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円卓のワルツ

 俺は来た道を戻り、待ち合わせ場所へと歩を進める。それほど遠くは無いが、大きく時間を取られてしまった。


「すまん、遅くなった」


 そこには腕を組みながら眉を吊り上げ、口を尖らせたアースラと、澄ました顔でジッと待ち続けるルナが立っていた。


「全く……長くなりそうなら言ってくれ」


「まあまあ、良いではありませんか……まだ時間の余裕は有りますし」


 痺れを切らしたアースラをルナが宥める。


「君は双星に甘すぎるぞ? もっと厳しくしてやれ……癖になる」


「そうですか? そこまで言うなら今後は注意してみます」


 流すような視線でこちらをみてくる。コレはアレだ……絶対に聞き流してるヤツだ。


「皆さんお揃いですね……では案内いたしましょう」


 白装束を着た男が俺たちの前に現れる。その表情は笑顔を絶やさず、常に笑い続けている。俺は一瞬だけ戸惑う。


「あ、申し訳ありません双星殿。私は今回司会役を務めさせていただきます……アポストルと申します」

 

 アポストルが一礼し、姿勢を起こす。奇妙な点はない……しかし言葉には表せない違和感を覚える。


「こちらへどうぞ」


 見上げるほどの巨大な扉……この向こうに円卓が組まれ、頂点が並んでいる。


「ついにここまで来ましたね……あの夜から、貴方は立ち上がり、もがき、己を奮い立たせてきました。緊張しますか?」


 俺は目閉じる……ルナの言葉が脳内でこだまし、かつての光景が蘇る。あくまでコレはスタート。始まりに過ぎない。


「いや、意外とそうでも無い、懐かしいとでも言うのか?少し楽しみなんだ」


 思い返せばキリはない、ゆっくりと瞳を開け、その扉に手を当てる。すると神託が光始め、扉が床を重く引きずりながら振動と共に開いて行く。


「……これは」


「おや? ご存知なかったのですか? 私としては知っている物とばかり」


 俺の後ろにいるアポストルの表情を汲み取ることはできない。見たとして、読ませてはくれないだろうが……いや、それよりも今はこの先へーー。


 そこに広がるのは円卓を囲み、始まりを待ち続ける者たちがいた。語るまでも無く、会場から伝わってくる空気はピリピリとし、穏やかではない。


「そこのアンタ……突っ立って無いで、早く席に着いてよ。アタシも忙しいんだけど?」


 声の方を見ると、青い眼、緑色の髪に、横に長い耳、ポニーテイルの少女がテーブルに肘をつき、こちらを睨み付けていた。


 エルフか? 初めて見るが、なるほど……人族に分類されるだけあって、大きな相違は見られない。


「木弓はせっかちだな、あんまり余裕が無いと……舐められるぞ?」


 木弓が睨みつける先を見ると、水色で短めの髪を後ろに流し、クスクスと笑う男の姿があった。よく見ると髪は若干ウエーブがかかっていて、癖っ毛に見えなくも無い。開いた瞳は青。


 消去法で言えばこの男が水豹で間違いないのだが……国の代表は何処だ?

 

「よう、導きの双星。僕はシスイ・フォン・ウォータルだ。よろしくな?」


 視線を向けると、屈託の無い笑顔で手を振っている。その姿に違和感はなく、好青年としての姿が印象的だ。


 気になると言えば、何やらカラッとした喋り方をする。癖なのか?


「聞くに耐えんな……貴公らは児戯(じぎ)の延長線上に居るつもりなのかも知れぬが、このような醜態(しゅうたい)では意義も見いだせぬ、嘆かわしい事だ」


 火焔帝国皇帝は嫌味を聞こえるように呟いた。木弓が睨みつけるも、一方のシスイは笑顔を絶やさず嫌味など聞こえないようなそぶり、それに対して皇帝は苦虫を潰したような顔をする。


「はい皆さんそこまでです。ガイア王国ご一行様がお見えになられたので、着席後自己紹介からさせていただきます」


 俺たちは案内されるままテーブルの席に着く。


「申し訳ありません……従者の方は後ろに立っていただくのが通説でして、ルナ様にはご不便をおかけします」


 どうやら王と勇者で一つずつ用意されているらしく。俺とアースラ座る事になった。


「いえ、ご心配なく……私は大丈夫ですので」


 手を横に振り、ルナが後ろに下がって行く。視線をやると、シスイの隣と、プルートの位置が余っていることに気付く。


「おーい、お嬢さん。僕の隣……空いてるよ?」


 声の方に視線をやると、シスイが椅子を引き、ウインクで露骨にアピールしている。それで何かを思ったのか、ルナがアポストルに振り返る。


「んーー……まあいいでしょう。余っている椅子は使用して構いません」


 少しだけ考えるようなそぶりをし、妥協するような顔をした。他に従者はいなかったので、それで認めた感じか?にしてもファンとやらは居ないんだな。


「そう言う事なら、お言葉に甘えましょう……失礼します」


「気にしなくて良いよ。さあどうぞって、ええぇーー……」


 ルナはシスイの所に行くと、椅子を持ち上げ、スタスタと戻ってきた。コレには流石のシスイも驚いた様子。空いた口が塞がらないとはこの事だと断言できるほどの表情をしている。


「貴方のような軽薄そうな男の隣は御免被ります」


 一方のルナは俺のすぐ隣に椅子を置き、そこに座る。集中していた視線が俺に集まる。


「注目されいますね……何か言って見てはいかがです?」


 横目でこちらを覗き、俺の様子を伺う。


「ルナ……ワザとだろ? お前の魂胆は見えてるぞ?」


 相変わらずすまし顔。だが俺は表情のその奥を知っている。ふっと思わず笑みが溢れた。


「皆さん静粛にお願いします。今回進行役は私こと、アポストルが努めさせていただきます」


 その最中……扉が音を立てて、開き始める。その向こう側では、笑みを浮かべる男が一人いる。会場の面々は驚く者、静まる者、笑う者に別れーーその様を見守る。


「ヒハハハハッハ!!皆さん長らくお待たせしました。プルート・ヘル・カロン……ご期待に添え、ここに参上です」


 予感はあった。全てがおかしかった以上疑う必要がある。しかし問題はそこじゃ無い。俺は重要な選択を迫られる事になる。



 

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