169話 披露宴1
そして披露宴会場である城の庭園。
ところで何故会場が庭園なのか?城内の大広間でもいいんじゃないのか?
その理由としては大広間に入れないことはないが、それでもゆったりとした空間は確保できないそうだ。
何せ王女と公爵令嬢の結婚。国中から貴族が集まる。
祝い事なので家族も連れてくる人もいるそうだ。
貴族家だけで80ぐらいだっただろうか?それで、家族も連れてくるのだから100人以上は来る。
‥‥‥‥庭園の方が解放感があってよくないか?
ということで会場は庭園になったそうな。(ヒスイ兄様情報)
そして庭園には式の参列者である一部の貴族当主達には先に向かってもらっている。私達と主役待ちの状態だ。
私達が城に着くと姉様が突然、城のメイドさんのところに私を連行していってこう告げた。
「すみません。妹の為に折角して頂いたお化粧ですが、先程妹が式の途中で少し泣いてしまいまして。申し訳ありませんが、やり直して頂けますか?」
「え?姉様!?」
「あらあら。そうでしたか‥‥畏まりました。お任せください!クリス様もされますか?」
「え?」
「姉様。道連れです。一緒に来て下さい。メイドさん。姉を今より綺麗にしてあげてください!」
「お任せください!!!」
「マリン!?」
そして私は姉様の腕に抱きついて
「ふふっ。逃がしませんよ?姉様‥‥私だって姉様の綺麗な姿、見たいんですから。」
「うっ。」
「さあ、お2人方参りますよ~!」
と、メイドさんに連れて行かれる私達を見送る家族達。
『‥‥‥‥。』
「あらあら‥‥‥マリンとクリスの2人を待っててもしょうがないし、先に会場に行きましょうか。」
『はい。』「ああ。」
そして今回の主役2組と国王夫妻、私と姉様以外の親族全員が先に会場へと向かった。
一方、メイドさんに連れられて一室に入ると。
「さて、マリン様。まずは一度お化粧を落として顔を洗ってきましょうか。」
「え?」
「泣かれたのでしょう?顔洗った方がスッキリしますよ?」
「‥‥‥‥そうですね。そうします。」
「クリス様は手直しぐらいで良さそうですね。」
「は、はい。お願いします。」
「あれ~?姉様~私にはやってもらっておいて自分がやってもらうとなると緊張するんですか~?」
「うっ。仕方ないでしょ。今までは主に母様にやってもらってたんだから。」
「私も同じですよ~?」
「そ、そうだけど。」
「ふふっ。姉妹仲がいいのは存じておりますが、皆様がお待ちですから急がないと。主役より後に行くことになったら気まずいですよ?」
「「はっ!」」
「そうでした!」
ということでその後、私は一旦お化粧を落としてもらってから顔を洗って。再度お化粧してもらった。
その裏で別のメイドさんに姉様がお化粧の手直しをしてもらっていた。
そしてあっという間に完了した私達のお化粧。
お互いを見て。
「可愛いわ!マリン!」「綺麗です!姉様!」
「「え?」」
『仲がよろしいですね~。』
「マリン様、クリス様。急いで下さい!」
「「はい!ありがとうございました!」」
『どういたしまして~!』
そしてマリン達が去った後のメイド達。
『可愛かったわ~!』
「マリン様とクリス様。リリアーナ様の仰った通り仲が良くて‥‥‥」
「そう!そしてお2人方共‥‥‥」
『可愛かったわ!!』
と色めきたっていた。
そして城内を走る‥‥一歩手前の速度で進むマリンとクリス。
「ね、姉様。私達、ヒスイ兄様達の後だったりしませんよね?」
「多分大丈夫だと思うけど‥‥マリンは分かるんじゃないの?」
「はっ!そうでした!‥‥‥‥‥まだです!陛下達も庭園にいません!間に合います!」
「それは良かったわ!‥‥‥なら汗かきそうだから歩かない?」
「あ。そうですね。微風、当てましょうか?」
「お願い‥‥‥‥‥私も風の属性あるんだけどね‥‥‥難しいわよね。それ。」
「そうですか?」
「うん。」
「お願い」と言われた瞬間から私は片手を姉様に、もう片方を自分に向けて微風を出しながら私達は歩いていた。
「‥‥‥本当に器用よね。歩きながらこんなこと出来るんだから。」
「全くだな。」
「「え?」」
声が掛かった前方を見ると、既に庭園近くまで来ていたこともあってか父様がいた。
すぐに微風を解いて2人で父様に駆け寄った。
「父様。お待たせしました。」
「ああ。」
「父様父様。姉様も一段と綺麗になりましたよ!」
「マリン!」
「はは!そうみたいだな。さて、クリス、マリン。行くぞ。」
「「はい!」」
そして私達3人が庭園に踏み入れると、私達に気付いた人達からどんどん注目を集めてしまっていき、やがて静まり返ってしまった。
「あ、あの。父様、姉様。な、何で静かになってしまったんでしょうか?見られてる気もしますし。」
「見られてるんだよ。クリスとマリンが。」
「「え!?」」
「な、何でですか?」
「社交界に出てこないからだ。」
「「‥‥‥‥。」」
「もしかして私達が知らないだけで‥‥‥」
「ああ。夜会もティーパーティーも全て俺が断っていた。そういうの行きたくないだろ?2人共。」
「はい。行きたくないです。ありがとうございます!父様。」
「私もです。ありがとうございます!父様。」
「まあ、だから今当主達に見られてるんだがな。」
「「あ。」」
そして私達はそうやって話ながらも家族達に合流した。
「ふふっ。やっぱりあなたに迎えに行ってもらって正解だったわね。」
「「え?」」
「みたいだな。」
「クリス、マリン。ここに入ってくる時のこと、考えてなかったでしょ?」
「「あ。」」
「やっぱりね。」
要は令嬢がエスコートなしで会場に入るべきではないということだ。恋人や婚約者がいなければ家族がエスコートする。
そして両方いない私と姉様がエスコートされて勘繰られる要素がないのは父様と兄様達だけということだ。
そして私達が合流した後、国王夫妻が入ってきて指定の席に着いた。
その間、会場の全員が臣下の礼をとったりしていた。
私達含めた参加者は立ったままだ。立食形式で軽く摘まめる様になっている。
国王夫妻を立たせたままには出来ないからね。
そして司会役の人から呼ばれて、主役のヒスイ兄様達も入ってきて着席した。
その後披露宴は進み、歓談の時間になったと同時にこの世界でもあった「お色直し」。ヒスイ兄様達もリリ姉様達と交代で行くそうで、先にヒスイ兄様達が席を立った。
その直後。
「「マリン姉様!」」
早速きた。姉様呼び。
「リオト、ルビア。どうしたの?」
「「!!!」」
「やっと兄上と同じです!」
「嬉しいですわ。マリン姉様。」
「ふふっ。約束してたからね。今呼んだのはそれを確かめたかったから?」
「それもありますが、お化粧直して来られたマリン姉様が可愛いって言いたかったのもあります!」
「私も同じですわ。クリス姉様もお綺麗ですわ~!」
「「あ、ありがとう。」」
「ね、姉様。戸惑いますね。この純粋な目。」
「そ、そうね。」
「で、クリス、マリン。このままここに居座って他からの声を遠ざけ続けるつもりじゃないよな?」
「「えっ?」」
「や、やっぱり駄目ですか?」
「当然だ。今までも断り続けるの一苦労だったんだぞ?自分達の価値を見るいい機会だ。ほら、周り見てみろ。」
「「え?‥‥」」
またしても注目を集めていた。
他の人達と話してていいのに~!
レグルス達と話しなよ~帝国の皇太子だよ?私達以上に話せない人達なんだよ?
そして父様は私達の肩に手を置いて止めの一言。
「頑張れよ。」
「「!!!」」
く、黒い!父様の笑顔が黒いよ!