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言葉にふさわしい人間になりました。

作者: 健康っていいね

『愛しいあなたへ』





「バカ」と呼ばれた。


私は「バカ」にふさわしい人間になった。



「キチガイ」と呼ばれた。


私は「キチガイ」にふさわしい人間になった。



「出来損ない」と呼ばれた。













「無能」

「クソ」

「不細工」 「雑魚」 「アスペ」

「恥ずかしい奴」

「死んでしまえ」 「来るな」

「居なくていい」

「邪魔」 「ビッチ」 「ゴミ」

「マヌケ」 「障害」 「キモイ」

「最低だ」 「失望した」











私はそれらの言葉に、



周りが私を想って発してくれたその言葉にふさわしい人間になった。



私が私を語るほどに、”私”から離れていくのは何故だろう?





私の『夢』や『理想像』なんてモノは正に「役立たず」で、


それこそ


「ゴミ」のように、

「塵屑」のように、


何の「意味を持たない」。





何故ならそれらは、現実とはかけ離れた「都合のいい偶像」だから。



不安定な理想像。根拠の無い夢。



それらは、実在しないからこその嘘。偽り。



現実にいる私達とは、全くの他人。



ましてや人ですら無い、ただの妄想。



現実逃避。





現実だけが真実なら、そんな物より言葉の方が確かだ。



言葉の方がよほど、自分を構成する重要なファクターに成り得る。




私は、私に向けられた意味の無い言葉にふさわしい人間になりました。






さぁ、夢や理想、


不確定で不安定な明るい未来は置いといて。






あなたはどんな言葉にふさわしい人間に成るのですか?



この世界には、いくつもの言葉がある。



多種多様の言葉は、”私やあなたのためだけに在る”。



そこにあるのが、


うるさい言葉なら耳を塞いでもいい。


そこにあるのが、


見たくない言葉なら目を瞑ってもいい。



自分にとって都合のいい言葉だけを拾うべきだった。







「産まれてきてくれてありがとう」



あなたが笑顔にさせた両親の言葉。




「あなたと会えて本当に良かった」



あなたが大切にした友達や恋人の言葉。





「あなたのお陰で助かったよ」


知らない人からの感謝。





「俺たちの冒険はここからだ!」


ゲームの中にいたヒーローの言葉。





「私達はもう、負けない!」


漫画の中にいた少女の言葉。





「君を応援しているよ」


尊敬している人が背中を押してくれた言葉。





「どんな底の底まで落ちても、大丈夫俺たちはそんな君たちのために歌うから」


最近ハマりだした、バンドのボーカルが放った言葉。





「ありがとう」


「おめでとう」 「天才!」

「凄い!」

「大好き!!」

「素敵!」

「綺麗!!!」 「かっこいい!!」

「かわいい!!」 「素晴らしい!!」









これらの言葉は全て、私に向けられた言葉じゃなかった。









そう。この言葉は私に向けられた言葉じゃない。



別の誰かに向けられた言葉なのかもしれない。



誰かの独り言かも知れない。



寂しい人が、自分自身に向けた言葉なのかもしれない。





それでも、これらの言葉は私達の為に存在している。これらの言葉は、あなたがあなたらしく在るために存在している。





言葉は積み重なる。人間を形作る。



私が私自身をそう説き伏せてきたように。



これらの言葉は私の独り言だ。



私の妄言だ。気休めだ。



私という他人の言葉は、





あなたにとっての意味を成さない。




あなたにとっての本質を見出さない。




あなたを本当に変えることはきっと出来ない。




それでも私は他ならぬ愛しいあなたに向けて、この言葉を贈ります。




「 愛しいあなたへ


私はあなたがあなた自身を誇れるその日を待ち望んでいます。

私の言葉があなたにとって本当の意味を持たないように、今まで私やあなたに与えられて来た言葉にだって意味は無いのかも知れません。だから、だからこそ。あなたが前に進む為だけに与えられた言葉を信じて下さい。そしてあなた自身の言葉で、あなたを定義して下さい。そうしていればきっと”その言葉にふさわしい人間”にだってなれるはずです。


「愛しい」あなたは、「勇気に満ちた」あなたは、「優しい」あなたは、「美しい」あなたは、「かっこいい」あなたは、「かわいい」あなたは、「夢のある」あなただけは、あなた自身のことを信じてあげてください。


ありがとう 」

























以上が、


今朝湖の底で死体となって発見された、行方不明だった15歳の少女が書いたと思われる遺書の全容です。





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