118話 城での話ークリス達、国王サイドー
一方リリアーナの部屋。
「マリンちゃん、さすがね。」
「ええ。この割り振りが一番無難ね。」
「うん。リジアとベネトがいるからマリンも安全だろうし。」
「ですね。」
「そういえば、アクアもリリ達を姉様って呼ぶの?」
「え?なんですか?いきなり。」
「いや、マリンとシリウス王子とリゲル様はそれぞれこう呼ぶよって言ってたけど、アクアはどうするのかな?って思って。アクアがリリ達に話し掛けてるの見たことないしさ。」
「確かにそうですね‥‥‥どうしたらいいと思いますか?」
「考えてなかったの?」
「はい。」
「私はマリンちゃんと同じようにしてほしいかな。私のこともリリって呼んでほしいし。」
「私も。」
「えっと、マリンと同じようにということは結婚式が終わったら‥‥‥リリ姉様とマリア姉様?」
「「!」」
「ふ、不思議な感じだわ!」
「姉様がそれでどうするんですか!俺はそうなると姉様のこともクリス姉様と名前付きで呼ぶことになるんですよ?」
「は!そっか‥‥。そうよね。慣れるしかないわね。」
「‥‥‥ということはこの呼び方で決定ですか?」
「そうなるわね。他の呼び方だと違和感があるんでしょ?」
「う~ん。そうですね‥‥」
「えっと、私達はなんて呼んだらいいかしら?」
「え?普通に呼び捨てでいいじゃない。」
「え?いいの?」
「まさかマリンにちゃん付けだからって、アクアは君付けにするつもり?」
「えっと‥‥‥それは駄目な気がするわ‥‥‥呼び捨てでアクアって呼んでいいの?」
「はい。お2人が良ければそれでいいですよ。」
「「やった!」」
コンコン
「はい。どうぞ!」
◇◇◇◇◇
一方、皇帝・国王サイド
マリン達全員が去っていったあと。
「ラルク。マリンはどこまで話した?」
「ここでだよな?」
「ああ。」
「帝国での話はアンデッドの浄化をしたことと精霊王の加護の話をしただけだ。あとは俺達が帝国からの帰りに盗賊に襲われた話とマリンの魔法に関することだ。」
「なに!?盗賊に襲われたのか!?でも全員無事にここにいるってことは‥‥」
「ああ。もう領地の近くまで来てたからな。マリンが気付いて助けてくれたよ。」
「そうか。さすがだな、マリン。」
「ああ。」
「‥‥では、陛下。私の指名依頼のせいで別行動を取らせることになり申し訳ありません。」
「いや。全員無事だったんだ。それでいい。マリンが盗賊を全員生け捕りにしてくれたしな。」
「生け捕り!?本当か?ラルク。」
「ああ。本当だ。マリンは帯剣してないが、魔力刃もあるからな。魔法と両方使って40人全員気絶させた。」
「‥‥‥すげぇな。」
「ああ。」
「それで、ベアル。話とは?」
「‥‥‥勿論マリンのことですよ。」
「だろうな。」
「陛下。マリンを自分の戦力にしたいなら無理ですよ。」
「ああ。分かってるよ。本人にも言われてるからな。私が疑っていようと関係ない。自分は自分の力を自由に使うとな。ラルク。あれはもう私が御使いだと疑いたければ好きにしろということだろう?」
「ええ。マリンは帝国でも我々に強い決意を示しましたから。」
「あの時だろ?ラルク達がマリンを怒らせた時の。」
「ん?マリンがラルク達を怒ることがあったのか?」
「‥‥ええ。ヒスイ達の結婚を話したのがマリンは最後だったんですよ。しかも爵位の話とかもベアルと一緒に聞くことになって‥‥」
「先輩。それはマリンが怒るのは仕方ないですよ。」
「ええ。あの時、マリン泣いてたしね。」
「先輩、泣かせたんですか!?」
「うっ‥‥‥ベアル‥‥‥」
「事実だろうに。‥‥‥陛下、公爵様。」
「「なんだ?」」
「俺の息子もマリンを狙ってるのは分かってますよね?」
「「!」」
「ああ。」
「マリンからしたらレグルス、シリウス、リゲル。この3人共嫌じゃないらしくて、気持ちの面で今3人共横並びみたいなんですよ。」
「そうなのか!?」
「ええ。マリンはシリウスとリゲルにも笑う様になってました。」
「だから今3人でマリンの取り合いしてるんで、邪魔しないでくださいね。シリウスかリゲルの婚約者にして縛る様なことも。冒険者になったばっかりでそんなことしたら可哀想ですよ。」
「ああ。分かった。」
「まあ、マリンは拒否するでしょうけどね。去年、まだシリウス達を避けてる筈の時でも、レグルスの婚約者にならないとハッキリ言ってましたからね。まあ今思えば皇太子の婚約者になったら冒険者になるとか出来なくなるからだったんだと分かりますが。今のシリウスとリゲルに対しても同じでしょう。」
「だろうな。‥‥なあ、ベアル。」
「はい?」
「マリンはやはり逸材だな。」
「ええ。我々に対して全く物怖じせずに話してくれますし、俺より強いから楽しませてもらってます。そして心も強い。息子の人を見る目が確かで嬉しい限りですね。」
「私もだ。」
「私もですね。」
「でも、何かを抱えてます。いつか話してくれるとは思いますが、何故かマリンを見てると生き急いでいるように感じることがあります。」
「それは俺も思っていた。毎日楽しそうにしてるが、ふと何かあると思い詰めた顔をしたり何かを決意した様な顔をする。全く話してくれないがな。」
「なんで話してくれないんだ?」
「一つ話すと全部話さないといけなくなるからだそうだ。それこそステータスの内容にも関わってくると。」
「そうか。俺達に出来るのは見守り、待つだけか。」
「ああ。」
「そうか‥‥。俺が今回、マリンに頼んで陛下達と話したかったのはマリンに対する認識の共有です。マリンは恐らく世界でたった一人だけの浄化魔法の使い手。死なれても、いなくなられても色々な意味で困る人物です。」
「ああ。」
「そうだな。」
「そう言うとがっちり守りたくなりますが、それは本人としては逆に迷惑でしょう。しかも自分だけじゃなく他の人達も守れる実力者。信じて自由にさせたい。皆さんもでしょ?」
「「「ああ。」」」
「俺はマリンにステータスの相談をされた時からそのつもりだ。」
「俺も。俺の暴走を怒って止めてくれるようなやつだ。縛りたくないし、縛れるとも思ってない。」
「ふっ。ベアルも怒られたか。なかなか面白いやつだよな。マリンは。」
「ええ。」
「さて、都合よく兄弟別々にいてくれてるしな。クリス達呼んでマリンを見守っててくれぐらい言わないか?」
「言われる迄もないって返ってくるだけだぞ?」
「だろうけどな。」
そしてクリス達を呼びこちらの話の内容をざっくりと話し、マリンが無理しない様に見守っててくれと言うと。
「「「「言われる迄もありません。」」」」
「な?」
「ああ。」
「父様達も思ってたんですね。マリンが生き急いでいるように感じると。」
「クリスもか。」
「ええ。私だけじゃなくマリンに近しい者達は全員感じてるんじゃないでしょうか?」
「ああ。だろうな。本人は自覚ないだろうがな。」
「ええ。」
「さて、俺が話したかったことは話せましたが、他に何か言っておきたいこととかありますか?」
「いや。俺はない。」
「「私もだ。」」
「「私もよ。」」
「宰相は?ずっと黙ったままだったが。」
「ええ。ちょっと色々衝撃がすごくて‥‥‥私も特にはありませんよ。」
「なら帰るか。」
そしてマリン達も呼んで。
「皇帝陛下。もういいんですか?」
「ああ。ありがとな。マリン。」
「いえ。もう帰りますか?」
「ああ‥‥っと、その前にその子がリジアか?」
「はい。そうです。」
「確かに目の色が一緒だな。」
「リジア。自己紹介してみたら?」
「え!?‥‥‥えっと‥‥お初にお目に掛けます。私はマリンのいとこにあたります。フリージア・フォン・アドニスと申します。」
「アドニス?」
「はい。ディアナ母様の実家ですよ。」
「そうか‥‥そういえば言ってたな。‥‥ってことはこの子もか。」
「え?」
「はい。‥‥陛下。明日話しますよ。」
「そうか。頼むな。」
「はい。」
「じゃあマリン。ゲート頼む。」
「はい。」
そして皇帝の執務室にゲートを繋げると皇帝夫妻は帰っていった。
「マリン。皇帝陛下は私のこと知ってるの?」
「ん?私が来年帝国に一緒に連れて行っていい?って聞いた時に軽く話しただけだよ。陛下が知ってるのは別の人。明日話すよ。」
「?‥‥‥分かった。」
「さて、皇帝陛下の用事も終わりましたが、私達は帰っていいんでしょうか?」
「ああ。私の話も終わっていたからな。いいぞ。今日はラルクもいい。明日また来てくれ。」
「はい。」
「では私達は失礼致します。」
「ああ。またな。」
そしてようやく私達は屋敷に戻ることができた。