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New Age  作者: 焼きうどん
2/23

2

■ 改版履歴

□ 2018/06/08

1. ステータスにSTを追加し、素振り時にSTの説明を追加


□ 2018/06/11

1. クエストの制限を追加


□ 2018/06/13

1. アンナの発言を一部修正


□ 2018/06/15

1. ステータスからRES及びLUCを削除

 よ、は、ほ!


 俺は、教会の裏庭で一心不乱にショートソードを振り続けた。

 ステータスにあったSTとやらはどうやらスタミナのようだ。5分ほど素振りのを続けていると、猛烈な倦怠感が体を襲い、驚いてステータスを確認して見れば、STがすっからかんになっていた。また、STは時間経過で回復するようで、1分ほど休んだところで満タンまで回復した。

 かれこれ30分は経ったか? リアルだったならばとっくに精根尽き果てて、胃の中身をぶちまけてる身動きが取れなくなっている事だろう。だが、STが底をついた時の倦怠感がやばいが回復すればまた動ける。疲労の蓄積などもない。さすがにこういった所はゲーム仕様なようだな。


 STが蒸発する度にステータスを確認しているが、スキルが生える予兆すらない。ホントに覚えるのかコレ? いや、聖天使アンナが仰っていた事を疑うなんて! 愚直に剣を振り回す。それが信仰だ!


 よ、は、ほ、そぉい!! 生えろ、スキル! とびだせ、スキル!


「精が出ますな」


 ん? 投げかけられたしゃがれ声の方に視線を向けると、とカソックをカッチリ着こなした糸目総白髪のご老人。

 ここの関係者だろうな。どうもどうも、お邪魔してます。アンナさん周辺の人からは好感度を稼いで置こう。好感度システムなんかあるか知らんが。


「この教会で神父をしております、エドガーと申します」


「これはご丁寧に。リュウです。アンナさんにご許可を頂いてこちらを使わせて頂いていましたが、ご迷惑でしたか?」


「ほう、アンナに。ああ、迷惑だなんてとんでもない、どうぞご自由にお使いください」


 はて、ではなんの用だ?


「異人とお見受けしましたが、刀剣スキルをご所望かな?」


「ええ。ただいくら素振りしても習得できませんが」


「ははは、やみくもに振り回した所でスキルは覚えれませんよ。どれ、簡単に手ほどきしましょう」


 ………

 ……

 …


 よ、は、ほ!

 エドガー神父に、構え方、素振りの仕方を教わり、1本1本矯正を受けながら10分ほど素振りを繰り返した。


```

【CONGRATULATIONS】

・ 刀剣 (Lv: 0) を習得しました!

```


 きたあああああああ!!

 ねんがんの スキル をてにいれたぞ!


「おや、どうやら無事スキルを習得できたようですね」


「おかげさまで。ありがとうございます」


「さて、やっと本番に入れますね」


 にっこり微笑むエドガー神父。両手にはいつの間にか木刀。おやおやー?

 なんだか、どす黒いオーラのような物が見えるようなー? 古強者感が凄いんですけどー。

 はて、本番ってなんだろなー? スキルも手に入ったし、俺としてはお腹いっぱいなんですけどー?

 

「素振りの次は、打ち合いの稽古ですね。ささ、木刀を持って」


 ですよねー。


```

【WARNING】

・ 老神父エドガーが勝負を挑んで来ました!

  * 本対戦は拒否できません。

```


 がってむ。



 ………

 ……

 …




 稽古? はかどってるよ。俺がサンドバッグ役だけどな。

 こちらの攻撃はカスリもせず、一方的に木刀で殴られる。容赦ねぇなこの聖職者。

 エドガー神父がひたすら殴り続ける訳じゃないから、一応稽古なのか…?

 木刀で殴られても、衝撃はそれ相応だが痛みはない。痛覚まで再現されてたら、今頃泣いてるわ。


「ほらほら、袈裟斬りはこうですよ?」


 んぐ!?

 肩に食らった衝撃で、手から木刀がこぼれ落ちた。


「剣はどんな事があっても離さない。実戦では死にますよ?ほら、早く拾いなさい」


 あいた!? 蹴りやがったぞこのジジイ!

 ちくしょう、こうなりゃヤケだ! 土を、掴んで、目潰し!


「ははは、そんな事でどうにかなると思いましたか。浅はかですね」


 ぶべら!?

 砂はヒラリと避けられ、立ち上がり際を足払いで華麗に地面とキッス。


「さあさあ、早く立ちなさい。素直に立てば邪魔しませんので」


 ぐぬぬ、畜生め。

 ヨタヨタと足をもつれさせて、力なく立ち上がる。反撃する余力なんてなさそうだろう?

 ところがジーザス、突き! 死にやがれ外道が!


「発想は悪くありませんが、みえみえです」


 ぐへぇ!?

 脳天に木刀が直撃し地面に叩き伏せられると、視界の端に赤い物が混じった。

 え、なにごと!?

 メニュー!ステータス!


```

HP: 6 / 20

```


 減ってるううううううう!? めっちゃ減ってるううううう!?

 ちょ、ちょっと、ギブアップといいますか、降参といいますか、死にそうといいますか。


「いえいえ、あなたにはまだまだ足りないくらいですよ」


 ほわい? どうして? 死んじゃうよ?

 まさか…、俺に剣術の才能が…? エドガー神父はそれを見抜いて、こんな過酷なトレーニングを!?


「うちのアンナに色目を使った、クソったれな異教徒にはしっかり反省して頂く必要があります。刀剣スキルが無くてはタダの私刑になってしまいますが、スキルさえあれば稽古の範疇です」


 どんな理屈だよ、悪魔め。


「ほら、早く立ちなさい」


 うるせぇ、手足に力入らないんだよ。てかなんだコレ!?


```

状態異常: スタン

```


 これが、スタンかー、わー初めてだー。ふざけてみたが、マジで立ち上がれないんですけど、なにこれ怖い。手足の感覚はあるのに、力だけ入らない。なにこれ怖い。


「ふむ。『ヒール』」


 俺の体を青い光が包む。これは、魔法か!?

 光が収まると、視界を蝕んでいた赤い滲みがキレイに消えていた。


```

HP: 20 / 20

状態異常: なし

```


 おう、やはり回復魔法、ほしい。お、立ち上がれるぞ。ヒールでスタンも回復するのか。


「さて、傷も癒えた事です。続きをしましょう」


 この、外道っ!



 ………

 ……

 …



「ふう、まあこのくらいで今日は良いでしょう」


 かれこれ一時間程サンドバッグ役をこなしていると、エドガーが構えをといた。

 殴打、殴打、殴打、ヒール、殴打、殴打、殴打、ヒール…。拷問ですね、わかります。


```

【NOTICE】

・ NPC: エドガーとの戦闘が終了しました!


【CONGRATULATIONS】

・ 刀剣 のレベルが上昇しました! (Lv: 0 => Lv: 1)

・ 刀剣 のレベルが上昇しました! (Lv: 1 => Lv: 2)

・ 不屈 (Lv: 0) を習得しました!

・ 不屈 のレベルが上昇しました! (Lv: 0 => Lv: 1)

・ 不屈 のレベルが上昇しました! (Lv: 1 => Lv: 2)

・ 不屈 のレベルが上昇しました! (Lv: 2 => Lv: 3)

```


 そして流れるアナウンス。おお、スキルレベルが上がった。

 あのシゴキを受けて、ご褒美なければ暴れてたわ。暴れた所で、即座にこのクソ神父に鎮圧されそうだがな!


「ありがとう、ございました」


「おや、お礼を言われるとは意外ですね」


「中身がどうであれ、指導を受けた事実は変わりませんから。中身がどうであれ!」


 大事な事なので二回言いました。嫌味な言い方になったが、気にしてられるか。聖人じゃないんだよ。こちとら社畜じゃ。


「それはそれは、いい心構えですね」


 けっ、これっぽっちも表情が崩れないな。


「ですが、いつかその透かした面に、渾身の一撃をお見舞いしてみせます」


「ふふふ、それは楽しみです。いつでもお相手する、と言いたい所ではありますが、あなたみたいな雛にもなっていない卵に付き合ってる暇もないですし…。そうですね、独力(・・)で卵からヒヨコまで至ればまた稽古をつけてあげましょう」


「望む所です」


 ボッコボコにしたるからな、クソ神父め!


```

【NOTICE】

・ クエスト「頂きへの道(刀剣)」が開始されました。

・ 刀剣スキルを Lv: 10 にしよう!

・ 当クエスト完了まで刀剣スキルを SP によってレベルアップする事が出来なくなります。

・ 当クエスト完了まで一部クエストの発生が制限されます。

・ 当クエスト完了まで経験値の取得方法が制限されます。

・ 当クエストを破棄した場合、一部NPCの好感度が最低値に固定されます。

```


 まって、ちょっとまって。ねぇ、まって。

 え、え、SPでのレベルアップ不可って、え。独力ってそういうお話ですの? ふぁ?

 あと、8も上げなきゃないの? SPなしで? 剣振り回して?

 頂き目指しちゃうの? どういう事?

 あ、好感度ってやっぱりあるのね。アンナさんからの好感度は? どうやったら見れるの?

 疑問しかねぇよ!!!


「ははは、鍛錬にはこの庭をご自由にお使いください」


 あ、はい。素振りでどうにか上げるしか無いんですね、わかりました。

 呵呵と笑いながら去っていった。ふぁっきゅー!


 はあ。素振りしよ。


 ………

 ……

 …


 エドガー神父に教えられた通り素振りを繰り返す。一挙動一挙動を確実にこなしていこう。


 ………

 ……

 …


 あの暴力神父め、いつか目にもの見せてやる。


 ………

 ……

 …

 

 ステータスを見ても、熟練度や経験値の表記がない。身についているのだろうか。


 ………

 ……

 …


 レベルアップのアナウンスは来ませんなぁ。


 ………

 ……

 …


 あー、だめだ、レベルが上がらん。疲れた。体は疲れてないが、心がつかれた。不毛な気がしてきたぞ。

 素振りも崩れてきたし、休憩しよ。


 ふう、空が青い。お、鳥だ。しかし、本当にリアルなゲームだな。NPCのAIはバケモノスペックだし、まさに新時代だ。

 

 これからどうするかな。自由すぎて何したらいいのかわからんぞ。

 んー、トレーラーにあった、水に沈んだ都市とかは見たいな。あと、イグアスの滝もどき。地面に巨大な穴が空いて、水が注ぎ込んでるってどうなってるのやら。あ、もしかしてあの穴の下に都市があるのか?

 そうなれば、旅だな。リアルで最後に旅行したのはいつだったか…。思い出せん。あれ? まさか、修学旅行…?

 現実では家と会社との往復をするだけだが、せっかくだこのゲーム世界を余すとこなく堪能したい。

 しかし、ただ漠然と旅をするのもつまらんな。こんなリアリティのあるゲームだ、せっかくだしロールプレイをしてみるか。

 ロール、ロール、ロールねぇ。ロマンがあるのがいいな。どうせ社会人の俺にはプレイ時間を考えれば、トッププレイヤーなんかにはなれないだろうし、オンリーワンを目指すべきだろう。うーん。

 よし、義賊になろう。ロマンだな。義賊はロマンだ、異論は認めん。昼は旅する〇〇、夜は弱きを助ける義賊。昔、具体的には中学二年生で罹患した病が再発しそうだが、ゲームだ、わりきろう。

 さて昼間のロールはどうするか。義賊の表の顔なんだ、生産者だな。ロマン的に考えて。

 行商人? ありきたりだな。なんとなく却下。

 料理人? モンスターを調理できるかは分からないが、もし出来るのであれば、このゲームを楽しむ上では選択肢としてありだな。

 鍛冶師? いや、旅しないだろ。しないよな? 腰を据えて生産に励むイメージだ。ちがうな。でもつまみ食いくらいにはしてみたいな。

 薬師ってのもありか? 行く先々で素材を集めてアイテムに加工し旅費を稼ぐ。悪くないな。

 まてよ、ゲームだ錬金術なんかもあるんじゃないか?

 うーん、情報が不足して決定力がないな。


「あら、リュウさん。お疲れ様です」


 おや、天女のような声が。数冊の本をもったアンナさん。


「アンナさん、どうも。裏庭をお貸し頂き、ありがとうございます」


「ふふ、どういたしまして。スキルは覚えられましたか?」


「エドガー神父に教えて頂いてなんとか」


「え、エドガーさんが、ですか?」


「ええ、はい。どうかされました?」


「いえ、エドガーさんが指導する事はあまりないので…。騎士の方がいらしてもお断りする位ですのに、どうしてなんでしょう?」


「そうなんですか、不思議ですね」


 あなたを邪な目で見たからです、とは言えないわ。とりあえず話を変えよう。


「その本は?」


「先程まで孤児院の子供達に文字を教えていまして、その教材です」


 おお、子供たちに慈悲の心で施しをするとは、さすが女神。

 そうだ。アンナさんに今後について相談してみるか。


「今後は、旅をしようと考えていて、旅先で旅費を賄えるような技能があればいいなと思っているのですが、なにぶん何をしたらいいのか。何か参考になるような本はないですか?」


「でしたら、こちらを読んでみては? 大人の方にお渡しするには失礼かもしれませんが、子どもたちに街のお仕事を紹介する本です」


 この世界の知識は幼児以下だからな、ありがたいです。

 ふむ、どれどれ。

 パラパラとめくってみる。なるほど。そういう事ね。はいはい、なるほどなー。


 読めません。くっそ、いい大人が文字もよめないとか、アンナさんの前で赤っ恥だ。


「ああ、ごめんなさい。異人の方はコチラの文字がわからないのでしたね」


 申し訳なさそうな顔で放たれる言葉が、刺さる、刺さる。


「それならお教えしましょうか? 子どもたちに使ったカルタでよければ、ですけど」


 災い転じて福となす!!!


 ………

 ……

 …


```

【CONGRATULATIONS】

・ 帝国語 (Lv: 0) を習得しました!

```


 15分程シスターアンナの美声に酔いしれていると、スキルが生えてきた。帝国なんてものがあるのか。

 これはどう使うんだ? うーん? おー、集中してカルタの文字を見ると、字は変わらないのだが理解できる。わぁお!


「文字は覚えられましたか? では次はコチラの絵本で読む練習をなさって下さい。ホントはちゃんと教えてあげたいのですけど、まだ仕事が残っていて、申し訳ありません。ああ、先程の本もお預けいたしますね。読み終わったら礼拝堂の奥にある部屋にいらして下さい」


 仕事があるのに引き止めてしまったか、申し訳ない事をしてしまった。

 ニコリと微笑みながら去っていくアンナさん、はあ尊い。抱きしめたい。

 アンナさんの後ろ姿をほんわかした気持ちで眺めていると、ゾワッとする気配が背後から。なにごと!? ギョッとして振り返れば、鬼畜神父。凄い、圧が凄い。脂汗が滲み出てくる。

 頬が引きつりそうになるのを、歯を食いしばってなんとか耐える。やばい、膝が震える。

 スッと圧が消えたと思うと、エドガー神父は目礼し去っていった。


 なんだ、今の。殺気ってやつなのか? 心臓の弱い方なら死にかねんぞ。


 よし、震えも収まった。ふう、帝国語スキルを上げよう。

 そうだ、SPで上げるか? いや、アンナさんから読む練習と言われてんだ。読もう。

 さて、お勉強タイムだ。

1日目 12:00 (6/1 09:51)


```

【EQUIPMENT】

LV: 1


HP: 20

MP: 20

ST: 20


STR: 10

VIT: 10

INT: 10

MND: 10

DEX: 10

AGI: 10


スキル (SP: 11)

・ 刀剣 (Lv: 2)

・ 不屈 (Lv: 3)

・ 帝国語 (Lv: 0)


装備

・ 粗末なショートソード (ATK: 5)

・ 粗末な布の服 (DEF: 0)

・ 粗末なアイテムポーチ


所持金: 9,920

```

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