憂鬱
「見れば見るほどゲームのステータスにしか見えなくなってきたな…」
しばらくの間、不自然に目の前に浮かんでいる半透明な板を眺めていると、所々おかしなところがあることに気が付いた。まず、種族名と名前がおかしい。
「alter…?アルターって読むんだっけ…?なんでalterなんだ…?僕の名前は…名前…?」
名前が思い出せない。少なくともalterではないことは覚えている。しかも、思い出せないのはそれだけではなかった。「住んでいた地域も、家族や友達の名前すら思い出せない…」
日本に住んでいたことや、好きなアニメ、そしてここに来る直前の記憶はあるのだが、それ以外の記憶が全く無い。明らかに異常事態だった。
「なのにどうして僕はこんなに冷静なんだ…?まあ、とりあえず、記憶のことは後で考えるとして…今はステータスだな。」次に…精神力の数値だ。
「明らかに高すぎる…」文字通り桁が違うのだ。「そもそも、精神力って何なんだ…?」
生命力はおそらく、尽きると死んでしまう数値、魔法力は魔法を使うのに必要なんだろう。
だが精神力は…何に使うのか全く見当もつかない。「とりあえず、精神力について考えるのはやめよう。」考えてもわからないのなら考え続けても意味はない。
「あとは…物理防御力と運命力が低いのは…まあ、予想はできることだな…」逆に、ひょろひょろした体に防御力があるとは思えないし、こんな意味の分からない状態に陥っている時点で運がいいはずもない。最後にスキル。これを見れば自分がどんな人間で、どんな生活をしてきたのかが分かると思っていたのだが…「暗殺術と剣術ができて、精神汚染に耐性があって、寝ると回復できて、機械操作ができて早読みができて現実逃避が得意で持続回復ができるうえによく分からないリミットブレイクなんてスキルを持ってる人間って…どんな奴だよ…」もしもそんな人間がいたら会ってみたいものだと思うが、そんなスキル構成をしているのが自分なのである。
「リミットブレイクってスキルなんだよね…?」1つだけ毛色の違う名前なのが気になった。
すると、板に書かれている言葉が一瞬で変わった。今度はこうなるとなんとなく予想は出来ていたのであまり驚かなかった。
リミットブレイク:体の制限を一時的に解除して身体能力を極限まで高める。(だが、制限を解除して行動している間は凄まじい痛みに襲われ、スキルを解除した後は体にダメージが残る。)
ろくでもないスキルだった。なぜ自分はこんなスキルを持っているのか。
「完全に自爆系のスキルじゃないか…」しかも自分は持続回復のスキルを持っているようで、回復もできるというのだから余計にタチが悪い。「要するに、困った時はこのスキルを使えということか…」
また明日投稿する予定です。