183話 歴史の真実3
「とりあえず建国前がこんな感じかな。」
「ふぁ~。すごいね、雪奈姉達‥‥魔王城に突撃なんて大胆‥‥。」
「はは!確かにね。」
「えっと、この感じだと建国にも関わってるんだよね?雪奈姉と柚蘭は。」
「う、うん‥‥‥まあ‥‥ね。」
「歯切れ悪いな~。」
「鈴‥‥‥ちゃんと話すから‥‥。」
「はいはい。続きをどうぞ。」
ちょっと茶化したくなったが、我慢だ。話が進まない。
「全く‥‥」
そして再び雪奈姉は続きを話し始めた。
魔族との休戦協定を終えて前線基地に戻り、元々は中央の街の出身だというリアンと共に街を移動した雪奈達。
そして街に着いた後、グランや冒険者達はそれぞれ故郷の町に戻るということで散り散りになっていった。
そして中央の街を王都として建国する意見が上がって来ていた。
その初代国王として推薦されていたのは、この中央の街の領主の様なことをしていたリアンと戦争終結の立役者の一人、雪奈だ。
だが、雪奈は私はそんな器じゃないからと辞退した。
従ってリアンが初代国王として王国が建国した。
それと同時期にグランが帝国を建国し、初代皇帝となった。
そして両国がこれからだとそれぞれ団結し始めた矢先。
とある噂が流れ始めた頃、王国にルチアがやってきた。
「久しぶりだね。ルチア‥‥‥その様子だと建国のお祝いに来た訳じゃないんでしょ?」
「はい‥‥‥一先ずここには教会はありませんよね?」
「うん。まだ建ててないけど?」
「では申し訳ありませんが、セツナ様、ユラ様。お二人共、教国にお越し頂けませんか?」
「「え?」」
「まさか、神様達からの呼び出し?」
「はい‥‥。」
「はぁ‥‥‥今度は何よ?」
「まあまあ。行けば分かるよ、お姉ちゃん。」
「それもそうだね。じゃあルチア。手、貸して。」
「え?は、はい。」
そして雪奈はルチアと柚蘭の手を取って教国の教会の前に瞬間移動した。
「え?‥‥嘘、教会?」
「そうだよ。お姉ちゃんすごいでしょ?瞬間移動してきたんだよ。」
「え!?‥‥‥‥は!急いで祈りの間に!」
「「う、うん。」」
そして雪奈と柚蘭が祈りを捧げると、創造神達がいる白い空間に来た。
実は洗礼の時に一度ここに来ていた為、初めてではない。
ー初めて来たその時に元の世界で雪奈達は死んでいるので帰ることは不可能だとも告げられていた。ー
なのでここに来たのはこれで2回目だ。
「来ましたよ。創造神様。今度は何ですか?」
「すまんの。予定では、これから先はこの世界で人生を楽しんでもらう予定じゃったんじゃが‥‥。」
「「予定だった」?何かあったんですか?」
「うむ‥‥‥実はの、神々は儂らだけではないのだ。」
「「は?」」
「儂ら五神以外に神がおる。ただその者は儂らの様に地上の者を観察したり、加護を与えたりする者ではない。だからここにも来ることは一度たりともなかった。」
「では、どこで何をしている神様なんですか?」
「下界で死者の管理をしていた者じゃ。儂らの名前は地球の神々から勝手に取ったと言ったじゃろ?じゃからそやつのことも儂らはこう呼んでおる。「冥界の神ハデス」とな。」
「「ハデス!?」」
「えっと、そのハデス様?のことを先程から過去形で話されてますが、まさか私達に用事はその事ですか?」
「うむ。柚蘭さん、正解じゃ。ハデスはこれまで職務を真っ当に誠実にやっとったんじゃが、少し前まで人間と魔族で戦争をしとったじゃろ?そのせいで死者がこれまで以上にやってきたばかりに忙しくなり、おかしくなってしまったようでの。じゃが、儂らは今は疲れているだけだ、すぐに元通りになるはずだと気にしておらんかったんじゃ。」
「その言い方は違ったんですか?」
「うむ‥‥‥やつは折角終わった戦争をまた引き起こそうとしておる様なんじゃ。もういっそのこと魔族でも人間でもどちらかが死に絶えればあの死者の管理から少しの間だけでも逃れられる筈だとな。」
「「はあ!?」」
「まあ、そういう反応よな。」
「え‥‥え?また戦争を引き起こすってどうやって‥‥」
「お姉ちゃん、あの噂!」
「あ、魔族がまた戦争を吹っ掛けようとしてるっぽいってやつ?」
「その通りじゃ。やつは死者の魂を相手にしてきた者。魂の扱いに最も長けた奴じゃから生者を操るのも容易いことじゃ。そんな奴が地上の者を操って戦争をさせるなどあってはならん。じゃからハデスが操っておる者を探し出し、ハデスを止めてもらいたいんじゃ。」
「‥‥‥創造神様が止めたらいいじゃないですか。」
「できるならやっとる。やつはもう冥界の神の地位から落とされとるからな。」
「え?誰にですか?」
「ハデスにはペルセポネという妻がおるんじゃ。一緒に職務をしておったんじゃが、ハデスがおかしくなった時に地上に降りて魔族の魂を操れるか実験をしに行ったことがあったらしくての。その時に妻が生者を操るとは何事かと怒っての‥‥怒りに任せて地上に叩き落とした‥‥‥。」
「「‥‥‥。」」
「その時に冥界の神の座も剥奪してしまっての。儂らは地上の事に手出し出来んのでな、何も出来なくなってしまったんじゃ。」
「正直に今の感想を言っていいですか?」
「うむ。」
「「いい迷惑!!」」
「そうじゃろうな‥‥それでの、ハデスが魂を操る時に使っているのは闇魔法の様なものじゃ。」
「闇魔法ではないんですか?」
「うむ。地上の者が使うのであれば闇魔法じゃが、剥奪されたとはいえハデスの力は神のままじゃ。説明がちと難しいが、神と地上の者で違うとだけ認識してくれたらいい。でな、儂が話したいのはそのハデスの力に対抗する為の魔法じゃ。」
「光魔法じゃ駄目なんですか?」
「うむ。魂を操るんじゃ。操られた者は浄化せんと魂がおかしくなるんじゃ。」
「おかしくなったらどうなるんですか?」
「極端に言うと、それまで善良だった者が突然殺人鬼になったりかの?」
「恐っ!」
「それでじゃ、厄介な事に光魔法と浄化魔法は別物での。しかも浄化魔法を使える者は儂らが把握しておるたった一人だけじゃ。」
「え?一人だけ?」
「うむ。今の内にハデスが直接操っておる者をハデスから解放できれば戦争を回避できる筈じゃ。」
「えっと、つまりその浄化魔法を使える人に頼んでハデスを引き剥がして倒して来いってことですよね?」
「その通りじゃ。」
「では、その浄化魔法を使える人は今どこに?」
「帝国じゃ。じゃが、素晴らしいことに皇帝も噂を聞き付けて有志や浄化魔法の使い手と共に王国に向かってくれておる。王国で合流するといい。」
「「分かりました。」」
「でじゃ。もしかしたらハデスを引き剥がしても倒せんかった場合は最悪、ハデスを封印してもらいたいんじゃ。」
「封印?」
「ああ。これが封印の装置じゃ。」
と言って創造神が取り出したのは水晶の様な物だった。
「水晶?」
「うむ。この水晶を使って封印した後、封印を守る役目はこの神獣達にしてもらう。」
「「え?」」
そこに現れたのは四体の獣達だった。