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神託のディストピア〜導きの双星は虚ろう女神と勇者魔王の演舞を繋ぐ〜  作者: 終わりの詩人
0話 物語が始まる前の話 世界の生い立ち (読み飛ばし推奨)
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やがて神話のプロローグ

 かつて人族も魔族もその線引きのない時代。世界を巻き込む大きな戦乱があった。秩序(ちつじょ)は存在せず、国も無く、略奪、殺戮、支配。想いは砕かれ、血が流れ、尊厳は力の前に踏みにじられ、混沌が世界を覆い尽くす。


 世界の人口の八割が消えた頃……八つの部族の代表が武器を取り、立ち上がる。それに応えるように天から神が降り立ち、一人一人の手に神託を与えた。


 友情、希望、愛情、誠実、優しさ、知識、光、純情を宿した者が星の勇者と呼ばれる。


 星のワルツと呼ばれる大部族同盟が結成される頃、その破竹(はちく)の快進撃により戦乱は終わりを迎える……と思われた。


 彼方より世界の異物が現れた……天への門は硬く閉ざされ、神との連絡は一切が途絶える。


 八つの星は最後の戦いを挑む。


 しかし、その圧倒的力で地に伏せ、暗雲が世界を飲み込んでいく。


 最後の星が地に伏せ、誰もが諦めかけたその時……暗雲をかき消し、眩い光を身に纏い、二つの星をその身に、勇気をその手に宿す……後に語られる導きの双星が誕生する。


 それに呼応するかのように星々は立ち上がる。そして導きの双星は八つの星を従え、己を犠牲とすることで、世界の異物を打ち破った。


 残された者達と八つの星は今度こそ勝利を手にした。


 ーーしかし世界の異物は最後に言葉を残す。


「私は再び戻って来る。輪廻を周り、お前達が私を忘れ、悠久(ゆうきゅう)の時が満ちた時……お前達の前に再び現れる」


 ーー未来に一抹(いちまつ)の不安を残したまま世界は移ろいで行く。


 生き残った八つの星達はそれぞれの部族と国を作った後、世界の中心に天を頂くほどの大きな塔を建てる。そこに中立の機関を設置し、二度と国同士で争いの起きないよう抑止力とした。

 

 平和の象徴とされた塔はヘブンズロード・ソル・トゥールと名付けられ、頂きに天門を配置される。こうして全てが終わり、惑星暦が始まった。それにより世界は、しばしの安寧(あんねい)を手にする。


 時が流れ惑星歴5000年……世界は再び戦乱の渦に包まれていた。


 かつての星のワルツと呼ばれた戦いの記録は風化し……輪廻は周り、神話と呼ばれるほどの年月が過ぎ去る。


 歴史の影に消えて行った真実と偽りの事実を残し、天門は開かず、機関が世界の争いに干渉することはない。

 

 “九つ”の国がそれぞれ睨み合い、手を組み、出し抜き、絶妙なバランスで世界は均衡(きんこう)を保っていた。


 ここに世界の現状を記しておく。

 

 繁栄(はんえい)と知識の国・ガイア王国……九つある国の中で最も豊かであるとされる。月光の勇者を有し、王の采配のもと確固たる地位を築く。人族が多いが、魔族も少なくない。


 深緑(しんりょく)純真(じゅんしん)の国・神樹聖王国……九つある国の中で最も汚れがないとされる。木弓(もくきゅう)の勇者を有し、エルフが住う領地で天を貫くほどの神聖樹が守護する。部外者は入ることすらできない。エルフの聖王が国を収める。国の民すべてがエルフで構成される。


 深淵と逸楽(いつらく)の国・ハデス魔王国……九つある国の中で最も謎とされる。冥府の魔王が支配するも、外交は全て絶っており、全てが謎とされる。


 混沌と絶望の国・ハーシェル失楽(しつらく)国……九つある国の中で最も秩序から離れているとされる国。堕天の魔王が支配し、かつて天界から追放された者たちの国とされる。その多くが翼を持ち、他種族に翼を見られることを嫌う。一部の魔族が多数を占める。


 恵と友情の国・海王(かいおう)諸侯同盟(しょこうどうめい)……九つある国の中で最も多くの種族が住む国。蒼海の勇者を有し。王を持たず、筆頭諸侯が収める。海洋資源が豊富で他国の侵略を度々うけるが、結束力がとても高く、勇者の役目は大きい。諸侯領それぞれで、種族の割合が大きく異なる。


 輝きと憎悪(ぞうお)の国・ウェヌス魔境(まきょう)国……九つある国の中で最も多くの山を有す国。黄金の魔王が支配する。真珠、石油などの資源を持つ海王諸侯同盟に度々戦争を仕掛け、争っている。人族少数、魔族多数。


 不動と闇の国・ユピテル騎士王国……九つある国の中で最も大きく、膨大な戦力を持つ国。黒土(こくど)の魔王が支配する。世界有数の騎士を有し白兵戦において恐るべき強さを誇る。他国との交流はほとんど無く、種族の詳細はほとんど不明。一説には混血が多いと言われている。


 水郡と誠実(せいじつ)の国・水城(すいじょう)共和国……九つある国の中で最も平和を重んじるとされる国。水豹(すいひょう)の勇者を有する。水の都として水の城塞はエルフの神聖樹程ではないにも、多くの侵入者の行く手を阻む。人族が多数、魔族少数。

 

 炎と優しさの国・火焔(かえん)帝国……九つある国の中で最も人種多い国。炎鷹(えんおう)の勇者を有する。常に他国との争いの火種を抱える。火山地帯が主に多く、燃え盛る大地をこえる進軍は困難を極める。魔族は1人もおらず、見つかれば極刑に処される。


 ーーそこにはかつての勇者達が願った平穏はどこにもなかった。伝説が神話へ、神話が暴虐へ消え去った頃……影が再び世界に忍び寄ろうとしている。


 導きの双星はまだいない……勇者の姿も5人しか確認されておらず、世界の異物は少しずつ、確実に世界を飲み込みつつあった。


 だが、歴史は繰り返す……勇気の星は女神の中で眠り、その覚醒の時を待ち続ける。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] このように世界観の設定を一番最初に組み立てることはとても重要です。良作の予感がプンプンします。 [気になる点] 文の表記に気になる箇所が少々あったのでこの話だけ誤字報告で手直しさせていただ…
[良い点] 設定が創り込まれていて、面白いと思いました。正統派ファンタジーとして期待が高まります。文章も読みやすく、これから物語がどう展開するのか気になりました! [一言] これからも頑張ってください…
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