131話 私のこと
どうせ見られてるから隠す意味ないしな‥‥
ということで精霊王の加護のお話をします。簡潔に。
「えっと‥‥この姿は精霊王に加護を頂いた時に一緒にもらったもの?です。」
「「「精霊王!?」」」
「はい。もちろん、元の姿にも自由に戻れますよ?浄化魔法を使うと必ずこの姿になりますが。」
「そうなのですか?」
「はい。‥‥とりあえず話し辛いから離して。レグルス。」
「ええ~。」
「‥‥放してください?皇太子殿下。」
「!」
ちょっと低めの声で言うとあっさり放してくれた。
‥‥‥‥使えるな。この声。
「‥‥改めて見るとそのお姿お似合いですね。マリン様。」
「ええ。私もそう思いますわ。」
「!‥‥そう‥‥でしょうか?」
『勿論!』
「ふぇっ!?」
ほぼ全員で声合わせて言うからびっくりした‥‥。
変な声出た‥‥
「‥‥‥っ!‥‥‥あれ‥‥?」
「あ、お目覚めですか?」
「ここは‥‥?」
「ここは王国の城の一室ですよ。あなたはネクロマンサーに操られてここまで来たんです。覚えてますか?」
「王国の城?‥‥‥すみません。覚えてません。」
「そうですか‥‥。」
「ところであなたは?」
「私は王国の辺境伯家の次女です。あなたは?」
「辺境伯様のご令嬢!?‥‥失礼しました。私も王国の民です。庶民ですが。」
「そうでしたか。詳しくはこちらの魔法師団の団長様にお話頂けますか?」
「は、はい。分かりました。」
「ですが、その前に念のため診察をしてもよろしいでしょうか?」
「え?あなたが診察ですか?」
「ええ。私は治癒魔法が使えますので。先程申し上げました通り、あなたは操られてここまで来ていますので、怪我などをしてないか診るだけです。」
「は、はい。そういうことなら‥‥」
「ありがとうございます。手をお借りしますね‥‥‥‥‥‥大丈夫な様ですね。どこか痛みがあったりはありますか?」
「いえ。大丈夫です。」
「そうですか‥‥良かったです。‥‥では、フリードさん。この方のことをよろしくお願いしますね。」
「おう。大丈夫なんだな?」
「はい。」
闇属性の魔力は残ってないよな?ってことだろうな。
勿論大丈夫だ。むしろそっちを診た。
「分かった。‥‥ほら、行くぞ。」
「は、はい。‥‥あ、あの。ありがとうございました!」
「いいえ。お大事に。」
そしてフリードさんと操られていた人が部屋を出た後。
「て、天使ですわ‥‥!」
「え?」
「マリン様。お噂は伺っておりましたが‥‥‥先程の方に向けた笑顔、今のお姿もあってまさしく天使の様でしたわ!」
「ええ。僕もそう思います。」
「‥‥‥‥‥‥私としては恥ずかしいので元に戻していいですよね?」
「「はい。」」
「良かった‥‥。お2人はレグルス達と違ってお優しい方々です!」
「「「おい。」」」
2人はあっさり頷いてくれたので、早々に元の姿に戻しました。
「何よ?実際しつこくまだ戻さないでって言うじゃない。特にレグルス。」
『確かに。』
主に私の家族がハモりました。
「‥‥‥‥」
「あ。‥‥へ、陛下。」
「ん?なんだ?」
「あの、やっぱり私屋敷に帰ったら駄目でしょうか?」
「どうした。急に。駄目だぞ。」
「ゲート使っても駄目ですか?」
「「ゲート?」」
「駄目だ。」
「どうしよう‥‥」
「どうしたのよ?マリン。」
「姉様。‥‥城に泊まるんですよ?仮に今日もこの部屋となると、レグルスと同じ部屋で寝ることになるんですよ?」
「は!‥‥‥そうだったわ。」
「何か問題があるのか?」
「陛下。むしろ問題しかありません!昨晩は2人共寝てるというより倒れて気を失っていただけです。起きた時にお互いの無事を確認できる様に隣のベッドでそれぞれ寝かせてくれたのだと思いますし、ベネトさんもいてくれました。ですが、今日は2人共起きて動けます。私は魔法も問題なく使える程に回復してます。ベネトさんも2日連続で監視なんてさせられません。‥‥私とレグルスをここに2人っきりにさせるおつもりですか?」
『!』
「確かにそうだな‥‥」
「あら。それなら私の部屋で一緒に寝る?マリンちゃん。」
「え?」
「いいわね!リリの部屋なら安心できるわ。そうしたら?マリン。」
「え?よろしいのですか?リリ様。」
「ええ。マリンちゃんならむしろ嬉しいわ。」
「なら、レグルスは俺の部屋にくるか?」
「え?シリウスの部屋にか?」
「ああ。ここに一人も寂しいだろ?」
「まあ‥‥そうだな。じゃあお邪魔していいか?」
「ああ。いいぞ。」
「じゃあ決まりね。これならマリンちゃんも安心して城に泊まってくれるわよね?」
「はい。リリ様。お世話になります。」
「ええ。」
「‥‥‥私も泊まろうかな‥‥。」
「「え?」」
「クリス?」「姉様?」
「私も。」
「マリア?」「マリア様?」
「ふふっ。私はいいわよ?2人が一緒でも。私の部屋にベッドを持ってきたらいいんだし。」
「「なら私も泊まる。」」
「姉様だけずるいですわ!私も一緒に泊まりたいです。」
「え?ルビア様も?」
「ふふっ。いいわよ。ルビアも一緒で。クリス、マリア、マリンちゃん。いいかしら?」
「私はお邪魔する立場ですし、リリ様のお部屋ですので構いません。」
「私も。」
「私もルビアと一緒なんて久しぶりだから嬉しいわ。」
「やった!マリン様とお話の機会を得ましたわ!」
「は!ルビア、ずるいぞ。」
「ずるくありませんわ。リオト。女の子同士の特権ですわ。ね?マリン様。」
「ふふっ。そうですね。‥‥そういえばお2人もお互い呼び捨て敬語なしで話されるのですね。」
「「!‥‥ええ。」」
「ふふっ。同い年のいとこですからね。‥‥幼なじみですか
‥‥シリウス達やレグルス達を見ても思ってましたが、羨ましいですね。私には幼なじみはいませんでしたから。」
「そうね‥‥確かに私もリリとマリアを見てていいな~って思ってたわ。」
「そう?」
「はい。」
「なあ、マリン。」
「なに?ベネトさん。」
「ゲート、うちの屋敷に繋げてくれないか?」
「へ?‥‥ああ。レグルスの制服?」
「そういうことだ。」
「あの。先程も仰ってましたが、ゲートとは?」
『あ。』
しまった‥‥ここには私のゲートを知ってる人達ばっかりだから忘れてた‥‥リオト殿下とルビア様にはまだゲートのこと話してなかった‥‥
と思ったが、もう遅い。
リオト殿下とルビア様の前で堂々と話してしまったので。
「‥‥‥悪い。マリン‥‥」
「いいよ。さっき自分で言ってしまってたし。」
「マリンちゃん。私達に話してくれたこと、リオト達にも話してあげて。大丈夫だから。」
「私の魔法に関しても、ということですか?」
「ええ。」
一応家族にも目線で問いかけると全員が頷いた。
「分かりました。‥‥リオト殿下、ルビア様。」
「「はい。」」
「お2人にも私の魔法に関してお話しますが、これからお話しすることはほぼここにいる人達しか知らないことです。他言無用でお願いできますか?」
「「は、はい!」」
「ありがとうございます。まず、先程のゲートの話です。お2人は私がストレージを使えるのはご存知ですか?」
「はい。」「存じてますわ。」
「ストレージは空間魔法なのですが、他にも使える魔法があります。それがゲートです。ゲートは空間移動魔法で一瞬で別の場所へ移動できます。」
「た、例えば?」
「そうですね‥‥ここから帝国の城内へも一瞬ですよ。ただし、私が行ったことのある場所にしか行けませんが。」
「帝国へも一瞬で行けるのですか!?」
「ええ。行けますよ。」
「すごいですわ‥‥。でもどうしてマリン様が行ったことがある場所にしか行けないのですか?」
「簡単なことですよ。魔法はイメージです。空間を繋げるのも想像できなければ繋げようがありません。見たことがない景色を正確に想像して繋げるのはさすがにできませんよ。」
『なるほど‥‥』
「えっと‥‥何故皆様まで今更納得を?」
「え?だって私達はゲート使えないから感覚が分からないもの。」
「なるほど。‥‥さて、お2人共。あともう一つお話したいことがあります。お2人は私が使える魔法の属性はご存知ですか?」
「えっと‥‥世間が知ってるのと同じ範囲だと思います。水と土と風と光の4属性とストレージですね。」
「‥‥陛下。私の魔法、4属性まで世間に広まってるのですか?」
「ああ。」
「すまん。俺とリゲルがマリンに学園で模擬戦挑んだだろ?その様子を見た学生達が広めてしまった様だ。」
「‥‥‥なるほど。そういえば生徒会に入った時にも見せたし‥‥自業自得だな。」
「そういえばそうね。」
「‥‥リオト殿下、ルビア様。それを知って、私のことは怖くないのですか?」
『!』
「はい。怖くありませんよ?」
「私もですわ。マリン様を怖がる理由がありますか?」
「え?でも4属性持ちって普通いませんよね?」
「確かに聞いたことはありませんが、マリン様だから怖くありませんわ。姉様と兄様からお話は伺ってますし、実際にマリン様を見ていたら分かりますもの。マリン様はお優しい方ですから大丈夫だと。」
「僕も同じですよ。」
「!‥‥リリ様の仰った通り、大丈夫そうですね。」
「でしょ?」
「はい。‥‥お2人共。私が使える魔法ですが、実は4属性だけではないのですよ。」
「「え?」」
「水、土、風、光。これだけではなく、残りの火と闇も使えます。そこに空間魔法と浄化の聖魔法です。」
「‥‥すごい!」
「‥‥ええ。マリン様‥‥すごいですわ!」
「怖くは‥‥」
「ありません!」「ありませんわ!」
「!‥‥‥良かった‥‥」
「話して頂いてありがとうございます。他言致しませんのでご安心下さい。」
「私も話し辛いだろうことをお話し頂いて嬉しいですわ。勿論私も他言致しませんわ!」
「お2人共、ありがとうございます。‥‥さて、お話も済んだことだし、ベネトさん。お待たせ。ゲート、応接室に繋げたらいい?」
「おう。頼む。」
「了解!繋げたままで待ってたらいい?」
「ああ。すぐ戻るから繋げたままでいてくれ。」
「うん。分かった。」
そしてゲートを繋げてベネトさんがあっさり通り抜けた後、
「ほ、本当にベネト様が消えました‥‥」
「これは今皇太子殿下のお屋敷に繋がっているのですよね?」
「はい。そうですよ。」
「マリン様は皇太子殿下のお屋敷に行ったことがおありだったのですか?」
「ええ。レグルスが転校してきた初日に。うちのお隣だったので驚きましたが。」
「そういえばお隣でしたね。」
「ええ。」
「リオト殿下。マリンはその時、私達の食事を作ってくれたのですよ。」
『え!?』
このことを知らない数名の声がハモりました。
「マリン様が‥‥?皇太子殿下とベネト様の食事を?」
「ええ‥‥まあ‥‥簡単なものですが‥‥」
「兄上は食べたことがあるのですか?」
「ああ。あるぞ。帝国に行った時に作ってくれた。」
「では兄様もですの?」
「ああ。」
「「羨ましいです(わ)!」」
「え‥‥」
「ただいま。ありがとな、マリン。‥‥どうした?」
「なんでもない。」
「?‥‥ほい。殿下。制服と鞄と着替え。」
「ああ。ありがとう。ベネトさん。マリンも。」
「ああ。」「うん。」
「本当に移動できたのですね‥‥」
「お2人も通ってみたかったですか?」
「「はい!」」
「では、また後日ですね。」
「「はい‥‥」」
「2人共。マリンちゃんは後日って言ったのよ?今日は駄目でも他の日ならいいよってことよ。ね?マリンちゃん。」
「はい。」
「「!」」
「そういえばマリン、クリス、アクア。」
「「「はい?」」」
「なんでしょうか?陛下。」
「アクアは次に会うときは、リリアーナ達の結婚式になるだろ?」
「? はい。」
「3人共。披露宴が終わるまで頑張るんだぞ。」
「「「え?」」」
「ど、どういう意味でしょうか?」
「そなた達の家には家訓があるだろう?あれは先祖代々続いてるものだからな。当然他の貴族家も知っている。実際、ラルクがそれでもくる兄弟全員へのお見合いを全てその家訓を盾に門前払いしているからな。」
「「「え!?」」」
「え‥‥?お見合い?来てたんですか?父様。」
「ああ。特にマリンが一番多い。」
「え!?な、何故ですか!?」
「私のところにもクローバー家に話を通してくれと言ってくる者がいるが、マリンが一番多いのだ。」
「マリンちゃん。分からない?」
「はい。」
「ふふっ。マリンちゃん達は有名人よ?私達の命の恩人で、その事で剣と魔法の腕は知られてるし、王国最難関の王立学園に首席入学してるしね。それに兄弟揃って首席だし、その見た目。優秀な人材だもの。欲しがるところは沢山あるのよ?」
『!』
「ま、まさか‥‥‥陛下が頑張れと仰ったのは‥‥‥」
「クリス、アクア、マリンに直接話す機会が来たとここぞとばかりにそういうやつらに囲まれるだろうから覚悟してくるんだぞ。ということだ。」
「「「‥‥‥」」」
「‥‥‥‥楽しみだったはずのリリ様達の結婚なのに‥‥‥まさか覚悟が必要とは‥‥」
「マリンはいいじゃない。皇太子殿下達に守ってもらえばいいんだから。私とアクアは‥‥」
「姉様達も私の側にいればいいじゃないですか。あ、かくれんぼでもしますか?」
『は!?』
「会場にはいますよ。でも私の魔法で姿を消しています。さあ姉様とアクア兄様はどこにいるでしょう?‥‥とか。」
『‥‥‥』
「まあ、さすがにそれは駄目‥‥」
「それだ!」「それよ!」
「駄目だ。ちゃんとお相手しろ。」
「「父様‥‥」」
「マリンもだ。皇太子殿下達もずっとマリンの側にいられる訳ではないのだぞ?」
「え?私はレグルス達がいなくても平気ですよ?」
『え?』
「よく考えたらそういった話は片っ端から断ればいい話でしょう?私は冒険者でもありますし、未成年です。今は婚約も結婚も考えられません。と。その後仮に報復というか、仕返しがあろうと返り討ちにして差し上げればいい話ですし。」
「ははっ!逞しいな!マリン。」
「そう?ベネトさん、このやり方いいと思わない?」
「ああ。いいと思うぞ。マリンらしくて。」
「でしょ?なので私は大丈夫です。私としては姉様とアクア兄様の方が心配です。」
「そうだが、今考えてもしょうがないだろ?それに俺達がここに来た当初の目的はマリンと皇太子殿下の様子を見に来たんだぞ?」
『あ。』
「分かったな?そろそろ帰るぞ。それで、クリスは残るんだな?」
「はい。父様。」
「分かった。」
「私が明日ゲートで屋敷に直接姉様をお送りしますよ。」
「ああ。頼む。」
「うん。ありがとうマリン。」
「はい。」
そして私達の様子を見に来た人達が帰っていき、私とレグルスもリリ様とシリウスの部屋にそれぞれ向かった。