番外編:朝のエルフにありがちなこと
※注意!:下ネタです。ほぼ中身のないオマケ話なので、不快に感じそうな方は読まずに飛ばして問題ありません。
「むにゃ……んむー……」
昨晩、ミミと同じ毛布にくるまって眠りに落ちたオセロットは、猫のような声を発しながら床の上で目覚めた。暖かいミミの体温を間近に感じていたせいか、久しぶりにぐっすりと眠れて、寝覚めは心地よかった。
そしてゆっくりとまぶたを開いたオセロットは、目の前に見慣れないものを見た。ミミのネグリジェの一部が、ぬっと不自然に突き出てているのだ。その意味するところを理解した瞬間、彼女は叫び声をあげていた。
「きゃあああああーっ!!」
「ふぇっ!? なっ、なにっ!? じしん? かみなり? かじ?」
飛び起きて、周囲を見回すミミ。口をぱくぱくさせるオセロット。
「あんた、それ……! ちょっ……こっち向けないで!」
「これ……? あー、うん。なんか朝はこうなるんだよ。へんだよね、エルフって。でもすぐ治るよ」
あっけらかんと言って、ミミはねぼけ眼のまま再び毛布を引き寄せる。
一人ぽかんとするオセロットのもとに、やがてリカオンが早足で様子を見に現れた。
「どうしました、オセロットさん」
「リカオン! ミミの……あれ!」
扉のそばに立ったリカオンは、オセロットの指差す先を涼しい顔で眺める。
「単なる生理現象でしょう。私はどうとも思いませんが」
「なんでそんな冷静なのよ! あんた絶対おかしいっ! それともあたしがおかしいの……!?」
無表情なリカオンの顔とミミの股間を交互に見て、混乱した様子のオセロット。
「お兄様のを見慣れていると仰ってませんでしたか?」
「マーゲイのはあんなじゃないもん! ……たぶん。ちっちゃい頃しか知らないし!」
「大声を出さないで下さい、オセロットさん」
「……わかったわよ」
オセロットは声を落とし、ひそひそ声でリカオンに問いかける。
「で……実際のとこ、どうなの? この子……そういう知識あるの?」
「さぁ?」
「さぁ、って……ちゃんと教えた方がいいんじゃないの。何か間違いがあるかもしれないし」
「間違い、とは?」
少しためらいつつ、寝息を立て始めたミミの顔をちらりと見るオセロット。
「……わかるでしょ。いくらこの子が善人だからって、性欲旺盛なエルフの体なんだから。よくわかんないままムラっときて押し倒されたりしたら、あたしたち抵抗なんかできないじゃん」
「ミミ様は人の嫌がることはなさいませんよ」
「……あんたのその謎の信頼はなんなの。そんな長く一緒に暮らしてないんでしょ」
うんざりしたようにため息をつくリカオン。オセロットと話す時の彼女は、ミミと接する時よりも幾分ぞんざいだ。
「あなたこそ、ミミ様とご婚約なされたのでしょう。ご自分の未来の伴侶を信頼されていないのですか」
「だってまだ一日しか……って、なんでもう知ってんの?」
「ミミ様が寝言で仰っておられました」
「あっそ……」
オセロットは鼻にしわを寄せて、リカオンとミミを交互に見やる。
「あー、もういいや。考え疲れた。あたし、他の部屋で寝直すわ。こんなお屋敷だし、どっか空いてるんでしょ?」
「客間は廊下の突き当たりです。あなたのお部屋も明後日には支度できるでしょう。ご実家から荷物を運ぶよう手配しておきましたから」
てきぱきと言って、リカオンは廊下を歩き去る。その背中を見おくりつつ、オセロットもはぁとため息をついた。
「それはどーも、用意のいいことで。……ミミ、おやすみ。」
「ふにゅー……うーん……トイレ……」
ぱたんと扉が閉じられ、二人の伴侶候補が出ていった部屋で、ミミは毛布にくるまってすやすやと寝息を立てるのだった。