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一筋の光明

 突如現れたカイトに俺は言葉を失う。俺が混乱していると、俺に視線を向け、口を開いた。


「双星の勇者ユウセイ、お前はどうしてここにいる?」


 友好的な言葉では無い。突き刺すような眼光が俺を貫く。


 表情は険しく、半分の疑問と半分の敵意……俺への対応を決めかねている。この状況で他国の勇者がいるのは、良くは映らない。


「話すと長くなる……今は、カイトに協力したい」


 数秒の後、カイトの表情は和らぎ振り返る。


「信用じゃない、今は奴らを倒すのが先だ」


 俺が答えようと前に出ると、手で静止される。首で軽く後ろに視線を誘導されると、ルナたちが映った。


 俺は理解して、側に駆け寄る。カイトの気遣いに乾いた声が漏れるも、気を引き締めて正面に立ち塞がる。


「カイト……ありがとう」


 聞こえたのか聞こえないのかも分からずに、カイトは姿勢を低くし、次の瞬間土煙を上るほど地面を蹴り上げた。


 集団は驚くが、尚も怯まず押し寄せた。


「カイトさえ討ち取れば、後は楽勝だ! 数で押せ!」


 集団のリーダーの一言で一塊になった大群が、カイトに襲いかかる。しかし、カイトは怯みもしない。


 闘気が切っ先から吹き出し、踏み込みと同時に逆巻く海流が刀身を行き交う。寄せ来る敵を巨大な刀身で振り払い、時にはその拳で吹き飛ばして行く。


「演舞海ノ舞……断流(だんりゅう)(さざなみ)!」


 振りかぶる刀身から、吹き出した海流が敵軍を飲み込んで行く。押し流しうねりを上げる。


「ぐ……くそ、この程度で……」


 カイトは追撃の手を緩めない、大剣を後ろに構えると、戦場を駆け抜け、後方の大群に向かいその刀身を叩きつける。


「演舞海ノ舞……渦潮波狼(うずしおはろう)!」


 刀身から放たれた波が渦を巻き、敵を飲み込みながら進んでいく。


「う、うわああぁああーー!!」


 敵の部隊は断末魔を上げ、総崩れになる。何とか立ち上がろうとするも、後方から海王軍の部隊が駆けつけてくる。


 押し返すように進軍して行き、勝敗は決したと言える程になった。もう心配は要らない、戦況は好転し、敵の戦意も削がれて行く。


 安心すると、俺はため息を吐き、座り込んだ。


「ルナ、お前たちは大丈夫か?」


 ルナもソウルもボロボロで、分かっていても、数でここまで押されるとは、想像していなかった。

 

「何とかと言った状態です。しかし、安心はできません。この騒動は、私たちが思っているよりも深刻な事です」


「ヴィーナスの偽物が出た話か?」


 俺の言葉にルナは頷く。


「俺たちの知らないところで、暗躍してる“誰か”がいると見ていいんだな?」


「間違いありません。この戦争でその者たちを炙り出します」


 周囲を見渡しても怪しい人物など見当たらない。息を潜め、時を待っているのか? 最終的な目的が見えない。


 答えに出ない問答に少しの怒りを感じながら、拳を握る。


 俺の思考が決着する前に、ソウルが動き出す。震える体を何とか制し、口を開いた。


「もうそいつらは、いない……今は生き残ることだけ考えよ」


 ソウルに言われ周囲を見渡すと、戦況は落ち着き、魔族は撤退して行く。カイトは大剣を収め、こちらに向かってきた。


「怪我は大丈夫か、問題ないなら話を聞かせてもらおう」


 カイトの言葉にルナが反応する。俺の前に立ち、遮るように見据えた。


「お言葉ですが、ユウセイは怪我を負っています……少しの時間を下さい」


 その問いに顔が険しくなり、ルナに対し言葉をかけようとしたので、俺は口を開いた。


「このままで大丈夫だ……俺は逃げもしないし、隠れもしない」


 肌に刺さるような空気が和らぎ、少しだけ場が落ち着く。


 ルナもこれ以上は口を出さず、俺はありのままを語った。


 ソウルのこと、鷹侯ファルホークのこと、偽ヴィーナスが現れそれを倒したことまで話す。


 カイトは頭を抱え、大きめの溜息を吐くと、砕けた表情で口を開いた。


「ああーー、もう知らん! 鷹侯も鷹侯だ! 気に入った相手を見つけるとすぐこうだ」


 頭を掻きむしると、複雑そうな表情で俺たちを見つめる。


「俺は安心していいのか?」


「好きにしろ……俺は何も見ていないことにする。こんな事なら、連れてくればよかった」


 カイトが完全に戦意を喪失すると、俺は横になり、空を見上げる。


「ユウセイ、髪に砂が着きますよ! 勇者ともあろうものが、だらしないです」


「構いはしない、カイト以外誰も見ていないし、見られたところで言い訳はある」


 ルナの指摘を無視し、今日の出来事を整理する。


 勇者の力を持ってしても、大軍には押し負けてしまう。


 叩くなら、各個撃破の一対一を作る必要がある。


 勇者の力は万を超える戦力に匹敵する。生き物である以上限界はあし、助けが見込めない以上……手詰まり感があるのも事実だ。


「ユウセイ、話を聞いていますか?」 


 考え事の最中にルナが声をかけて来た。何かを言っていたらしいが、俺は何も聞いていない。


「何とか聞こえているぞ……多分」


 ルナは俺の返答に覗き込むように視線を向け、口を開いた。


「私たちはこの戦争に関与せず、裏で動いている者を叩きます。戦争を利用して、企む者の姿が見え隠れしている」


 カイトは口を挟む気は無く、ルナの話は続く。


「ですので先を急ぎましょう……敵は狡猾(こうかつ)です。隙を見せるのは、無理に動く時、そこを狙います」 


 話を終えると、手を差し出し俺に立ち上がるよう促す。その瞳は決意に満ち、表情など変えなくとも俺には十二分に伝わった。


 ーー俺はその手を取り、立ち上がる。


「そうだな、こんな所で立ち止まっている暇は無い」


 ソウルの首を叩く、それに反応し、首を上げ翼を広げた。


「我はいつでも構わんぞ、双星よ」


 俺たちは飛び乗り、ソウルは一気に飛び上がる。上空から見渡し、周辺の戦禍を確認する。


「ユウセイ、一つ心当たりがあります。この近くで一ヶ所だけ、攻め込まれていない町が有るのですが、そこに行ってみませんか?」


 突然の提案に俺は疑問を抱くも、目的地は決めていない。


 カイトとの話にあったのか? 怪しさと、罠の気配は言うまでもなく伝わる。


「どうするのだ勇者よ」


 ソウルも催促し、悩む時間も惜しいのでその提案に乗ることにした。


「分かったそこに行こう」


 次の目的地を定め、俺たちはそこに赴いた。

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