16話 女の子らしさ?そして王都へ
ゴブリン掃討戦から2日後。
私のエリアフレイムはようやく鎮火したそうだ。
ギルドの人が知らせてくれた。
監視をしていた冒険者の話によると、あの空間を鎮火したあとを念のため確認したところ、ゴブリンは欠片程も残っていなかったそうだ。
とりあえず消火に行くことにはならなかったが、加減を間違えたかな?
そして3ヶ月後。私はその間に7歳になった。そして、今日姉様がフレイ兄様とセレス母様と一緒に夏休みで帰ってくる。家族全員集合だ。
「ただいま~!」
「姉様~!」
私は玄関にいる姉様に走り寄って抱きついた。
‥‥初めて自ら抱きついた気がする‥‥て、今はいいや!
「わ!マリン。いきなりどうしたの?」
「姉様!もう王都に行かず、このままここにいてください!」
「は!?どうしたの、急に?‥‥ヒスイ兄様、アクア。これはどういうことでしょうか‥‥?」
「「え!?」」
「あ!違います!兄様達は悪くないです!ただ‥‥。」
「ただ?」
「この前、母様に言われたんです。「マリンは女の子らしさが無くなってきてる」と。寂しげな顔で!姉様がいた時はそんなこと無かったのにって!」
「え!?‥‥‥そうなのですか?ディアナ母様?」
私は姉様に抱きついたままなので見えてないが、母様も後から来たらしい。
「ええ。言ったわね~。」
「何かあったんですか?」
ここでようやく私は姉様から離れてゴブリン掃討戦をした日のことを淡々と話し始めた。
そして話し終わると。
「‥‥‥。」
驚きの表情で姉様が固まってる‥‥それはそうだと思う。
「掃討戦から帰ってきて私は思いました。軍事訓練にすんなりついていく。ゴブリンと戦うと分かっててついていく。躊躇いもなくゴブリンに止めを刺す。ゴブリン達の遺体を燃やす為の火を放つ。自分で言うのもなんですが、これは辺境伯家の子供としては勇敢だったかもしれません。ですが!‥‥ですが、1人の女の子としてはどうなんだ。と。」
『‥‥‥‥』
周りにいる家族全員、メイドさん達など、集まった全員が無言だった。
沈黙を破ったのはディアナ母様だった。
「あら‥‥そこまで思い詰めちゃったのね‥‥。確かに今マリンの言った通り、内容に女の子らしさは欠片もないわね。」
「そうですね。」
「‥‥ディアナ母様も姉様も容赦ないですね‥‥。」
「でもね。マリン。私はこの話を聞いた時、最初に思ったのは「マリンらしいな。」だったのよ?」
「私もです。」
「え?」
「マリンはみんなの助けになる為に行動したんでしょ?それは誰にでも出来ることじゃないんだから、それが女の子らしくなくてもいいのよ。私としては女の子らしくあって欲しかったけど、それを強要したらマリンのいいところが消えちゃうだろうからね。それが寂しかっただけよ。」
「?」
「ディアナ母様は女の子らしくなくてもありのままのマリンでいいよって言ったのよ。」
私が頭に?を浮かべたのが分かったのか姉様が教えてくれた。
「‥‥‥姉様も同じですか?」
「うん。」
「じゃあ考えるのやめます。姉様。さっきは変なこと言ってすみませんでした!」
私はぺこりと頭を下げた。
「いいのよ。むしろ嬉しかったわ。今までマリンの方から近づくことがなかったからね。」
「うっ‥‥‥あ。重ね重ねすみません!改めて姉様、フレイ兄様、セレス母様。お帰りなさいです!」
「「「ただいま。」」」
ようやくいつもの和やかな雰囲気が戻ったところで、
「フレイ、クリス。最近俺とアクアもマリンが家庭教師の先生とやってた魔法の訓練と意見の出し合いを一緒にやっててな。で、今日もこれからやろうとしてたんだが、2人も参加するか?」
「「え!?やりたいです!」」
「決まりだな。じゃあフレイ、クリス。荷物を置いたら魔法の練習場に来てくれ。アクアとマリンと先に行ってるからな。」
「「分かりました!」」
「アクア、マリン。行こう。」
「「はい!」」
こうして毎年兄弟全員揃って魔法の訓練をしたため、全員の魔法の力量が跳ね上がってしまった。
みんな少しずつ無詠唱で魔法放つ様になっていったよ‥‥。
そのせいか翌年、アクア兄様は王都の学園の入試を主席で突破した。フレイ兄様と姉様も学年主席になったそうだ。
何この完璧超人兄弟!
そして私の魔法も増えた。
それぞれの属性の攻撃魔法以外だと、
【辞書】
この世界のこととか調べたいときにあった方がいいしね。
【標的固定】
ゴブリンキング倒す時に命中するか不安があったからね。じゃあマーク着けてそこに目掛けて行く様にすればいいじゃん!ってことで。
後は‥‥まあ思いついたままに使ってるからなぁ。
そして更に2年後。
私も10歳になったということで、入試です。
王都に行きます!
10歳のお披露目会?何それ。出ないと駄目なんですか?
‥‥駄目みたいです。
アクア兄様が王都の学園に行ってから2年後、この2年の間にフレイ兄様も学園を卒業して帰ってきた。辺境伯家である家の後継ぎは、長男であるヒスイ兄様。フレイ兄様は補佐をする予定ということで、帰ってきたそうだ。
そして、今度は10歳になった私が王都に行くことになった。そして、毎年のことながら姉様とアクア兄様は夏休みで帰ってきていた。私は姉様達の夏休み終わりに王都に行くのに便乗する。
ちなみに姉様、アクア兄様、私以外は私とアクア兄様が揃って王都に行くということで、ディアナ母様と父様もいつも通り同行者として一緒に行く。あと、私の専属メイドのシャーリーも一緒に来てくれるそうだ。
よくよく考えると、学園の入試自体は年が明けてからなのに何で夏から行くんだろ?
それを父様に聞くと、まず10歳のお披露目会があるから。その後一旦帰らないのは王都に行くだけで数日かかるし、そのまま王都にいて学園に通う前に王都の雰囲気に慣れるためだとか。
そして、姉様達の夏休みも終わるということでいよいよ出発の日。
「毎年姉様、兄様達をお見送りしてましたが、遂に私が見送られる方になってしまいましたね‥‥。」
「私は嬉しいわ!やっとマリンと一緒だもの。見送られた後、寂しかったんだから!」
「そうなのですか?」
「ええ。多分私達兄弟全員が同じこと思ってたんじゃないかしら?」
「‥‥兄様達もなのですか?」
「「「勿論!」」」
「ほら!兄弟共通認識!」
「じゃあ私も今からそれを味わうんですね。」
「う~ん。多分私達とマリンがこれから味わう寂しさは違うわね。」
「え?違うんですか?」
「ええ。今までの私達の寂しいは「マリンに会えない」寂しさだからね。」
「‥‥‥。」
え?私これにどんな反応すればいいの?
うちの兄弟みんなシスコンなの!?
と私が反応に困っていると父様が。
「ほら。今日からマリンは王都に一緒に行くんだ。クリス達は寂しくないだろ?いつまでも兄弟で話してないでそろそろ行くぞ。」
「「「は~い!」」」
そして、馬車の前までくると、
「ではヒスイ兄様、フレイ兄様、セレス母様。行って参ります!」
「「「行ってらっしゃい!」」」
「じゃあ行くか。」
「はい!」
そして、全員乗り込んで馬車は出発した。
領地の街を出て、当たり前だが魔物の森に向かうのとは違う道を通ると、やっぱり私には全てが新鮮でずっと馬車の窓から外を眺めていた。その間ずっとサーチは続けていたが。
特に何事もなく野営をしつつ進み、休憩の為王都との間にあるアルスの街に到着した。この街の領主であるアルス子爵は父様の友人であり、戦友ともいえる方だそうだ。
アルス子爵の領主邸でお世話になり、2日ほど街の観光兼旅の休憩をさせてもらい、再び王都へ向けて出発した。この後はもう街はなく、王都まで2日。また野営をしつつ進む。
「今のアルスの街はどうだった?」
「街に活気があって見ているだけでも楽しかったです。アルス子爵も優しい方でしたし。私は領地以外の街を初めて見たので全てが新鮮で楽しかったです!」
「それは良かった。アルス子爵も喜ぶだろうな。」
「はい!実際出発前にアルス子爵に父様と同じ事を聞かれたので、今の様にお答えしたら喜んでらっしゃいました。」
「そうか。」
私達は和やかな雰囲気のまま、王都への道を進んでいった。
※2021,9,4 改稿しました。