175話 師匠との会話
100階もある塔ーダンジョンーを登れ。
鬼か。と、思ったが定期的に休憩場所もあるそうな。
しかも今の私の体に合った細剣(?)もくれた。
(?)がつくのは刀身がレイピアよりはしっかりしているけど、「剣」っていう程じゃない?微妙な幅なんだ。
両刃だから突きでも薙払うのでもできそうだな‥‥。
ということを考えつつ早速中へ‥‥‥と入ったら速攻で魔物が出てきた。試し切りのつもりで一閃してみたら目の前の魔物、真っ二つ。
おお~!とそのままどんどん出てくる魔物を歩きながら細剣でスパスパ切って進んでいると。
『あ、鈴。言い忘れてたけど、このダンジョン私と創造神様の協作だって言ったでしょ?かなり頑丈に作ってるからさ、好きなだけ魔法撃っていいよ。』
『え?いいの?』
『うん。今まで魔力量を調節しながら撃ってたんでしょ?そういうのせずに思いっきり撃っていいよ。』
『クレーター作るレベルでも?』
『うん。』
『やったぁ!じゃあ後で遠慮なくやってみる。』
『うん。頑張ってね。』
『は~い!』
そしてどんどん進んでいった私はあっという間に1階を攻略して、2階へと進んだ。
ゲート以外全て使えるということでサーチは常時発動させたままだ。
なので多分Sランクの魔物がさっきから不意討ちを狙ってきても一撃で返り討ちだ。
この細剣切れ味すごいな‥‥‥。
単純に武神様の加護のお陰?
両方か。
とか考えながら3階に上がる階段を探しつつずんずん進む。
ちなみに内装は1階からずっと壁も床も天井も真っ白。
でも窓とかないから自然光がなくて全体的に暗い。壁に燭台が均等に並んでいるので灯りはそれだけ。
いかにもダンジョンの序盤って感じの雰囲気だった。
ゲームとかで出てくるのとイメージが違うのは出来立てみたいな綺麗さがあるだけ。
そして雪奈姉曰くの定期的な休憩場所は10階おきにあって、そこは魔物が一切入って来られないように結界を施してあるそうだ。
で、最初の10階の休憩場所に着いた時、一瞬ここがダンジョンだということを忘れそうになった。
休憩場所=部屋?
そういう考え?と疑いたくなる程簡単な物はある程度揃っていた。机や椅子。お風呂にベッド。等々‥‥
ベッドやお風呂が一つの空間に入るのはしょうがないだろう。むしろダンジョンにある筈がないものだ。
正直大変ありがたい。だが、至れり尽くせりすぎやしないか?武器ももらってるし。
と雪奈姉に聞くと。
『いや、女の子なんだからお風呂入りたいでしょ?私、自分で作っといて最初そこ忘れてたんだよね‥‥だから自分で登った時かなり嫌だったんだよね。で、実際修行に来るのが鈴だって知った後に登ったから余計にね。たまにはリフレッシュしないと登る気失せるからね~。』
と返ってきた。
そしてこの休憩場所で念話での会話をするとのことで。
まず話したのは私のことだった。
『ねぇねぇ。鈴。今のその美少女での名前、何て言うんだっけ?』
『しれっと「美少女」が入ってるのは弄るためかな?雪奈姉。』
『お、さすが鈴。正解!で、名前何だっけ?』
『マリン・フォン・クローバー。西の辺境伯家の末っ子次女だよ。』
『へ~。髪が青いから「海」のマリン?』
『あ~どうなんだろ?でも領地の近くに海ないから‥‥‥あ、「アクアマリン」じゃないかな?宝石の。私のお兄ちゃんの内の一人の名前、アクアだから。』
『へ~。お兄ちゃんの内の一人って結局何人家族なの?』
『8人。父さんと母さんが2人いて、第一夫人に長男と次男と長女。第二夫人に三男と次女の私。あ、さっきのアクア兄ちゃんは三男だよ。』
『おお~。さすが上級貴族の辺境伯家。5人兄弟か~。前世一人っ子だったから嬉しいんじゃない?鈴。』
『うん。めっちゃ嬉しかった。みんな優しいし。お姉ちゃんはあれは溺愛レベルだな。みんな可愛がってくれてたね。』
『何で過去形?』
『いや‥‥私のステータスみんなには異常でしょ?だから一度たりとも誰にもステータス見せてないけど能力は隠し辛いじゃない?ある程度好きにやってたら逆に兄弟達の魔法の先生みたいになっちゃったんだよ。』
『ああ~。そういうことか。で、マリンとしてそれだけ美少女なら家族も?』
『うん。美形揃い。でも王族も皇族も美形揃いで私は霞んでると思うんだよね。』
『え?ああ‥‥‥西のって言ってたね。何?王子とかにも会ったの?』
『うん。王子、公爵家嫡男、皇太子。みんな私と同い年。』
『マジで!?』
『うん。皇太子なんか、私と同じ学園に転校してきて今じゃクラスメイトだよ。』
『へ~。もしかして言い寄られてたりするんじゃない?今の鈴、美少女だし。強いし。帝国の実力主義も関係ないでしょ?』
『うっ‥‥』
『言い寄られてるんだ‥‥‥もしかして王子も?』
『さっき言った3人共‥‥‥。』
『おお~鈴にモテ期が!』
『むぅ‥‥。』
『で、誰にするの?鈴も今じゃ貴族令嬢でしょ?婚約者決めろって言われてるんじゃない?』
『ふふん!そこがうちの素晴らしいところでね。結婚相手は自分で決めろって家訓があるんだよ。だから今はむしろ急いで婚約者決めなくてもいいよって言ってくれてる。』
『「今は」?』
『うん。さすがに20歳までに結婚相手がいなかったらお見合いさせるって。父さんが言ってた。』
『20歳?早いね。』
『だよね?日本だったら20歳でも早いよね?でもこっちの世界は15歳で成人だからな~その差なんだろうね。』
『なるほどね~。鈴的にはどうなの?3人の内、誰が好きとかないの?』
『う~ん。この世界「敵国」っていうのがないから王子と皇太子が友達になってるんだよ。そこに公爵家嫡男と私のいとこと私で友達グループできちゃったから分からないんだよね。正確には選べない?』
『ふ~ん。でも向こうは頑張って鈴を落としに掛かってくるんでしょ?』
『うん‥‥‥そう‥‥‥。』
『婚約者になってとかは?』
『言われた。皇太子には模擬戦して自分が勝ったら妃になって。とまで言われた。』
『で、容赦なく叩きのめしたの?』
『そこまではしてないよ。めっちゃ優しくていい人だから叩きのめすのは気が引けてね、魔法でバレット撃ち込んで気絶させた。』
『へ~。「優しくていい人」ね~。』
『な、何?』
『いや?ちゃんとこの転生後の世界を楽しんでるんだなって思って。』
『うん。楽しいよ。家族も友達も含めて大切だと思える人が増えていったからね。』
『そっかぁ。そういえば前世は?結婚とかしたの?』
『むぅ。雪奈姉。わざとでしょ?モテ期の欠片もなかった私を知ってるでしょ?』
『まさか、結婚もすることなく死んだの!?』
『雪奈姉と柚蘭もじゃん!社会人になってもモテ期なんてこないまま終わったよ。』
『とりあえず社会人までは生きたんだね。』
『うん。そうだよ。』
そんな感じから始まった休憩という名の念話による仲良し会話でした。
やっとの師匠。
前世のいとこということで話が尽きない。
だから念話という手段を取らせました。女性同士ですからね。いくらでも話せる。
マリンさん(鈴音さん)いとこと話せると大喜びということで言葉使いが素に戻っている状態です。