173話 師匠との対面
さて結婚式から披露宴まで終わり、一夜明けた翌日。
とは言っても普通の休日なのでいつもと何も変わらない。
変わったのはリリ様とマリア様が義理の姉になり、リリ姉様は大公家の屋敷が出来るまで、マリア様は正式にフレイ兄様と共に辺境伯領に「ちゃんと帰る」日まで王都のうちの屋敷に泊まることになるってことだけだ。
今は私のゲートで一時的に帰ってきただけだが、早速父様に付いて後継ぎとして勉強を始めているそうだ。
ただ、セレス母様以外は辺境伯領に「いないこと」になっているので実務はしない。
なので「ここにいてもしょうがないでしょ。」とセレス母様に言われて私達はゲートで王都の屋敷に戻ってきた。
「あの、マリン。この服借りたままで来ちゃったけど良かったの?」
リジア本人が聞かされていなかったうちへのお泊まり。その為、今リジアは私の私服を着ている。背丈が一緒ぐらいなので私の服でサイズピッタリだったんだ。
「ん?別にいいよ?」
「じゃあ、ちゃんと返すからうちに帰るまで借りるね。」
「うん。返すのいつでもいいからね。」
「うん。ありがとう。」
その後は特に用事はなかったのでリジアは伯爵家の馬車が迎えに来て帰っていった。
ちなみにリジアだけうちにお泊まりになったのは例え馬車で帰るとしても夜、一人で帰るのは危ないだろうと思ったからだそうだ。(ヒスイ兄様に聞いたらそう返ってきた。)
という訳で何事もなく1日が終わった。
そしてリジアに貸した服を学園で返してもらったり、宣言通りシリウスとリゲルの為の勉強会を主にお隣さんの応接室でやったりして日々は過ぎていった。
フレイ兄様とマリア姉様は領地に帰っていっちゃったし、ヒスイ兄様とリリ姉様も大公家の屋敷が出来上がったからと引っ越していった。
学園から帰ってきたらリリ姉様とマリア姉様がいるの、楽しかったのにな‥‥‥。
そして前世で言うと冬休み数日前。
学期末試験を終えて後は冬休みを待つだけだと一息つきながら部屋でまったりしてると。
《マリン。聞こえるかの?》
《創造神様?》
《ああ。例の、修行を早めると言っていたじゃろ?》
《あ、はい。》
《師匠となる者がマリンを迎えに行くと言ってくれてな、領地のマリンの部屋で待ってもらいたんじゃ。》
《え?領地の方なんですか?》
《ああ。休みに入る初日の‥‥そうじゃな‥‥朝食後で構わんから向かってくれるか?》
《分かりました。師匠は私の部屋に直接いらっしゃるんですか?》
《ああ。やつもマリンと同じで移動魔法が使えるからの。で、分かりやすく頭まで隠れるローブを着ていくと言っておった。》
《え?そんな怪しさ全開の人について行くんですか?私。》
《あ、ああ。だよな。怪しいよな?でもそれで行くと言って聞かんでの。怪しくてもついて行ってやってくれんか?》
《‥‥‥‥‥‥‥‥‥分かりました。》
《間が長かったな‥‥。とりあえずよろしくな。マリン。》
《はい。》
翌日、私は屋敷にいる家族に休みの初日から修行に行く旨を伝えた。
学園でリジアやシリウス達にもお隣さんにも。
そして休み当日。
ゲートで私の部屋から私の部屋に移動するだけだが、ちゃんと「行ってきます!」と言えるのは良かった。
そして領地の私の部屋に移動すると、既に聞いていた通りの頭から全身を覆うローブを着た怪しさ全開の人が待っていた。
「師匠ですか?」
コクン
頷いた後、手招きされたので近づくと手を握られた。
あれ?この手の大きさだと‥‥‥女性?
と思っていた瞬間景色が変わった。
どこなのかは分からないが、私達は道の上に立っていて、その先に高い建物が見えていた。
え?今の瞬間移動?ああ、創造神様が言った移動魔法ってこれか。
そう思っていると、ローブで顔が隠れていた師匠がやっと口を開いた。
「はは!先に創造神様に伝言を頼んでたとはいえ、油断しすぎじゃない?私が師匠じゃなかったらどうするのよ?」
「それはそれで逃げられますから。殺気も感じませんでしたし。」
「なるほどね。とりあえずついてきて。」
「はい。あの建物に向かうんですか?」
「うん。そうだよ。」
そして建物の前に着くと、それは塔だった。
上を見上げても先っぽが見えない程の高い塔。
「たっか!」
「だよね。100階あるからね。」
「100階!?」
「うん。あ、そうだ。いい加減フード邪魔だし、正体を見せないとね。」
と、ローブのフード部分を取ってくれたことで初めて見る師匠の顔に私は驚いた。
「え!?‥‥‥‥嘘‥‥‥何で‥‥」