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年間2万人の自殺者達は今日も不眠不休で戦闘中

年間2万人ほどが自殺者として処理されますが、自殺した彼らは今何をしているかというと…生前以上のブラック生活を送っております。



「1人の自殺を止めさせることができれば輪廻転生の輪へ入ることが許される、って言うけど見えない触れられない話せないって無理ゲーじゃん?!


そのくせ助けられなくて次の自殺者出したら自我を失くした悪霊になって元同僚にぶっ殺されるってペナルティーがデカすぎる!」




自殺者達は自ら命を断つという罪の為、輪廻転生の輪へ入ることを許されません。

輪廻転生の輪へ入る為の条件は、自分以降の誰かを自殺から回避させること。

しかし、霊感でも無い限り見えないさわれない話せないという条件付き、その上失敗すれば悪霊となって自我を奪われ暴走するというペナルティー。なお、誰も助けなくても49日が経過すると悪霊化するというひどいシステムだ。



自殺者達の霊を、『亡殺者ぼうさつしゃ』という。亡殺者達は「自分の死因となったもの」を武器として戦う。例としては、包丁・カッターなどの刃物から、落下死の衝撃、電車の車両、睡眠薬、ロープなどなど多種多様。


この世に自殺という死因が生まれてからというもの、数十人を除いてその殆どが条件を満たすことができずに49日をむかえ、悪霊化している。

そしてその悪霊は所構わず暴れ回っては元同僚である亡殺者を喰って力を増していく為、それを退治するために自分の死因の武器を使っている。






端的に言えば、自殺者達が自分の死因を能力として戦う異能バトルアクションである。

まぁ、霊には睡眠も食事も必要ないため自分の49日をむかえるまでフル稼働で悪霊と戦うか、コンタクトを取る術のない自殺願望者を止めようと奔走することになる。


正直、凄まじいレベルでブラックなのである。


そこのあなた?



「自殺後の世界はブラックですがそれでも死にます?」

「人は死んだらどこに行くの」、と最初に両親に質問したのは母の弟の叔父の葬儀の時だった。

「天国に行くの?」と続けて言うと、仮面を付けたように静かに納骨をしていた母は、突然「あんな親不孝者、どこへだって行けやしないわよ!」と酷く取り乱した。


叔父は自宅で首を吊っているのを発見されたという。動機は遺書もなく不明だったと、のちに聞いた。


質問に対する的確な答えを貰えなくて、知りたがりの6歳児だった私は不満だったが、気分が荒れているらしい母を逆撫でしないように口をつぐんだ。



「ごめんなさい」

「いいんだよ。ママは寂しいだけだから、お前が悪いんじゃない」



宥めるように抱き上げてくれた父の腕の中で考えた。


______人は死んだらどこに行くんだろう。

天国なんてあるんだろうか。

地獄なんてあるのかな。


そんな可愛らしいことを考えていたのは、もう随分と昔の話になってしまい。



16歳の誕生日にビルの最上階の自室の窓から飛び降りた私は、散乱した焼きそばパンのようになって命を終えました。



「……ん?

え?

成仏しないの?

消えないよ?

まさか地縛霊となって縛られるとか?



嫌だあああああ!!!」



死んだはずなのに。

手も足も頭も欠損していない五体満足な霊体がくっきりはっきりそこに存在したのです。


まぁ、私の横には木っ端微塵の肉塊と化した自分の肉体が横たわっているので死んだことは確かです。産後ハイならぬ自殺後ハイなのか、落下死の衝撃で頭のネジが数本お亡くなりになったかもしれません。

これでも生前(1分前くらい?)は物静かで大人しく内向的ないわゆる隠キャとしてひっそり過ごしておりました。

もちろんこんな喋り方はしませんでしたし、いたって普通の地味な女子高生でした。そして無宗教者でした。


「天国?ないない」「地獄?テスト前の提出課題が地獄」「いい子にしてないと幽霊に連れてかれちゃうよ!って幽霊どんだけ暇なんだ。悪い子この世に何万人いるんだよ」という感じでした。最後の一つはちょっと違いましたね。


幼い頃に考えた、「死んだらどこに行くのか」という疑問に対する自分なりの答えというのも確定していました。

「消えてなくなる」です。

思考を電気信号としてシナプスがつないでいるんですから、肉体が死ねば思考もなくなり、私という個は消滅する筈。

そういう考えでした。


誰に話しているのかって?

そんなの独り言に決まっているでしょう。




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