106話 慰霊碑
陛下と共に慰霊碑に向けて出発することになり、大きめの馬車にみんなで乗り込んで進んでいく。
「ところで慰霊碑ってどの辺にあるの?」
「帝都から出て少し街道から外れた所に小高い山というか丘があってな。そこの頂上はちょっとした広い草原みたいになっていて、慰霊碑だけじゃなくて側にお墓を立ててある人もいる。だから頂上まではさすがに歩きだ。」
「そっか。」
そして、馬車で移動したからかすぐに着いた。
馬車から降りて頂上まで登って行くと。
「!!‥‥うわぁ~!すご~い!広いね。ここ。」
「ああ。‥‥ほら、奥に見えるのが慰霊碑だ。」
言われるがまま奥に目を向けると、大きな一枚岩が鎮座していた。
近づいてみると、そこにいろんな人の名前が刻まれていた。
そこには伯父様の名前も刻まれていた。
伯父様の名前のところを指で触る。
「伯父様‥‥。陛下、お祈りしてもいいでしょうか?」
「ああ。勿論だ。レウスだけじゃない。浄化してくれたマリンが祈ってくれるならみんな喜ぶだろ。」
「そうだといいのですが‥‥‥では。」
私は慰霊碑の前で正座し、目を閉じて祈りを捧げる。
伯父様。先日お会いしましたから、恐らくこの声は届きませんね。
でも‥‥‥雪夜おじさん。
この世界にいるか分からないけど、代わりに探すね。
雪奈姉と柚蘭を。
だから安心して他の冒険者仲間の皆さんと見ててね。
冒険者の先輩の皆様。伯父様をよろしくお願いします。
途中周りに人の気配を感じたので、一緒に来たみんなも他の人達も代わる代わる祈りを捧げたんだろう。
と思ってそろそろ目を開けようとした時に辺りがざわついた。
『え!?』
「え?」
と、目を開けるとそこには光を纏った人達が浮いていた。
しかし周りの人達は
「なんだ?あの光。」
とざわついているだけだった。
「え?皆さん光に見えるんですか?私には人の姿が見えますが。」
『え!?』
「マリン!レウスの時と一緒じゃないか?」
「あ!そうですね。やってみます。」
と、座ったまま精霊王の衣(説明すると長いのでそう呼ぶことにした。)に姿を変えて話し掛けてみる。
「あの、皆さんは亡くなられた冒険者の方々で合ってますか?」
『え!?』
ーああ。合ってるよ。ー
ーレウスさんの姪っ子なんだって?ー
「はい。そうです。」
ー今、そこに家族がいる。俺達の声を届けてくれるか?ー
「はい!勿論です。‥‥皆さん!この光。皆さんのご家族の方、亡くなられた冒険者の方々です。私が言葉をお伝えしますね。」
『え!?』
そして、一人一人伝えていく。
全員の言葉を伝え終えると、
ーありがとな。マリン。‥‥だったか?ー
「はい。」
ーレウスさんはもう転生していっちまったが、話は聞いたんだ。俺達の声まで届けてくれてありがとな。ー
「いいえ。」
ー俺達ももうすぐ転生するらしいんだ。だからこうして降りて来れるのはこれが最初で最後だったんだ。ー
「そうなんですか?」
ーああ。最後に家族に会えたし、浄化してくれたのがこんな可愛い女の子だったと分かったからな。満足だ。ー
ーそうだな。‥‥マリン。ありがとな。ー
「いいえ。先輩のお役に立てて良かったです。」
ーやっぱレウスさんの姪っ子だな‥‥ー
ーああ。ー
「え?」
ーいや。時間みたいだ。‥‥じゃあな!ー
「はい!」
そして、先輩達は消えていった。
「いっちまったか‥‥」
「はい。もう皆さん転生するから今日みたいに降りて来れないそうです。」
「そうなのか‥‥」
「あの、陛下。今更ですが、その子は?」
「ん?毎年招待してる王国の辺境伯の末っ子だよ。」
『辺境伯様の!?』
「えっと‥‥本来の姿ではないですが、マリン・フォン・クローバーと申します。」
「自己紹介はいいけど、マリン。いつまで座ってるんだ?」
「えっとですね‥‥。この服ワンピースでしょう?」
「そうだな。」
「それで、ここ‥‥風強いので立てなくなりまして‥‥。そしたら今度は足が痺れまして‥‥」
「ぷっ。そんな理由かよ。」
「笑わなくてもいいじゃないですか。‥‥まあもうこの姿でいる必要ないですから戻しますけど。」
『戻すのですか!?』
「え?はい。‥‥駄目ですか?」
「はい!もう少し天使の姿を目に焼きつけたいので!」
「え!?」
「ふっ。やっぱり天使と呼ばれる運命みたいだな。マリン。」
「レグルス~~他人事だからって~~!」
「これに関しては他人事だからな。」
「はぁ‥‥」
諦めてとりあえず足を崩していると。
「わっ!‥‥‥わぁ~風気持ちいい~!」
勿論足を押さえて言ってますよ。
ーありがとうー
「えっ?」
「どうした?」
「今複数の人の声でーありがとうーって‥‥」
「他の冒険者達だろうな。やっぱりマリンを連れてきて正解だったな。」
「そう‥‥なんでしょうか?」
『勿論!』
「!‥‥‥ならお役に立てたと喜ぶことにします。」
「ああ。それでいい。」
「天使様。」
「あの‥‥私の名前はマリンですよ‥‥?」
「我々には天使様です。家族の言葉、伝えて頂いてありがとうございました。」
「いえ。‥‥天使呼びはやめてくれないんですね‥‥」
『ありがとうございました!』
「!‥‥‥はい!」
「我が儘を言いましたね。もう戻していいですよ。」
「やった!‥‥‥‥ふぅ。」
やっと元の髪色、服に戻れた。下は短パンでスカートじゃないから、ようやく立てる。
足とかに付いた土を払って今度は全身で風を受ける。
「あぁ~やっぱり全身で風受けた方が気持ちいい~!」
その時、先程のーありがとうーを思いだして。
「‥‥‥‥皆さんの来世に幸せが訪れますように。」
と私は空に向かって呟いていた。
その後、何事もなく無事城に戻ってきた。
慰霊碑に長くいることになった為か、城に着いた頃には夕方近くなっていた。
街に出るのも訓練をするにも時間が中途半端だった為、各々思い思いに過ごすことになり、私は自分の部屋に戻っていた。
と言っても特にする事がないので、久しぶりに恐怖のステータスを見ることにした。
「【ステータス】」
[名前]マリン・フォン・クローバー
[種族]人間 [性別]女性 [年齢]十二歳
[称号]辺境伯家次女 転生者 神の御使い
四神の主人 神々に守られし者 精霊に愛されし者
[レベル]280
[体力]4,000,000/4,000,000
[魔力]83,000,000/83,000,000
[能力]SSS
[魔法]
創造魔法Lv.10 空間魔法Lv.10 火魔法Lv.10
水魔法Lv.10 風魔法Lv.10 土魔法Lv.10
光魔法Lv.10 闇魔法Lv.10 聖魔法Lv.10
[スキル]
鑑定Lv.10 武術Lv.10 体術Lv.10
物理耐性Lv.10 魔法耐性Lv.10
[加護]
創造神の加護Lv.10 武神の加護Lv.10
生命神の加護Lv.10 商業神の加護Lv.10
魔法神の加護Lv.10 精霊王の加護Lv.10
うぉぅ‥‥‥いつみても異常だな‥‥称号増えてるし。
本当に精霊王の加護が増えてる‥‥。
問題は‥‥‥聖魔法って何?
しかも何故か当たり前のようにレベル10だし。
‥‥‥‥多分浄化魔法だろうけど、見れば分かるか。
聖魔法Lv.10 ▼
浄化魔法が使える。闇魔法で操られた者の解放も可能。
やっぱりか‥‥そのままじゃん。
何気に前みた時から30もレベル上がってるんだけど‥‥
ワイバーンと‥‥アンデッドも一応魔物扱いでレベル上がったのかな?学園に来たやつも反映されてるとか?
‥‥上がりすぎじゃね?
はぁ‥‥‥やっぱりこんな異常なステータス、誰にも見せられないな。
私はステータス表示を消すと、ベッドに寝転がった。
あ~明日帰るんだよね‥‥
今年は母様達や兄様達に話すことが‥‥‥重いな。内容が。
伯父様の話は王都でもアポロ伯父様にもしないとだし。
あ~母様達と兄様達にも帝国で激怒したの言わないとな‥‥
はぁ‥‥王国に帰るのに気が重くなる日がくるとはね‥‥
と考えていると、念話がきた。
《マリン。聞こえるかの?》
《創造神様?》
《ああ。レウスに続いて今日降りた冒険者達の声も伝えてくれてありがとな。みんなマリンに感謝しておったよ。》
《いえ。突然だったので驚きましたが。》
《ああ。あの時、あやつらが急に家族がいるから降りたいと言い出しての。じゃからマリンの魔力を目指して降りたらいいと言った瞬間、次々と降りてしまっての。マリンに説明する時間がなかったんじゃ。》
《そうでしたか。レウス伯父様の時と同じかなと思って聞いたら正解でした。なので私にできるのは声を伝えることだなと。》
《ああ。助かったよ。あやつらも転生していった。》
《創造神様、その方々とは別に複数の声でありがとうと聞こえたのですが、それは聞き間違いじゃないんですよね?》
《ああ。アンデッドになってずっと、さ迷っていたのをマリンが道を示した。全員浄化されて成仏できたと、感謝を伝えたいと口々に言っておったからな。その者達の声じゃろ。》
《そうですか‥‥。では全員転生していかれたんですか?》
《ああ。満足そうに去っていった。》
《良かった‥‥。》
《ああ。その事を伝えようと思っての。ではな。》
《はい。ありがとうございました。》
そして、創造神様との念話が終わった。
その直後。
コンコン
やってきた人が分かったところで私は体を起こした。
「レグルス。入っていいよ。」
ガチャ
「さすがだな。マリン。」
「でしょ?‥‥あ、レグルス。シリウスとリゲルも廊下歩いてるでしょ?」
「え?‥‥‥本当だ。」
「レグルス?今マリンの部屋に?」
「ああ。今来たところだ。マリンが2人に気付いてな。」
「そういうことか。」
と、廊下で会話してるので、私は3人に近づいて扉近くにいるレグルス越しに話し掛けた。
「いつまで廊下で喋ってるの?」
「わっ!」
「あれ、驚かせた?ごめん、レグルス。」
「い、いや。いい。」
「それで、2人も私に用事?」
「「ああ。」」
「じゃあ3人共入っていいよ。」
「「「お邪魔します。」」」
全員中に入ったところで。
「それで、3人共どうしたの?」
「明日、帰る時間は決めたが、午前中何するか決めてなかったなと思ってな。」
「2人も?」
「「ああ。」」
「‥‥そういえばそうだね。」
「また帝都を歩くか?」
「私はそれでいいよ。」
「俺も訓練する気分じゃないだろうしそれでいいぞ。」
「俺も。」
「じゃあ決まりだな。」
コンコン
「ん?」
「ベネトさんだよ。‥‥どうぞ!」
ガチャ
「お。やっぱり殿下達もいたんだな。」
「やっぱり?」
「先にレグルスの部屋に行って、いなかったからここかな~って思って来たんですよね?」
「正解だ。マリン。」
「それで、ベネトさんのご用事はなんだったんですか?」
「夕食の準備できたそうだぞ。って言いに来た。」
「そうでしたか。度々すみません。」
「いいんだよ。マリン達は帝国の客人なんだからな。」
「ありがとうございます。あ、ベネトさん。明日の午前中、また帝都を歩くことにしたんですが、ベネトさんも一緒に来ませんか?」
「ここにいる全員か?」
「はい。」
「殿下が行くなら俺も行かないとな。」
「じゃあまた5人でですね。」
「ああ。‥‥そういえば帰るのいつだ?」
「昼食を食べてから帰ることにしました。」
「そうか。分かった。じゃあ夕食食べに行こうぜ。」
「はい。」
そして、帝国での滞在最後の夜が終わった。