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燃え盛る炎の翼

 炎鷹(えんおう)に向かい、一直線に距離を詰めて行く。


「演舞日ノ神楽……閃火螢日(せんかほたるび)


 刀身が強く光を放つ……刹那に燃え上がり、その勢いを増す。


「演舞(えん)ノ舞……翔下(しょうか)炎鷲(えんわし)


 剣を高い位置から振り下ろし、乱暴に叩き付ける。ぶつかり合う剣技は炎同士が押し合い、相手の炎を飲み込もうと燃え盛る。弾かれ合い、回避するよに待避した。


 炎鷹の攻撃は苛烈を増して行く。我を見失うほどでは無いが、怒りに呼応するように力がこもる。


「本気で来い炎鷹、今にお前には全力を感じない」


「挑発のつもりか? 仮に私が力を隠していても、貴様の力では越えられはしない」


 俺が弱いから、炎鷹は隠している本気を出す必要すら無い。どうする……今のままでは響くどころか、力を引き出す事すら出来ないのか?


 ふと炎鷹の鎧の隙間からヒモのようなものが見える。揺り籠(クレイドル)のヒモだと理解するのに、コンマ1秒もかからなかった。それを見た時、脳裏にカグラの姿がチラつく。


「そうだよな……まずは()()剥がす。閉じこもっていたら、聞こえるものも聞こえないな」


 炎鷹は迎え撃つようにその場から動か無い。


 俺は闘気を練り上げながら、床を大きく蹴り上げる。速度は十分……魔力も満ちている。


「馬鹿馬鹿しい、貴様の戯言に付き合うのは沢山だ。焦がせ、フレアウイング」


 燃え上がる2メートル級の巨大な翼が、垂直に飛び立つ。


「演舞日ノ神楽…… ゆらり揺らめく日ノ虚い、踊り引き裂く見えざる刃ーー薄刃陽炎(うすばかげろう)!!」


 剣を振りかざし、刀身をぶつける。熱気が伝わり、手に熱さが生まれるも引きはしない。


「演舞炎ノ舞……背中を押すは導きの風、夜明けの空に雄々しく飛び立つ、飛翔の炎鷹(えんたか)!!」


 下から突き上げるように炎の鷹は迫りくる。これを許せば、間違いなく俺は負ける。


 熱は十二分、刀身を滑らせ、炎の揺らめきを発生。俺の姿は消え、連続した金属音が鳴り響き、見えざる刃が炎鷹を強襲する。


「これは……貴様、っく」


 危険を察知し、炎鷹は半歩後ろに下がる。甲冑に複数の切断面が入るが、浅く内部までには届いていない。高く響く金属音と共に、再び剣と剣が鍔迫り合いとなる。


「どうだろう……俺はまだ足らないか?」


「……何の話だ」


 そのままお互いに半歩下がり、刀身を打ち合う。


 右からの振りかぶりにこちらも剣を持ち替え、振りかぶる。鈍く高い反響音が鳴り、刀身同士が幾度となく反響し、戦いは速度を上げて行く。そして後ろに一歩引くと、お互いに闘気を込め、それを放つ。


「演舞日ノ神楽……烈火旭」


「演舞炎ノ舞……旋回(せんかい)炎鳶(えんとび)


 再び同じ技の激突。翼を纏い燃え上がる刀身を振りかざし、空から強襲するようにぶつかり合う。燃え上がる鳶は、炎の刺突を受けるも、それを炎でいなして行く。


 やがて閃光の如き突きが放たれ、二つの力は宙にて炸裂する。 


「押し負けた技で挑んで来るなんて、負けず嫌いもいいとこだな」


「どう取るかは貴様の勝手な解釈だ……一々私に同意を求めるな」


 一向に戦いは平行線を辿る。拮抗し、良くも悪くも片方に揺れる事はない。


 刀身を弾き合い、戦いに比例して行くように刀身の炎は輝く。彩り、うねり、煽られ、形を変えながらお互いを喰らい合う。


「お前が何を考えているかは分からない……それでも伸ばした手は届かせる」


 神託が強く輝く……俺は前のめりに斬りかかり、刃を押し込んでいく。


「っぐ……つけ上がるな偽善者が」


 炎鷹が一歩下がろうとする。俺が一歩詰める。


 このタイミングで逃しはしない。俺は力を込め、闘気を注ぎ込む。


「演舞炎ノ舞……暗翼(あんよく)炎梟(えんふくろう)


 黒い炎の翼を羽ばたかせ、炎鷹は後ろに大きく飛ぶ。


 俺は全身に力を込め、炎翼から落ちる火の粉を払い、小刻みに飛び、両の眼で実体を捕らえる。


「演舞日ノ神楽……日炎(ひえん)極円光(きょくえんこう)


 刀身から放たれる光が、舞い散る火の粉を吹き飛ばして行く。


「火の粉が……かき消された」


 もう行く手を遮るものはない……このまま断ち切る。あの黒い翼を払い、その素顔を曝け出す。


「ビレト、これ以上逃しはしない!!」


 何度も下がる方向を変え、剣で弾き、角度を変え下がって行くも、少しずつ距離を詰めて行く。やがて翼で体を包み込み、完全なる守りの態勢に入った。


「偽善者がこれ以上私に近づくな」


 円を描くように剣を回す。切っ先から流れ出た光が円を形取り、全てが注ぎ込まれる。光は一層強さを増し、解放の瞬間を待つ。


 俺は両手の力を込め、円を全力で斬り付ける。弾かれ、瞬きの間に話の中心を炎鷹を通り過ぎる。


「く……一体何を、きゃああ」


 両翼は焼き切れ、甲冑の頭が割れ、バランスを崩し倒れ込んだ。俺は追撃はせず、その様子を見守る。


「やはりそうか、炎鷹……お前の本当の名を聞きたい」


 炎鷹は訳もわからず顔を押さえる。しかし違和感に気付き、こちらを睨み付ける。


 肩より少し長い赤色の髪、そして青さを持たない両の目。キツめの目付きに整った顔立ち。その少女は、噂とも似つかぬ容姿。言動がおかしかった点からも薄々分かっていたが、それが確信になる。


「誰がと言いたいところだけど、ロッカ・ヴォル・フェニックスよ」


 周囲で湧き上がる騒ぎは一旦置いておくことにする。


「酷い人ね……コレが狙いだったの?」


「半分はそうだ……もう半分は顔が見たかった」


 その発言に眉を寄せる。不快感とは行かないまでにも、機嫌が良くないのは想像に難くない。冗談に付き合う気はなしか……。


「そう……いいわ、もう過ぎた事だもの」


 炎鷹は次々に甲冑を落として行く。やがて赤を基調とした装衣が姿を現し、落ちた甲冑から戦斧を取り出す。


「私の本気、見たかったのよね? 味合わせて上げるわ、その五臓六腑(ごぞうろっぷ)にね」


 恨みを買ったようだが、本気させる事には成功したようだ。さっきと比べ明らかに隙が少ない。コレが本当の戦闘スタイルらしい。


 お互いが睨み合ったまま、戦いは次のステージを迎えた。

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