136話 救出作戦4
さて、救出しに来た誘拐された人達と、先に出ていた救出部隊の人達が全員外に避難できたところで。
「どうする?私達だけになったよ?」
「そうですねぇ‥‥」
「決めてないなら質問していい?」
「はい。なんなりと。」
「じゃあまず、去年王国で人を使って誘拐しようとした?」
「!」
「去年?‥‥もしかして伯爵ですか?」
「うん。やっぱり伯爵はあなたのところに誘拐した人達を連れて行こうとしてたんだね。」
「ええ。当時は闇ギルドのギルドマスターでしたから。優秀な人材を集めて人員を増やす努力を一応していたのですよ。ですが、何故それをマリン様がご存知なのですか?」
「誘拐された人達の中に王女であるリリ様と私の友人と先輩がいてね。救出したのは私だからよ。まあ本当なら先輩じゃなくてアクア兄様を狙ってたらしいけどね。」
「なんと!そうなのですか!‥‥連れてくる人材は任せると言ったのが間違いでしたね‥‥」
「あ。ちなみにアクア兄様の誘拐に失敗したって分かった伯爵がね、アクア兄様の代わりに私を誘拐して来いって実行犯に指示してたよ。」
「なんですと!?」
「それで、まだ質問してもいい?」
「はい。構いませんよ。」
「あなたと伯爵の繋がりはなんだったの?」
「ああ。それはですね。奴隷の売買の斡旋です。」
「「え?」」
「あの伯爵はあの時だけじゃないんですよ。王国の人を狙えば足がつくからと他国の人間を誘拐し、奴隷として他のところに売り捌く。その仲介などを私達がしていたのですよ。そういう繋がりがありましたので、たまにうちのギルドで奴隷を買い取ることもありました。‥‥そういえばあの伯爵はどうなったのですか?」
「勿論、王女を誘拐したんだ。死刑だよ。‥‥最後まであんたのことを喋らなかったがな。」
「フリードさん。喋らなかったではなく、喋れなかったのではなかったですか?」
「あ。そうだったな。」
「伯爵を喋れないようにしたのはあなたなの?」
「ええ。‥‥ですが馬鹿なことをしましたね。王女を誘拐しなければ仲間になれていたのに。」
「ねぇ。さっき伯爵は他国の人を誘拐してたって言ったよね?なんであの時は王国の人達を誘拐したの?」
「それはですね。他国の人間を誘拐していてもどうやら足がついた様で、私に匿ってくれと言ってきたのです。なので、どうせ王国を出るなら、王国から人間を誘拐してから来てくださいと私が言ったからですよ。」
「「!」」
「それで、誰を連れてくるかは伯爵に任せる。優秀な人材を。ってこと?」
「ええ。その通りです。」
「はぁ‥‥本当にあなたのところに行こうとしてたんだね。
‥‥その後、王国を避けていたのはどうして?」
「私もあの時に闇ギルドのギルドマスターを辞めて単独で行動する様になりましてね。各地に拠点を作ってたんですよ。ちなみに帝国は単純に拠点から一番遠かったから狙わなかっただけです。今思えば王国と帝国を狙わなくて良かったです。マリン様の逆鱗に触れるところでした。」
「じゃあ今年、王国に来たのは?」
「拠点作りが終わり、下見のつもりで来たその日にあのマリン様の神々しいお姿を見たのですよ。」
「マリンの神々しい姿?‥‥‥もしかして学園でのことか?マリンが天使って呼ばれるきっかけになった。」
「な、何故それをフリードさんが知ってるんですか‥‥?」
「ん?噂になってたぞ?広めたのは見ていた生徒達だな。」
「な‥‥なんということだ‥‥あの恥ずかしい別名が広がっているなんて‥‥」
「何を仰っているのです、マリン様!ぴったりではありませんか!天使!最初に言った者に称賛を与えたい程です!」
「‥‥‥話を戻そうか。‥‥私を見た後、私のことを調べて王国と帝国は狙ったら駄目だと思った?」
「ええ。調べて分かりましたが、あなたは有能でした。4属性にストレージに浄化魔法。私にとってマリン様は脅威でもあると。」
ほう‥‥やっぱり世間が知ってる範囲までだ。
全属性は知られてないか。
‥‥‥って当然か。言ってないし。
「じゃあ、今その脅威の私が目の前にいるけど、どうするの?」
「分かってますでしょう?何もしませんよ。」
「じゃあ、私の質問は終わりだから帰っていい?」
「おや?私が操ってるこの方はよろしいのですか?」
「ん?勿論、あなたを追い出して返してもらうよ。」
「そうですか。‥‥では、お相手頂けるのですか?」
「相手も何もあなた本体じゃないから浄化したら終わりじゃない。」
「確かにそうですね。‥‥ではここから本体に戻るのは疲れますので、マリン様の手で浄化して消して頂けますか?」
「え?そんなにあっさり?」
「ええ。一思いにどうぞ。」
「じゃあ、遠慮なく。【聖光】」
「‥‥ぐっ‥‥あ、そうそうマリン様。あの方は遅くともマリン様が学園を卒業する頃までには復活しますよ。」
「え!?」
「では。‥‥ぐぁぁぁぁ‥‥」
「「‥‥‥」」
「また気になることを言い残して消えましたね‥‥」
「ああ。‥‥ちなみにマリン。あいつの本体とやらは?」
「近くにいません。またどこか別のところから操ってたみたいです。」
「そうか。‥‥帰るか。」
「はい。あ、この家どうしますか?また拠点にされるかもしれませんし、壊しますか?」
「う~ん。そうだな‥‥あいつじゃなくても盗賊の拠点にもなりかねないしな。壊すか。」
「とりあえず、ここから出てメリアさん達に合流しましょうか。」
「ああ。」
そして私達が外に出ると、待ち構えていた救出部隊の人達と誘拐された人達がいた。
『マリン様、団長!』『ご無事で!』
「はい。無事ですよ。この方、ネクロマンサーに操られていた方ですが、どうしたらいいでしょうか?」
ネクロマンサーを浄化で消した後、操られていた人が倒れたので一応診てから魔法で水を出して運んできた。
「‥‥‥っ!‥‥‥あれ?」
「お。ちょうど良かった。目が覚めたみたいだな。」
「え?‥‥だ、団長!?な、何故ここに?」
「救出する為だが?」
「え?」
「あなたはネクロマンサーに操られていたんですよ。」
「え?‥‥あれ?君、この前訓練場に来た子だよね?」
「はい。マリン・フォン・クローバーと申します。あの時は自己紹介もせず失礼しました。」
「え?‥‥クローバー‥‥?だ、団長。まさか!?」
「おう。辺境伯家の令嬢だ。末っ子だけどな。」
「そ、そんな方が何故ここに!?」
「ネクロマンサーにご指名を受けたからですよ。」
「え?」
「それを伝えたのは操られてたお前だけどな。」
「え‥‥え?」
「まあ、一から説明してやる。‥‥誘拐されていた方々も聞いててください。」
『は、はい。』
そしてフリードさんが説明した内容は
・この誘拐の犯人はネクロマンサーと呼ばれている者で、闇魔法の使い手であること。
そして何故かマリンをすごく気に入ってること。
・闇魔法で人を操ったり精神操作をしたりできるため、誘拐されている間の記憶が抜け落ちていると思われること。
・ネクロマンサーから誘拐した人達を返すとここの場所を記した紙を渡してきたこと。
・精神操作されたりしたのを回復させることができるのは浄化魔法だけ。
その浄化魔法の唯一の使い手ということもあってマリンが同行していること。
と、ざっくりとはこんな感じだ。
「さて、メリア。この家壊しとこうと思うんだが、どう思う?」
「いいと思いますよ?またネクロマンサーの拠点になったり、盗賊の拠点になったりしたら面倒ですし。」
「だよな。‥‥さて、どうやって壊すかだな。近くに森があるし、ここは草原だ。火は使えないな。」
「どうするんですか?」
「それはもちろん、ここに魔法師団がいるんだ。水か風か土使って破壊するさ。」
「じゃあ見てていいですか?」
「え?構わんが、面白くないぞ?」
「何事も経験です。見てるだけでも勉強になることはありますよ?」
「ああ。確かに、マリン達の兄弟対決がそうだな。」
「ですね。あれは凄かったです。見ていていい刺激になりました。」
『同じく!』
「お。やっぱりマリン達兄弟に来てもらって正解だったな。」
「お役に立ててたみたいですね。」
「ああ。‥‥よし、お前ら!目の前の家破壊するぞ。跡形もなくな!」
『はい!』
「あ、先遣隊は待機な。休憩してろ。後発隊だけでやってくれ。」
『ええ~!』『はい!』
「全員でやっても無駄だ。」
『はい‥‥』
そして魔法師団の人達が家を破壊していった。