12話 一年後そして安全対策
リサ先生とミラ先生の家庭教師が始まって一年が経とうとしたころ。いつもの草原で。
「そういえばリサ先生。先生達は護身術とか今までどうしてたのですか?」
「どうしたの?急に。」
「ふと、去年酔った冒険者に絡まれたのを思い出しまして。それに最近は一緒に魔法の応用の仕方とか意見出しあったりしているので魔法で対策とか考えられないかなと思いまして。あの時は相手が酔っててまともな攻撃してこなかったから良かったですが、普通はまた反撃してきますよね?」
「あぁ~。確かにそうね。いつもはね、絡まれてもギルド内だったり大通りだったりするからミラが一撃食らわして逃げるか、叫んで周りに助けてもらってたわね。」
「なるほど。でもやっぱり女性ですし危ないですね。麻痺させられる様にしましょうか。」
「麻痺させるか‥‥そういえばマリンは実際にやったのよね?どうやったの?」
「微弱な雷を放つ感じでやりました。ちょうどその先に狼の魔物がいるみたいなのでお見せしますね。」
この一年でサーチも含めて魔法は上達したし、魔力制御も慣れてきた。今では発動させたら常時サーチをし続けられる様になった。そして魔物と人間の区別とかも出来るようになり、一度対峙した魔物の気配も分かる様にもなった。
「えっ?うん。わかった。ここで見てるわね。」
「はい。ちょっと行ってきます。」
すると狼の魔物が私目掛けて襲ってきた。私は横に避けて通り過ぎようとする狼に触れて【麻痺】を発動した。
すると、狼がパタリと動きを止めて倒れた。
狼にこっそり鑑定を使ってみると状態異常で麻痺と表示されていた。
うん。ちゃんと成功したね。一度使った魔法とはいえ、魔物にも効果があるのを発見できたから良かったな。
でも前世の知識ってこういう時素晴らしいよね!
そこに様子を伺ってた先生達がきた。
「マリン。もしかして成功?」
「はい。そうみたいです。麻痺してるので動けないけど生きてるって感じみたいです。なのでいつまた襲ってくるか分からないので一旦止め刺しますね。」
水の矢を作って喉の所に刺した。今度こそ死んだ様なので、私は狼の亡骸をストレージに仕舞った。
「はぁ~。やっぱりマリンの想像力凄いわね。でも私はすぐには使えなさそうね。詠唱でバレるだろうし。」
「ああ~‥‥確かに詠唱でバレますね。‥‥‥何かに付与します?」
「えっ?付与できるの?」
「多分できるんじゃないかと思います。」
「例えばどれに?」
「う~ん。普段から手に持ってるものとか身に付けてるものですかね?リサ先生だったら杖とか。」
「ああ。なるほどね。これには魔力増強付与がされてるけど、これ消えない?」
「はい。消さずに出来ると思います。貸してもらえますか?」
「はい。じゃあお願い。」
「【プログラム】」
発動条件:使用者による「麻痺」・「魔法」発言による切り替え
発動内容:「麻痺」で【麻痺】発動
声に出すと周りにバレるなということで手で入力する様にイメージして作った魔法だ。
なので、目の前にはパソコンのキーボードみたいな表示が出ている。入力はこの世界の言語だが。
「あ。あともう一つ。【プログラム】」
発動条件:付与者「マリン」・使用者「リサ」以外の者が触れた時
発動内容:「麻痺」で【麻痺】発動
「これで使えると思いますが。ちょっと試してみますね。「麻痺」」
えっと‥‥あっ兎がいた!‥‥ちょっとだけごめんね。
リサ先生の杖で兎に触れると、痺れたのか倒れてピクピクしてる。
うん。成功だな。「魔法」
野うさぎで無害だったので逃げて行くのを見届けたあと、そのまま先生達の所に戻った。
「成功です。分かりやすく「麻痺」と「魔法」で切り替え出来るようにしました。杖に魔力を込めながら「麻痺」と言って頂ければ切り替わります。その後杖で相手に触れれば麻痺させられます。」
「「‥‥‥。」」
「‥‥先生?」
「もうマリンに驚かせられることはないと思ってたんだけどね‥‥。でもありがとう。助かるし、心強いよ。」
「あはは‥‥。良かったです。常にミラ先生が側にいるならいいのですが、偶々離れた時にリサ先生が絡まれたら大変だと思ってたので。」
「! そんな事考えてくれてたの?‥‥嬉しいわ。本当にありがとね。」
「いいえ。私も一応女の子ですし、体験してみて怖いかなと分かったので、私としても良かったですから。」
「ねぇ。マリン。その付与私のにもできる?」
「? はい。どれにしますか?‥‥まさか剣ですか?」
「ううん。違うわ。私のペンダントに付与してほしいの。」
「ペンダントですか?」
「うん。このペンダントお気に入りでね、いつも身に付けてるし魔力流したら使えるんだよね?」
「はい。じゃあ麻痺させる時は拳ですか?」
「うん。できる?」
「う~ん‥‥。大丈夫だと思います。」
「じゃあお願い。」
そしてミラ先生のペンダントを受けとり
【プログラム】
発動条件:使用者による「麻痺」・「通常」発言による切り替え
発動内容:「麻痺」で両拳に【麻痺】効果発動
「こっちもあともう一つ。【プログラム】」
発動条件:付与者「マリン」・使用者「ミラ」以外の者が触れた時
発動内容:「麻痺」で【麻痺】発動
「これで大丈夫だと思います。服の上からでもペンダントに魔力を込めながら「麻痺」と言って頂ければあとは「通常」と言うまで両手に麻痺効果が付与されるはずです。」
「分かったわ。ありがとね。」
「いえ。お2人共切り替え忘れないでくださいね。あと、それぞれ私と使用者以外が触れると同じく麻痺する様にしてますので、気を付けてくださいね。」
「それは私がリサの杖に触ったら‥‥」
「ミラ先生に麻痺効果が発動します。」
「「分かった‥‥。」」
「もう一つ相談がありまして。私には兄が3人と姉が1人いて、その姉が来年から王都の学園に行くのでもうすぐ受験の為にここを離れるんです。何か贈り物をしようと思ってて、それで売られてる中で一番小さい魔法の袋ぐらいのを自作しようかと考えてまして。どんな感じがいいか相談に乗って頂けませんか?」
「いいけど‥‥生地を買って作るの?それとも普通に売られてる袋とかポーチに付与するの?」
「そこも迷ってるんですよ‥‥。どれぐらいの大きさでどれぐらい入るか分からないので。使う生地にもよるらしいですし。」
「う~ん。じゃあとりあえず今日はもう訓練は切り上げて店を見に行ってみる?」
「いいんですか?」
「うん。私達が一緒じゃないと街も回らせてもらえないんでしょ?」
「はい‥‥。未だに許可が出ないです。」
「じゃあ行きましょ。」
「はい!」
ということで、街に戻って3人で一軒のお店に入った。
「う~ん。私はむしろこのポーチがマジックバックだったらいいのになって思うけどね。」
「あぁ~私もこのポーチで同じ事思ったわ。でもマリンのお姉さんは冒険者になるわけじゃないのよね?」
「はい。その予定はないはずです。ただ私も含めて女の子って買い物好きでしょう?マジックバックがあれば便利かなと。」
「う~ん。でも付与するのはマリンなのよね。ポーチでも袋でも同じな気がするから、生地に拘ったらいいと思うわ。
‥‥‥このポーチとか頑丈そうだし色も綺麗だからいいんじゃない?」
「あっ!本当ですね。姉様の髪と同じ水色で綺麗ですし。これにします。」
「え?そんなあっさり決めていいの?」
「こういう時は直感ですよ。あとで後悔したくないですし。なかなか買い物もできませんしね。」
「確かにそうね。」
「じゃあ私、買ってくるので待っててくださいね。」
「うん。わかった。」
そう言って先生から離れて、姉様のポーチとあと2つ買ってこっそりストレージに仕舞って先生達の所に戻った。
「お待たせしました。」
「お金足りた?」
「はい。私はこの一年、狩った魔物を換金しても使い道がなかったですから、貯金し放題だったので。」
「あぁ~そういえばそうだね。」
「じゃあ、ちょっと早いけど帰ろうか。」
「はい。」
そして、自分の部屋に帰ってくるとストレージからさっき買ったポーチ3つを取り出した。
1つは姉様であとの2つは先生達の分だ。先生達の家庭教師期間ももうすぐ終わってしまう。なのでお礼の意味で先生達にもプレゼントしようと思ったのだ。
さっきの買い物は姉様のも本当だが先生達の好みも探っていたから言ってくれて良かった。
という訳で3つのポーチにそれぞれストレージを付与し終わったが‥‥一応盗難対策いるよね?なら‥‥
【プログラム】
発動条件:制作者「マリン」及び使用者「○○」以外が触れた時
発動内容:【麻痺】発動
※○○にそれぞれ姉様とリサ先生とミラ先生の名前
これでいいかな。
再び仕舞ったところでふと、思いついた。今日先生達と話したことは姉様にも言えることじゃないかと。
となると、普段身に付けていても違和感がなくて‥‥姉様は護身術習ってないから攻撃に使える物がいるな‥‥まさか飛び道具渡すわけにもいかないしな‥‥いや相手に触れれば効果が出るから物が無くても良いのか‥‥?
「マリン様?」
‥‥‥あっ!そうか。ミラ先生のと同じでいいんじゃないか?麻痺の効果範囲を広げればこっちが触れても相手が触れても効果は出るよ‥‥
「マリン様!」
ね。と考えていたらいつの間にか側にシャーリーがいた。
「うわっ!‥‥びっくりした‥‥シャーリー、いつの間にいたの?」
「ちゃんとノックしましたよ?返事がなかったので勝手に入って来てしまいましたが、それでも気付かれなかったので。」
「そうなんだ。考え事してて気付かなかった。ごめんね。」
「いいえ。ご夕食のご用意ができてますよ。とお呼びしにきただけですので。それより凄い集中して考えていたようですが、もしかしてお邪魔してしまいましたか?」
「ううん。大丈夫。ちょうど考えが纏まったところだったから。」
「それなら良かったです。皆様既にお集まりですよ。参りましょうか。」
「うん。」
よし。姉様の安全対策もできそうだ。
※2021,9,4 改稿しました。