185話 歴史の真実5
そして魔族の地に着いた雪奈達4人は魔王城へと向かった。
再び戦争を仕掛けるなら一番上の者の指示があった筈だ。なら操るなら魔王だと。
そして前回と同じく、魔王は謁見の間にいた。
「おや?あなた方は‥‥?」
「やっぱり魔王が操られてるか。」
「‥‥‥何故私が魔王ではないと?」
「簡単だよ。魔王には一度会ってるし、ハデス。あなたみたいに丁寧な喋り方じゃなかったからね。」
「なるほど。あなた方は‥‥‥聖女とゼウスの駒ですか‥‥何しにここへ?」
「決まってる。また戦争なんてさせない。さっさと魔王から出て。」
「はっ!それで分かりましたと出る訳がないでしょう?」
「だろうね。そんなにあっさり出てくれるようなら最初から操るなんて馬鹿なことしないよね。」
「ええ。その通りです。」
「なら、強制的に出すしかないね。」
「何ですと?」
「強制的に出すって言ったの。ランス、私達がハデスを拘束するからお願いね!」
「は、はい!」
「させませんよ!」
すると、ハデスも拘束されるのは得策じゃないと雪奈達に反撃をし始めた。
ランスの防御をルチアに任せて雪奈と柚蘭がハデスに攻撃を仕掛け、激しい攻防を繰り広げていた。
それは魔王城を破壊し、天井も壁もなくなった頃に遂に終わりを迎えた。
「【土捕縛】」「【光捕縛】」
雪奈と柚蘭が二人掛かりで拘束したその瞬間。
「今よ!」「今です!」
「はい!【聖光】」
「くっ‥‥‥‥まずいですね!」
そう言ってハデスがようやく魔王から出て姿を現した。
「ランスさん、魔王を頼みます!」
「はい!」
「では、私はお二人に加勢します!」
「お願い!」
そしてハデス対雪奈、柚蘭、ルチアで戦い始めた頃。
ランスはハデスが抜けて気を失っている魔王に残る闇を払うべくもう一度聖光を使っていた。
そして長い戦いの末、ようやくハデスに勝った雪奈達は魔王の様子を見る為にランスの所に戻ろうとすると、魔王がちょうど目を覚ました所だった。
「‥‥‥ん?‥‥一体‥‥これはお前達がやったのか!?くそっ!休戦協定を持ち掛けてきたのはお前達の方ではないか!」
「覚えてないの?」
「は?何のことだ!」
「ふふふ。無駄ですよ。魔王は私が操っている間のことは一切覚えてませんよ。」
「な!その声‥‥その声が聞こえてからの記憶がない!‥‥‥‥い、今操っていたと言ったか?」
「ええ。言いましたよ?‥‥‥しかし浄化とは面倒な。ゼウスの駒共も忌々しい‥‥私の邪魔をしおって‥‥」
「え?何かキャラ変わってきたよ‥‥‥お姉ちゃん。」
「うん‥‥‥止め刺さないとまずいね。っていうかさっき、最後にやったのが止めのつもりだったのに。」
「ええ。最後のはなかなか効いてますよ‥‥?ただ、このまま‥‥‥殺られるのは‥‥癪ですね‥‥ああ、一番の危険の芽がいましたねぇ‥‥‥危険な芽は摘んでおかないと‥‥‥ね!」
「ランス!」「「ランスさん!」」
「!!」
不意討ちでハデスが闇で作った槍を飛ばし、ランスの体を貫いた。
「ぐぁ‥‥!」
「ランス!!」「「ランスさん!!」」
「い、今治癒を‥‥‥嘘‥‥」
「柚蘭?‥‥‥私の治癒じゃランスを治せないよ!?」
「ユラ様?‥‥とりあえず私が!‥‥‥え?」
「‥‥‥お二方共。もう魔力、あまり残ってないでしょう‥‥‥?諦めて‥‥構いませんよ‥‥‥。」
「ランス!!」
「セツナ様‥‥‥リエルのこと‥‥頼み‥‥‥ます。」
「ランス!!!」「「ランスさん!!!」」
「‥‥‥‥‥よくもランスを‥‥!!!」
と絶命したランスの仇を討つためにもと振り返った3人が見たものは既に絶命したハデスの姿だった。
3人でそっとハデスに近付くと、さぁっと砂の様になって消えていった。
「終わった‥‥‥んだね。」
「うん‥‥‥でも‥‥リエルに‥‥申し訳ない‥‥。」
「はい‥‥‥私も‥‥聖女‥‥失格ですね‥‥‥。」
「泣いててもしょうがない。ランスをリエルの所に帰してあげないと。」
「うん‥‥。」「はい‥‥。」
「で、私達帰るけど、まさかこれでも戦争始めるとか言わないよね?」
とぼーぜんとしていた魔王に雪奈が問い掛けると。
「も、勿論だ。恐らくだが、今殺されたそやつが俺を操っていたやつを出してくれたんだろ?」
「お。観察する力はあったようだね。」
「伊達に魔王の座に就いている訳ではない。」
「そっか。じゃあ、とっとと街を襲ってる奴ら引き上げさせてよ。」
「何!?兵が動いているのか!?」
「あ。操られてたから知らないか。今人間側の北の街を襲ってるよ。」
「分かった。とっとと引き上げさせる。」
「!今回は随分と物分かりがいいね。」
「そりゃ俺が操られてたからとはいえ実質、休戦協定を反古にしたのはこちら側だ。帝国と王国を纏めて相手にするのは避けたいしな。」
「へ~。分かってるならいいや。じゃあ、帰ろうか。柚蘭、ルチア。」
「うん。」「はい。」
こうしてランスの死はあったものの、ハデスも倒し、全てが終わった。
これからは平和に生きていける。誰もがそれを疑わなかった。
柚蘭に異変が起きるその時までは。
長いですよね‥‥‥会話を入れすぎました。
でもどうしても必要だったんです‥‥。
もうそろそろ歴史語りは終わると思います。