14話 家庭教師最後の日そしてゴブリン討伐!?
姉様達が王都に行って更に1ヶ月後。
父様が帰ってきて、私は母様の予言通り酔っぱらいの冒険者を返り討ちにしたことを問い詰められた。
見事に両親に同じ事を言われましたとも。やっぱり5歳の女の子が大人の男に立ち向かうのは心配するからやめてくれ。と。
父様からも軽い説教を受けて更に数日後。
この日が家庭教師最後の日である。
いつも通り草原から魔物の森に少しだけ入って、私は狼の魔物の群れと対峙していた。そして先生達はそれを少し離れたいつでも加勢できる位置で見ていた。
「相変わらず強いわね~。マリンは。魔法も剣も。私達の加勢いらないじゃない。」
「そうね。始めは私が魔法を見せる度に目をキラキラさせて見てたのにね。いつの間にか私が使う魔法全部使える様になってるし。今はもうマリンの発想に感心するばかりだわ。」
「あぁ~確かにね。っと!」
と先生達は会話しながらもこちらを見ていて、1匹だけ群から離れて襲ってきたのをミラ先生が返り討ちにしていた。
「もうすぐ終わりそうね。」
「みたいだね。」
数分後ようやく群れを倒し終えて戻ってくると、先生達が。
「うん。もう私達が教えられることはなくなったね。剣の使い方も上手くなった。」
「そうね。1匹こちらに来たけど、及第点ね。魔法の制御も上手くなったしね。」
「本当ですか!?嬉しいです。‥‥でも先生達に教えて頂けるのは今日で最後なのですよね。寂しいです。先生達といるの楽しかったので‥‥。」
「そうね。私達も楽しかったわ。でも私達は冒険者だからね。次の依頼を受けたり街を移動したりするわ。それに、もう二度と会えないわけじゃないでしょう?またいつか会えるわ。」
「そうですよね‥‥。ここは寂しがる時じゃないですよね。」
「そうよ。」
「はい!」
そしていつも通り屋敷まで先生達が送ってくれたところで。
「あっ!そういえば先生達にお礼も込めて贈り物があるんです。」
「「え?贈り物?」」
ストレージから例の物を出してそれぞれに渡すと。
「はい!これです。」
「「ポーチ?」」
「あれ?これ3人で買い物に行った時に私達が「これがマジックバックだったらな~」って話してたやつじゃない?」
「はい!そうです。なのでお2人の希望を叶えてみました。」
「「え!?」」
「私がストレージを付与してマジックバックにしました!」
「「‥‥‥」」
2人共めっちゃ驚いてる。作戦成功!
「これ‥‥私達がもらっていいの?」
「はい!勿論です。お2人が家庭教師に来てくれたばかりの頃に言ってましたよね?買いたいけどまだ手が出せないって。だから贈り物をするならこれだと決めてたんです。私ならストレージを付与できるので、一般的な物よりデザインを選べますしね。」
「「ありがとう!凄く嬉しい!」」
2人共いい笑顔で笑ってくれた。
「喜んでもらえて良かったです。あ。そういえば防犯対策でそれぞれ私と先生以外が触ると麻痺するようにしてますので、間違ってお互いのを触ったりしないように気をつけて下さいね!」
「「‥‥わかった。」」
「それから先生達の杖とペンダントに付与した麻痺魔法ですが‥」
「分かってるわ。他の人には言わないよ。安心して。」
「ありがとうございます!」
「それを言うのはこちらの方よ。防犯対策をしてもらった上にマジックバックまで‥‥私達貰いすぎじゃないかしら?」
「いいえ。防犯対策は私が先生達を勝手に心配しただけですし、先生達が元々持ってる物に付与しただけですから。それにマジックバックも家庭教師のお礼ですから気にしないでください。」
「そう?じゃあありがたく貰っとくわ。」
「ええ。そうね。マリン、ありがとう。大切に使わせてもらうわね。」
「はい!改めて。リサ先生、ミラ先生。1年間ありがとうございました!」
そう言って私は2人に頭を下げた。
そして頭を上げた私が見たのは今迄で一番綺麗な2人の笑顔だった。
「こちらこそ!楽しかったわ。」
「同じく!」
「「じゃあいつかまた会おうね。」」
「はい!」
この会話を最後に2人は去って行った。
そしてそれからの相変わらずの剣と魔法の訓練を、兄弟では私とアクア兄様だけとなりながら続けていた。
◇◇◇◇◇
数ヶ月後、春になり卒業したヒスイ兄様が帰ってきた。
訓練にヒスイ兄様も加わり、3人で魔法の練習をしていると父様がきて
「3人共。明日、兵士達と魔物の森に軍事訓練に行くんだが一緒にくるか?」
「「「いいんですか!?」」」
「ああ。最初はヒスイだけにしようと思ったんだが、アクアとマリンの実力も一緒に見たいと思ってな。」
「私もいいんですか?」
「ああ。家庭教師を受けて森にも入って慣れてるだろ?それなら問題ないだろうと、ディアナの進言もあってな。」
やった!母様ありがとう!
「で。どうする?一緒に行くか?‥‥ってその顔は聞くまでもないな。」
「「「はい!行きます!」」」
そして翌日。軍事訓練の日の朝。
「マリン様。本日はよろしくお願いしますね。」
「はい!こちらこそです!」
今回、女性の兵士さんも一緒ということで早速私達は話していた。
そして準備が整うと、父様の号令で魔物の森まで馬車で向かっていたのだが。
途中冒険者ギルドの前までくると、ギルドマスターのレックスさんが出てきて
「領主様。森に軍事訓練に行くそうですね。」
「ああ。」
「なら子供達は連れて行かない方がいいですよ。森に入った冒険者複数人からゴブリンの目撃情報が入っているので。」
「? ゴブリンなら大丈夫だろう?」
「勿論少数なら大丈夫でしょう。ですが冒険者達の情報によると、ゴブリンが村ぐらいの規模の集団を作っている可能性があるそうです。」
「もしかしてあの集団かな‥‥。」
「! どういうことだ?マリン。」
「数ヶ月前、家庭教師最後の日に先生達といつもより少し深く森に入ったんです。その時、3キロ先ぐらいにとある気配が集中してるのを見つけました。私はゴブリンを見たことがないのでその固まってるのがゴブリンかどうかは分からなくて‥‥。先生はそこまでサーチが届かないみたいで気づいて無かったと思います。今レックスさんの話を聞いて、あれがもしかしたらゴブリンの集団だったのかなと。」
「マリン。多分それ正解だぜ。マリンが言った通りなら村じゃなくて街レベルかもしれねぇな‥‥。」
「それなら確かに子供達は連れて行かない方がいいな。」
「待って下さい。私は行きます!」
「しかしそんな危険だと分かってる所に連れて行ける訳ないだろう。もうこれは軍事訓練じゃない。ゴブリンの討伐だぞ。街レベルならゴブリンだけじゃない。最高位のゴブリンキングもいるかもしれないんだぞ?」
「危険は承知の上です!では父様。伺いますが、その群れの位置が分かりますか?サーチを使える人は私以外にこの場にいるのですか?闇雲に探しても意味がありません。兵士さん達を疲れさせるだけです。」
「それはそうだが‥‥。」
「領主様。マリンを連れて行ってあげてくれませんか?俺も後で冒険者を集めて助太刀に行きます。その時、真っ直ぐ向かえた方がいい。兵士を案内役に数名引き返らせてください。」
「父様。俺も連れて行って下さい。」
「俺も。俺達でマリンを守ります。3人で後方支援に撤しますから。マリンに無茶させないように俺達で見張ってます。」
え~。私見張られるの‥‥。まあしょうがないかな。
「アクア、ヒスイ。お前達もだぞ。無茶は許さん。それを守れるか?」
「「はい!」」
「‥‥わかった。3人共連れて行こう。但しマリンは案内役だ。その後は後方支援以外するなよ。」
「分かりました!」
さあゴブリンの街の掃討戦だ。
って自分で行くと言っといてなんだけど、これ‥‥6歳の女の子が参加することじゃないよね?普通。
軍事訓練がゴブリン掃討戦に変わり、やがて草原に着いた。ここからは当然ながら歩きだ。念のため私と父様と兄様達は兵士さん達に挟まれた状態で進むことになった。
やっぱりちょいちょい魔物が出てくるが、私が事前に来るよと知らせると前にいる兵士さん達が苦もなくあっさりと切り伏せていた。
「マリン様が事前に知らせてくれるので大変助かります!」
「お役に立てて良かったです。‥‥もう少しで目的地です。やっぱり数ヶ月前より規模が大きくなってますね‥‥。すみません。父様。その時にお知らせしておけば良かったですね‥‥。」
「今悔やんでもしょうがない。マリンはゴブリンか解らなかったんだろ?」
「はい‥‥。」
「じゃあ謝る必要はない。今そのマリンのお陰で群れに真っ直ぐ向かえるし、ちゃんと討伐隊編成と対策もとれたんだ。」
「そうですよ。マリン様。今我々が疲れる事なく、無傷でいられるのはマリン様のお陰です。謝る必要はありませんよ。それよりちゃんとゴブリンを掃討してみんな無事に帰れるように頑張りましょう?」
「! はい!あ。また狼きます。今度は3匹。」
「了解です!」
と話しながら進み、いよいよゴブリン達がいる数メートル手前で一旦止まり、作戦会議だ。
「父様。皆さん。数メートル先に洞窟の穴があるのが見えますか?あれが入り口です。入り口付近に既に数匹いるようです。」
「ああ。見えてる。‥‥後ろの2人。来た道のりは覚えているな?冒険者達をここまで案内してくれ。」
「「畏まりました。」」
2人が去って行くと。
「父様。どうするのですか?」
「洞窟の中だからな‥‥マリン。奥に広い空間とかあるか?」
「‥‥あります。この洞窟結構広いみたいです。数メートルぐらい通路が続いていて、その先に広い空間がありますが、8メートル四方ぐらいはあるんじゃないかと‥‥。」
「なるほど。それだけ広ければ大丈夫かな。ヒスイ、アクア、マリン。3人共その広い空間に出るまでは何もするな。あと、そこに出ても土魔法と火魔法は使うなよ。」
「「「分かりました。」」」
「何故かは分かるな?」
「「「はい。」」」
単純に危険だからだ。土魔法は洞窟が崩れる可能性があるし、火魔法は威力が大きいと逃げ場がなくなる。
酸素が減って危ないとかはこの世界の人は知らないかな。
「よし。じゃあここまでと同じく目の前のゴブリン達を倒しながら奥に進む。奥まで行ったらヒスイ達も魔法を使って援護を頼む。」
「分かりました。」
「父様。それはいいのですが、冒険者達は待たなくていいのですか?」
「ああ。そうは言うが、マリン。もう既に草原近くまで冒険者達も来てるんじゃないか?」
「はい。来てます。よく分かりましたね。父様。」
「そりゃ俺達がギルドの前で話してる最中に既に集まり始めてたからな。それにレックスが集めるって言ったらすぐ集まるしな。」
「そうなのですか?レックスさんと昔からのお知り合いとかだったんですか?父様。」
「ああ。まあな。学園の時からの同級生の友達なんだ。」
「同級生なんですか!?」
「見えないだろ?あいつ歳のわりに老けてるからな。本人の前で言うなよ?気にしてるみたいだからな。」
「わ、分かりました‥‥。」
びっくりだわ‥‥レックスさんと父様。同い年には見えなかったよ‥‥
「まあそういうことだから分かるさ。だから先に乗り込んでも大丈夫だ。俺達が逃したのを片付けつつ合流してくれる。」
「そういうことでしたら異論はありません。行きましょうか父様。」
「ああ。‥‥じゃあみんな行くぞ。いいな?」
『はい!』
という訳で、私達は先に突入です。
※2021,9,4 改稿しました。