172話 鬱憤晴らしの後に
披露宴を続けるとは言ったが‥‥
「ちょっと暗くなって来ちゃいましたね。」
「そうだな‥‥‥」
「もうやっちゃいます?」
「そうだな。」「ええ。」
『え?』
私とヒスイ兄様とリリ姉様で事前に話していたこと。
それを実行するために。
「まずは皆様、元の席に戻って頂けますか?」
『?‥‥はい。』
と?を浮かべながらもみんな席へ移動してくれた。
そして私、ヒスイ兄様、リリ姉様が会場の中心に残り。
「では、ヒスイ兄様、リリ姉様。」
「ああ。」「ええ。」
「「【ライト】」」 「【グロウ】」
そしてヒスイ兄様達が出した光球が空に散らばり、庭園の上空から明かりを灯し、私が出した方は各席の頭上で柔らかな光を放っていた。
『おお‥‥‥。』
庭園に集まった方々からの反応は良さそうだった。
「成功みたいですね。ヒスイ兄様、リリ姉様。」
「ああ。」「ええ。」
「でもマリンの光は俺達のと違うんだな。」
「はい。席を照らすので明る過ぎても駄目だなと思いまして。」
「そうね。」
「ほら、ヒスイ兄様とリリ姉様も席に戻らないと。」
「ああ。」
そして私、ヒスイ兄様、リリ姉様からのちょっとしたサプライズをしたところで、それぞれ席に戻った。
ここから披露宴の続きの予定だったが‥‥‥
いつの間にか陛下と司会の人が話していたらしく、予定を大分端折ることになったそうだ。
という訳で端折りながらも最後に主役の2組の挨拶をして締め括ることになった。
あいつらのせいで‥‥‥やっぱり私も鬱憤晴らししようかな?
そして披露宴は終わり、解散となって私達親族とレグルス、ベネトさん、リジアのみが残った。
ヒスイ兄様達は普段着に着替え終わってる。
「それで、ヒスイ兄様、フレイ兄様。やっぱり鬱憤晴らし、したいですか?」
「「勿論だ!」」
「「「私達もよ!」」」
「むしろ魔法使える全員じゃねぇのか?」
「いや、ベネトさんそれはさすがに‥‥」
『その通り!!!』
「え~?」
「マリン。私もよ。」
「リジアも?う~ん。ヒスイ兄様。ここにいる人達の迎えの馬車がきますよね?」
「(ニヤリ)いや。来ないぞ。うちはマリンのゲートで帰るって言ってあるし、お隣さんはマリンの魔法で帰るから大丈夫だと詳細は言わずに伝えてあるし、アドニス家には今日はうちに泊まってもらうって言ってあるからな。」
「え!?ヒスイ様、当の私が初耳ですよ!?」
「ああ。ごめん、リジア。言うの忘れてた。」
「え~‥‥‥。」
「いつの間に‥‥‥元々私のゲートで帰る気満々だったということですか?」
「「ああ。」」
「フレイ兄様もでしたか‥‥‥では帰る前に鬱憤晴らし、しますか?」
『勿論!!!』
「‥‥‥リオトとルビアも来てみる?ゲート、体験してみたいって言ってたでしょ?」
「「いいんですか!!」」
「陛下、公爵様。よろしいでしょうか?」
「ああ。構わんよ。」
「私も構わないよ。むしろありがとう。」
「いえ。じゃあ鬱憤晴らししたい人、手を上げてください。」
バッとほぼ全員が手をあげた。
上げてないのは国王夫妻、公爵夫妻、うちの両親達だ。
「父様達は先に屋敷に戻りますか?」
「いえ。鬱憤晴らしはいいけど、見るだけ見たいから一緒に連れて行ってくれる?マリン。」
「俺も。」「私も。」
ということは連れていかないのはむしろ陛下達だけ‥‥
「お、そういうことなら私も見に行きたい。」
え?陛下?
「あ、私も。」
「「私も。」」
え?結局全員じゃん‥‥‥
「結局全員ですね。屋敷に帰るなら先にしないと、と思ったんですが‥‥ふふっ。では繋げますね。いつもの私達の練習場所でいいんですよね?ヒスイ兄様。」
「ああ。」
「では。」
そして私達はゲートの先。いつもの練習場所である荒野に移動して思いっきり魔法を撃ちまくっていた。
ただ、私達はドレスだったりで動き回る訳にはいかないのでさすがに模擬戦はしない。魔法を撃つだけ。
そしてみんな余計なことは言わず、黙々と打ち続けていた。今、口を開いたら汚い言葉が出そうだと思ったんだろうか?ちなみに私はそう思ったので魔法名のみ口にしていた。
一足先に鬱憤晴らしが終わった私は、ついて来ただけの陛下や父様達のところに戻った。そこには同じくついて来ただけのリオトとルビアがいる。
「す、すごいですね‥‥‥マリン姉様は勿論ですが、兄上達も‥‥‥兄上、姉上も。いつの間に無詠唱できる様に‥‥?」
「兄様と姉様もですわ‥‥‥‥。」
「ふふっ。4人共、努力の賜物だよ。」
「そうなのですか?」
「うん。確かに無詠唱の私のやり方を伝えはしたけど、魔法はイメージだからね。自分自身がイメージ出来ないと魔法は発動しない。だから、無詠唱は個人の努力次第だよ。」
「では、僕もできる様になりますか?」
「私もですわ。」
「私は2人の魔法を見てないからハッキリは言えないけど、努力次第でリオトとルビアも出来るかもしれないよ?」
「「本当ですか!?」」
「うん。」
「「やった!」」
「兄上に聞いてやってみます!」
「私も兄様に聞いてみますわ!」
「ふふっ。頑張って。」
「「はい!」」
シリウス、リゲル‥‥‥弟と妹が頼ってくれるみたいだよ。
頑張れ‥‥‥勉強と共に‥‥。
「殿下、ルビア様。うちに遊びにいらしても構いませんよ?」
「「いいんですか!?」」
「ええ。」
いいのか母様‥‥今、父様に確認せずに言ったよね?
ほら、父様「え?」って反応してますよ?
「いいわよね?あなた。」
「あ、ああ。」
「「やった!」」
父様‥‥あっさり負けた。母様の圧に。
「でも基本的には兄上に聞きます。頻繁に辺境伯邸にお邪魔する訳にもいきませんから。」
「そうだな。そうしなさい。リオト。」
「はい。父上。」
「しかし、リリアーナもシリウスも無詠唱ができる様になっていたとは‥‥‥マリンのお陰か?」
「「「「そうですよ。」」」」
シリウス、リゲル、リリ姉様、マリア姉様が戻ってきた。
後ろからレグルス、ベネトさん、リジアも戻ってきた。
「違いますよ。魔法はイメージ。自分でイメージ出来ないと魔法は発動しません。だから、4人の努力の賜物って何度も言ってますよね?」
「「「俺達もだぞ?」」」「私もよ?」
最後に兄様達が全員戻ってきた。
「はは!マリン。魔法の生徒が多いな!」
「陛下‥‥‥」
「ええ。マリンは洗礼の翌日、最初から全ての魔法が無詠唱でしたからね。」
「と、父様!」
『最初から!?』
うちの家族以外全員の声です。
「マリン。本当なのか?」
「はい。読み書きを覚えてすぐに屋敷にあった魔法書とかを読み漁ってましたから。」
「読み書きを覚えたのは?」
「‥‥‥‥3歳です。」
『3歳!?』
「ラルク、本当か?」
「はい。マリンの専属メイドが教えていたのですが、あっという間に覚えてしまったそうで。4歳になる前には歴史や計算も教えてましたね。」
「幼い頃からの天才だったか‥‥。」
違います!中身は前世の記憶があるから覚え直すのは読み書きと歴史ぐらいだっただけです!
あぁ‥‥みんな、そんな驚いた顔で見ないで‥‥非常に居たたまれない気分なんだが‥‥‥帰りたい‥‥。
「マリンがなんとも言えない表情してますし、目的の鬱憤晴らしもできましたから帰りませんか?」
ありがとうございます!姉様!
「そうだな。マリン。まずは城に繋げてくれるか?」
「はい。」
そしてまず、城に帰る王族と城から帰っていく公爵家がゲートを通って去っていった。
あとはうちとお隣さんなので、うちの応接室に繋げて全員で帰っていった。
そしてレグルスとベネトさんもお隣に帰っていった。
ちゃんと玄関で見送りましたよ?
残ったのはうちの家族達と新しく家族になったリリ姉様とマリア姉様。そしてリジアだ。
「セレス母様。領地に戻りますか?」
「ええ。お願い。」
「‥‥‥‥どうせなら今日ぐらいみんなでいきません?」
「え?」
「そうだな。めでたい日に一人は寂しいからな。その方がセレスも嬉しくないか?」
「あなた‥‥‥ええ。そうしてくれると嬉しいわ。」
「なら決まりですね。リジアもいい?」
「むしろ家族の中に私もいていいの?」
「勿論。」
「ならお言葉に甘えるわ。」
「じゃあ皆さんちょっと待っててくださいね。シャーリー!」
「はい。マリン様。何でしょうか?」
「今から領地に行ってくるね。明日帰ってくるから。」
「はい。畏まりました。」
「これでよし!さあ、行きましょうか!」
『ああ。』『ええ。』
そして私達は一晩領地の屋敷で過ごした。