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猛禽の王

 俺たちは鷹侯(たかこう)の城の目の前まで辿り着いた。目と鼻の先で、500メートル先には大きな城がそびえ立っている。しかし、立ち往生を余儀なくされている。


 目の前には入り口の看板が立っているが、道などどこにも存在しない。切り立った崖、下は底が見えず、全てが理解の外にある。


「ルナ……実は道が城の後ろ側にあったりとかしないか?」


「現実を見なさい、私たちはもう二周もしています。また一周するつもりですか?」


 思わず乾いた笑いが込み上げそうになる。と言うかもう笑うしか無い。


 城の周りは深く抉れ、まるで宙に浮かぶ難攻不落の要塞。せっかく海を渡り、山の頂上まで登ってきたと言うのに、コレでは攻める方も心が折れると思われる。


「直径4Km位……大きな島ではありませんが、要塞としての機能は語るまでも無いですね」


「感心してる場合かコレ……飛行魔族が多いとは思ったがここまで徹底するか?」


 視線をルナに向けると、『お前も感心してるだけだろ』と言うような視線が突き刺さる。


 いや、ルナはそんな言い方はしないが、半開きにした眼とどこまでも真っ直ぐな口元が言葉よりも辛辣(しんらつ)に語っている。


「……どうやら迎えが来たようですよ」


 ルナの視線の先を見ると、大きな翼を羽ばたかせ、五人の飛行魔族が飛んでくる。地上に降り立つと、一礼をして笑顔を向けられた。


「初めまして他国の勇者様、お二人の話は承っております。お連れしますので、このネットにお座りください」


 そう言われるとハンモックのような網を四人がかりで持ち上げた。投げ得るような動作に面をくらい一瞬戸惑うも、直ぐに気を引き締める。


「ありがとう、丁重にお願いする」


「お願いしますね、翼の方々」


 俺たちが網に座り込むと、一人の先導の元四人が飛び立つ。高度は見たことの無い高さまで到達し、絶景が広がる。


 雲に手を伸ばせば届くにでは無いかと言う高さに、年甲斐もなく心が躍るのを感じた。いや、まだ17歳なので変かもしれないが、子供のよなワクワクは別か?

 

「どうですか、絶景でしょう? なかなか好評で、コレに乗りたくて来る者もいるくらいです」


「確かにそうだ……いいなコレ、帰る前にもう一度楽しめるのか」


 色々なところに視線をやり、満喫していると裾を引っ張る仕草に我に帰る。見るとルナが指を刺し、そこには大きく太陽の日差しで輝く海が広がっていた。


「世界は広いですが、これだけ広い海を観れるのは海王諸侯同盟(この国)くらいなものです」


 どの景色もいいが、こうしていると日頃の戦いは幻だったんじゃ無いかと勘違いしそうになる。無論そんなはずは無いが、平和の1ページに心揺れるのはいつの時代も変わらないだろう。


「そうだな……なんとしても守ろう。この景色も日常も、その先を」


 しばらく飛び続けると、城の頂上付近で降ろされる。不思議に思い、辺りを見渡す。


「ここは客人の間になります……どうかなされましたか?」


「いや、もしかして……ここには階段が無いのか、飛行のみでしか辿り着けないとか?」


 言っていいのか分からないが、素直に疑問を口にした。入り口の作り方も基礎規制がなく、生活性より守りに特化した印象が有る。


「よく気づきましたね、その通りです。この城は飛行魔族(われわれ)の介入なしでは移動もままならない不落の城です」


 胸を手で抑え誇らしげに城の仕様を語ってるが、喋ってしまって良かったんだろうか?


 嵐のような強風時に、どう言った移動をするのか気掛かりだが、さすがに対処(たいしょ)は何かしらあるのだろう。


「飛行魔族はその翼に誇りを持っています。その現れでしょうね」


 強弱のない声でルナが説明する。その視線は、扉の向こう……溢れ出る闘気の方角を見つめていた。


 勇者魔王以外でこれほどの闘気を見たことが無い……まあ戦闘時でないにも関わらず、これだけの殺気を放つのはいかがなものかと思うがな。


「ではお連れします……鷹侯、客人をお連れしました」


 2度ほどノックをすると、『入れ』と声が聞こえて来る。俺とルナは顔を見合わせ、開く扉の先に視線を送る。


「よお、俺様がここの領主で諸侯が一人…… ファルホーク・レイ・ブレイバードだ」


 ……第一印象はカイトを超える大男。


 身長は2メートルより更に大きい、鍛え抜かれた屈強な手足。身体中に刻まれた傷が、歴戦(れきせん)を証明している。貴族と言うより戦士の方がしっくり来る。


「俺はユウセイ、こっちがルナ……聞きたいことは山ほどあるが、まずは黄金の魔王ヴィーナスのことで構わないだろうか?」


「おう、あの小娘にはこっちも手を焼いていてな」


 仮にも魔王に対し、手を焼く“程度”と言うべきか?


 さらに意見を出そうとした時、ルナが間に入り込む。何か考えがあるのか、魔道具の収納袋を(まさぐ)り中から大きな(たる)を取り出した。


「少しいいですか、こちらアースラ王からです」


 鼻腔(びこう)をくすぐる強い香り……酒の匂いだ。ファルホークは瞳孔を広げ、強い反応を示す。


「ガイア王国名産“龍殺し”……飲めば龍すら酔い潰すと言われる脅威のアルコール度数を誇ります」


「知ってるぜ、あの嬢ちゃんも粋なマネしてくれるじゃねえか!」


 察するに酒好きか、しかも酒豪と来た。嬉しそうに笑みを浮かべ酒樽をバンバン叩く。


「侯……そろそろ話を進めませんと」


 我に帰り案内人を下がらせる。


「正直お前たちが手に入れた情報と差異はない、知らない事件が何件か報告されいる程度だ」  


 マークされた地図を受け取るも、そのやりと取りでも俺たちは有力な情報を得られなかった。話も十分とし、帰ろうとした時ーー。


 外から転がるように、傷だらけの魔族が飛び込んできた。


「侯……敵襲です、黄金の魔王……現れ」


 そこまでいい、飛び込んできた男は倒れ込む。ホラガイを吹くような低い音が城に響き渡る……戦闘準備を完了した兵士が次々に舞い込み、隊列をなす。


 ファルホークは仲間を優しく起こし、その言葉の続きを促す。


「メバツの港に……魔獣の群れ多数……」


「もういい喋るな、よくここまで伝えてくれた」


 音が鳴るほど拳を強く握りしめ、修羅のような形相で振り返る。


「聞いたかテメエら! 奴らは再び攻め込んできた……第一部隊はアシンリエ、カイトに報告。のこりは俺様について来い!」


 予想以上に早い進行……このまま戦乱が大きくなるのは見過ごせない。


「鷹侯……俺も連れて行け」


 一瞬戸惑うような視線を向ける……だが迷いはしなかった。俺たちは飛び立ち、一直線に戦場に向かった。

 

 


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