゃ帰れないよね?」
「あ‥‥‥えっとここに来てから6年だよね?じゃあ今18歳の姿?」
「そうなるね。」
「まずいね‥‥雪奈姉、12歳の姿に戻せたりしない?」
「出来るよ?」
「さすが神様!じゃあ明日、帰る時にお願い。」
「うん。いいよ。」
「あ!そういえば私、肝心なこと聞いてなかった。」
「ん?何?」
「ハデスってどうやって倒すの?」
「え?」
「だって今、魂だけなんでしょ?柚蘭から浄化で引き剥がした後のハデスってどうしたらいいの?」
「あ。それ、私も創造神様に聞いてない!」
「え!?‥‥ちょっと、創造神様?」
《説明、忘れとった‥‥。》
「はあ?‥‥雪奈姉、創造神様説明するの忘れてたって。」
「はあ?」
「で?どうしたらいいんですか?」
《ハデスも浄化してくれ。そしたら儂が冥界にいるやつの妻に送りつける。》
「え!?今ハデスの代わりって奥さんがやってるんですか?」
《ああ。ハデスの場合はマリンの浄化で初めて天界に行くか冥界に行くかを決める門にたどり着く。レウスはここで天界に来たから儂は存在を把握できたんじゃ。》
「門?」
《ああ。その門を潜る時に死ぬ迄に犯罪を犯した者は冥界に。誠実に生きた者は天界に行く様になっとる。この門は神だろうと人間だろうと死を迎えた魂が必ず通る門じゃ。》
「なら、創造神様が送りつけなくてもハデスは冥界に行くんじゃ?」
《いや、ハデスが手前で逃げてまた地上に降りられたら困るからの。門の前で待ち構えて確実に確保して冥界に送りつける。》
「そうですか。なら私は全力で浄化してやればいいんですね?消えたらそっちに行ったと思っていいんでしょうか?」
《ああ。それで構わん。ネクロマンサーとかいうやつのもじゃ。あやつにもハデスの魂の一部が入り込んどるからの。》
「あ。そうでしたね。分かりました。」
《すまんの。そして大変じゃと思うが、頼む。》
「はい。分かりました。」
《ではの。》
「創造神様に聞けた?」
「うん。今話した内容はね‥‥」
と創造神様との会話を雪奈姉に話すと。
「はは!送りつけるか。ちょっとは私達に申し訳なさがあるみたいだね。」
「うん。雪奈姉。柚蘭を助けたらここに連れてくるね。」
「うん。お願い。」
「さて、雪奈姉。そろそろ晩御飯作ろう?」
「ふふっ。そうだね。何がいいかな~。」
そして私達は夕食を食べて二人一緒の最後の夜を過ごした。