182話 歴史の真実2
そして北上する旅に出てしばらく経ったある日。
「着きました!ここです。セツナ様、ユラ様。」
「ここが前線基地の街?」
「はい。既に「ノーティア」という名前の街になっているようです。」
「へ~。」
そして3人は近くにいた人に事情を説明して戦争で戦っていた人達の集まる建物に案内してもらった。
中にいるのは当時国ですらなかった場所。地位なんかもないのでいるのは冒険者達。となると、当然。
「嬢ちゃん達、ここがどこか分かってんのか?戦争の最前線に一番近い場所だぞ?興味本位なら失せな。」
という言葉達がくるのだが、雪奈は意に介さずに
「勿論分かってるよ。むしろ分かってるから来たんだよ。」
と返した。
「ほう‥‥?ならそう言うだけの実力があるってことだよな?腰に下げてる剣もなまくらじゃねぇよな?」
「勿論。」
「なら!」
「おっと!‥‥‥いきなりか。大人気ない。」
最初に突っ掛かってきた男が拳を雪奈にぶつけようとしたが、雪奈はあっさり避けた。
「チッ!避けやがったか。次は‥」
「そこまでです!」
「!‥‥リアン‥‥」
「グラン、女性に手をあげるとは何事ですか!」
「すまん‥‥。」
「はぁ‥‥そこの方、お怪我は?」
「な、ないです。」
「それは良かった。お名前を伺っても?」
「は、はい。私は‥」
と3人共自己紹介するとその場にいた他の冒険者達も含めて全員が驚いた。
「そんな人達だったとは‥‥‥殴り掛かって悪かった。」
「いや、いいよ。無傷だしね。」
「あ、私が名乗ってませんでしたね。私はリアン・セレスティンと申します。是非リアンと呼び捨てで呼んで下さいね。」
「は、はい。」
「あ。敬語も無しで。私はこの話し方で慣れてますので変えませんが。」
「わ、分かった。」
「お姉ちゃん。さっきから挙動不審だよ?」
「え!?そ、そう?」
「へ~‥‥‥ついにお姉ちゃんに春がきたか~。」
「ちょっ!ちょっと柚蘭!何言ってるの!」
「春とは?」
「気にしなくていいから!」
「?」
「ふふっ。これは何としても魔族に勝って帰って来ないとね~。ね、お姉ちゃん。」
「当然だよ!死ぬ気は最初からないよ!」
そして雪奈達は戦場に向かう者や、傷付き帰ってきた冒険者が入れ替わりで出たり入ったりするのを見ながら旅の疲れを取る為に休息をとった。
その後、しばらくの間今度は冒険者を相手に再び鍛練を続けた。
そしていよいよ3人が戦場に出る日。
「そういえばルチア。戦場ってどこなの?いきなり魔族の地に行く訳じゃないんでしょ?」
「はい。魔族の地とここの間に島があります。そこが戦場になってます。」
「え?そこの領土の取り合いしてるとか?」
「開戦のきっかけはその通りです。」
「きっかけは?」
「一度人間側が奪取に成功してます。ですが、どうせなら魔族を根絶やしにした方がいいとの声が多く上がり、魔族の地に向かおうとして反撃を受け、再びかの地が戦場に‥‥。」
「そう‥‥‥魔族の王を倒せばこの戦争は終わるの?」
「おそらく。先導しているのが魔王の様ですから。」
「でも代替わりしてまた攻めてくるんじゃないの?」
「はい。そういう意見も根絶やしにしようと言う者達からあがりました。それもあって今回の作戦です。」
「なるほどね。とりあえずここで話しててもしょうがないか。行こ。」
「せつな!」
「リアン?」
「必ず無事でいてください。ユラとルチア様も。」
「おや?リアンさん。私とルチアはついでですか?一番帰ってきてほしいのはお姉ちゃん?」
「な!か、からかわないで下さい!ユラ。」
「そ、そうだよ!」
「ふふっ。リアンさんが未来のお兄ちゃんかな~?」
「「!!!」」
「私はいいよ?リアンさんなら。」
「「え?」」
「楽しみだね。ルチア。」
「ふふっ。ええ。」
「「もう!」」
「息ぴったりじゃん。」
「「‥‥‥。」」
「ほら、ちゃんと終わらせてこようよ。お姉ちゃん。」
「う、うん。」
そして戦場に雪奈、柚蘭、ルチアは冒険者達と共に船で向かった。
「セツナ様、ユラ様。私もお二人程ではありませんが、戦う力はあるので、共に戦います。」
「「うん!」」
そして戦場である島に上陸し、戦争に参加していった。
一ヶ月後。
戦場の島を奪還した雪奈達は再び船に乗り、今度は魔族の地に向かった。
そして一直線に魔王の根城へと向かった。
魔族の地に来た目的は根絶やしではない。魔王に会うためだ。
すぐに魔王の根城に着いた雪奈達は王がいる筈の謁見の間に向かう。
すると、やはり魔王は謁見の間にいた。
「よくここまでたどり着いたな。それで?私を殺しにきたか?」
「今からする話を聞き入れてもらえないならそうする。」
「話?ここまで来ておいて何を話すと言うんだ?」
「魔王陛下。我々は協定を結びに来たんです。」
「協定だと?‥‥‥そなた、まさか聖女か?」
「はい。そうです。」
「は!聖女まで来るとはな!‥‥‥話ぐらいは聞いてやる。」
「‥‥‥我々は休戦協定を結びに来ました。」
「休戦協定だと?」
「はい。」
「ふん!何を寝ぼけたことを!」
「‥‥‥協定を結んで頂けますか?」
「誰がそんな協定結ぶか!」
「そう‥‥‥ならあんたに様はない。」
雪奈はそう言って剣を鞘から抜き、一気に魔王の下に迫った。
「な、何!?」
「セツナ様!殺めてはなりません!」
ピタッと寸止めの状態で止まった雪奈は
「何で‥‥?」
「‥‥‥魔王陛下。これでお分かりでしょう?我々はあなたをいつでも倒せる。賢明な判断を望みます。」
「くそっ!」
「‥‥‥そういうこと。」
「申し訳ありません。セツナ様。」
「いや。いいよ。」
そう言って剣を鞘に戻し、柚蘭達の下に戻ろうとした時に。
「くそっ!お前さえ倒せば!」
と、雪奈の背後から魔王が剣を振り抜き襲い掛かろうとしたが
「遅い。」
再び剣を振り抜きながら振り返って魔王の首筋に剣を当てた。
「くっ!」
「あんた、死にたいの?」
「チッ!分かったよ。協定、結んでやるよ。」
そして魔王と人間側代表として聖女が休戦協定の調印をして、無事受理された。
これで戦争は終わった。
これでやっと平和な日常を築ける。
その時は誰もがそう思っていた。
そういえば本編に書き忘れてました。ルチアさんは15歳設定です。
リアンさんは20歳です。