共鳴
太陽、俺の脳裏に浮かんだ言葉は、しっくりきた。勇気の神託は尚も強い光を放つ……アースラの神託の輝きに共鳴でもするかのように……。
「双星としての力が覚醒しつつあるようです」
ルナは俺の右手を取り、手の甲を確認する。
「……神託は左手だぞ?」
「そうですね。その認識で間違いないです」
掴んだ手をそっと離し、視線を戻す。意味が有り気な言葉を残し、それ以上は語らなかった。
双星としての力とは、明らかに俺の事を指している。アースラは知識の神託のから情報を得て、実践してる感じか?
ルナが答えを言わないって事は、意味が有る。勇気を出せと誰かに言われたところで、不可能な話だ。意図に気付いてしまった時点で、手遅れな感じはするものの今は雑念を捨て、この戦いを見守るしか無い。
「これは少し不味そうだな」
ここでカイトが一気に距離を詰める。近くで落とせば爆炎に呑まれ、致命傷は免れ無い。
「そう来ると思ったよ……根性論など眉唾物だが我慢比べと行こうか!!」
アースラは左手を振り下ろし、カイトと自身を巻き込むように爆炎が飛散する。その衝撃は凄まじく、暴れ回るように円を描く炎は地上に落ちた太陽を連想した。
「おい……これまずいんじゃ無いのか」
「流石に……ユウセイの無茶な性格は伝染していなと思いますが?」
ルナは俺をどんな目で見てるんだとか、ツッコミを入れたいところだが……今はそれどころじゃ無い。俺は唾を飲み、その行く末を見守る。
周りの視線が集中すると、湧き上がる熱と晴れる煙の中、ユラユラとアースラの姿が現れる。煙の中カイトが一振りし、掻き消された中に姿を現した。
「幻影いや……蜃気楼か? 危うく騙されるところだった」
カイトは軽い咳払いをし、事の顛末を連想する言葉を吐く。
「私は完全に騙せたと思ったんだがね。あそこで反応するか?本当に野生の獣じゃ無いか……君の恐ろしさには舌を巻く」
戦いは拮抗……してない。
ここまでしてやっと食らいつく程度。アースラの息遣いも荒くなり、勝負は長引く事はなさそうだ。
「やっとらしくなってきた……まだまだ行けるだろ?」
顔を流れる汗を拭うと、カイトは少しだけ口元が緩んでいた。
ふと思う、本人は自覚して無いかもしれ無いが、本気で戦える相手は限られる……ならこの戦いに充実感を覚えるのも真理かもしれ無い。
「冗談を言うな、もう疲労困憊、満身創痍だ。役目は充分果たしたし、適当に降参するよ」
両手をヒラヒラと振り、降参とも取れるような手振りをする。
「疲労こんぱい?ようは疲れ切って動け無いって事か?」
「そうだねえ……もう降参しようかな?」
戦意の削がれた発言に、カイトは更に強く剣を構える。
「それは無い、アンタの闘志はまだまだ燃え上がってるし、今も魔力を注ぎ込んで反撃を伺っている」
目を細めるようにアースラを鑑みる
「獣……半分冗談だったが、筋金入りだね君は」
最早呆れる言葉しか出無いが、その心境は正反対なのは違いない。
「アンタこそ随分とアイツを買ってるんだな?」
カイトがこちらを見ながら、意味ありげな発言をする。一方のアースラは、鼻で笑うように首を横に振る。
「いずれ君にも分かるさ……今はまだ未熟だが、いつか私たちを引っ張ってくれる存在になると確信している」
アースラは右手をかざし、溜め込んでいた魔力を放出する。
「大地よ荒ぶれ、あの者を拘束せよ、アース・バインド」
床より次々と岩の手が出現し、カイトをつかもうと地面より次々と岩の手が出現し、襲い掛かる。20を超えるであろうその数は動きを乱しながら、押し寄せていく。
「良いぞ……息切れが治まり、動きにキレが戻ってきたな」
歓喜の言葉と共に床がめり込むほど蹴り上げる。
左から二本右から一本接近す手を僅かに早い右手を瞬時に両断し、左からの手を無視して接近……前方からの一本に誘導し、直撃させる。
後ろに回り込んだ三本と先程の一本が合流し、左右二本ずつ前方二本上空から四本と、包囲するように一気に襲い掛かる。
「演舞海ノ舞……断流漣」
剣に闘気が纏い、渦巻くように付加された一撃が無数の手を薙ぎ払う。岩は砕け散り、破片が周囲に飛散する。
「まだだ……一斉に飛び掛かれ!!」
剣を振り大振りとなったカイトに、残りの全て……三本が床を突き破るようにカイトを掴む。重なり合い、絶対に話すまいとミシミシ握り締める。
「はああああぁぁーー!!」
しかし雄叫びと共に腕にヒビが入っていく、巨大な岩の塊を筋力だけで吹き飛ばす。
「演舞地ノ舞……物語ノ章、日の鳥!!」
千切れたページより燃え上がる翼を羽ばたかせ、全身を炎の羽毛で包んだ羽が飛翔する。闘気に満ち溢れ、多くを注ぎ込み、生み出された鳥はカイトに向かい急転直下で強襲する。
「演舞海ノ舞……深海流波飛沫!!」
大剣を深く構え……海流が逆巻き、血管を浮き上がらせる握力が、全身へと伝わる。強い踏み込みと共に、渾身の一撃が放たれる。
生み出された海底を突き上げるようなエネルギーは、衝撃となり目視ができるほど具現化し、海面を突き上げる息吹となって噴き出す。竜と不死鳥はぶつかり合い、重なり合い、競い合うように天へと登っていく。
「うおおおおぉぉーー!!」
「はあああぁぁーー!!」
演舞が2人の咆哮がこだまし、戦いは終幕に向けその炎を色濃く燃やしていった。




